テントや小屋の中でしか使わないシュラフ・寝袋。
それほど汚れないと思いがちだが、顔や首筋の脂分、全身から出る汗、ウエアについた汚れ、テントや小屋の中の汚れなどがシュラフにつくことがあります。
シュラフ・寝袋に封入されているダウンや化繊綿に皮脂などが付着すると、たくさんの空気を蓄えることができなくなり、保温性が低下してきます。それを防ぐためには、適切なお手入れが欠かせません。
ただ、洗い方や保管方法がわからない人もたくさんいますが、意外と覚えれば割と簡単にできてしまいます。毎回必ず洗う必要はありません。汚れや臭いが気になってきたら丸洗いします。
ここでは、寝袋・シュラフの洗い方や保管方法をはじめ、撥水性を取り戻す方法や生地の破れの補修方法などのメンテナンス、お手入れに必要な道具などをまとめています。
目次
シュラフ・寝袋にへたりを感じたら手洗いしてフカフカに
シュラフは洗えます。しかも自宅で手洗いが可能。汚れを落とし、撥水性の回復にも効果的な洗濯方法があります。
汗や体から放出される水分、またはテントのうちの結露によって湿って重たくなったり、粉乳されたダウンがボール状に固まってしまったら、シュラフを裏返して天日干ししている人は多いだろう。また、その際に中綿を包むシェルの撥水性が損なわれていたら、撥水スプレーを吹き付けて機能回復している人も一定数いるはず。
でも、シュラフのへたりを感じたり、ニオイや汚れが気になったら手洗いがオススメです。ダウン、化繊専用の洗剤があるので、たらいや湯船に溜めた水やぬるま湯で押し洗いしてください。シュラフは大きいし、ダウン製品だから自宅で洗えるとは思っていない人が多いようですが、見違えるほど保温力が回復します。
その際に注意したいのが、洗剤をよくすすいで落とすこと。洗剤がのこっているとニオイが残り、撥水性も損なわれるという。さらにダウンシュラフは乾燥機にかけても問題ないが、化繊製は乾燥機はNG。
天日干しの際も、紫外線は生地を傷めるので短時間にし、陰干ししてしっかりと乾かしてください。手洗いしたシュラフは新品のようにフカフカに。
シュラフ・寝袋のお手入れポイント
- 臭いや汚れが気になったら丸洗いする
- ダウンは専用洗剤で洗う
- ダウンシュラフはていねいに押し洗い
- 洗濯後のすすぎ、脱水はしっかりと
- 撥水性の回復はシュラフの性能の回復
- 撥水スプレーで汚れと濡れを予防する
- 保管時はゆとりのある袋に入れる
シュラフ・寝袋を使用する前にチェックするポイントとお手入れ
ファスナーに不具合がないか
山行中にファスナーが閉まらない、という状況を避けるために、ファスナーがちゃんと機能するかあらかじめ調べておこう。
縫い目にほつれがないか
たとえ、ちょっとしたほつれでも、そのままにしておくとそこからどんどん広がってしまう場合も。ひどいときは修理に出す。
コードロックに不具合がないか
襟元を閉めるコードロック類が機能するかもチェックする。コードロックが壊れていたり、コードが抜けていたら補修する。
面ファスナーに不具合がないか
面ファスナーは着脱するときに力がかかるので、生地に縫いつけてある部分がほつれていると、取れたり、生地が破れたりしてしまう。
ダウンシュラフ・寝袋の洗濯方法
中綿のダウンはシュラフのなかでふっくらと膨らむようにくっついている。これが千切れてしまうと外側に出てきてしまいやすくなるので、しっかりと洗うためにと力を込めずに押し洗いしよう。洗濯に、たらいや大きなおけがない場合は湯船でもよい。残り湯のぬるま湯を使えばエコだし、汚れも落ちやすい。そしてすすぎをしっかりと行わないと機能低下してしまうので注意しよう。
ダウン用洗剤を使用
大きなおけを用意し、シュラフが充分に浸る程度の水、またぬるま湯を入れる。そこにダウン用の洗剤を使用量に応じて投入。よく混ぜておこう。
ファスナーを開けておく
裏表しっかり洗うため、ファスナーは全開にして広げておく。薄手のシュラフで洗濯機の手洗いモードで洗濯する場合は浴槽保護のため閉める
シュラフ内の空気を抜く
そのままおけに入れると中の空気のせいで膨らみ洗剤を溶かした水が内部に浸透しにくい、そこで両手で抱えるようにして空気を抜いておこう。
しっかり押し洗い
おけにいれたら、よく泡立つようにしっかりと押し洗い。その際にファスナーが引っかからないように注意。裏表交互に洗っていこう。
きれいな水ですすぐ
洗い終わったら水を捨てて、すすぎ用のきれいな水に交換。再度、押し洗いするようにして、泡が立たなくなるまで水を交換して洗剤を落とす
水を捨てて押して脱水
すすぎ終わったらおけの水を捨てて、両手で体重をかけて脱水。水が出たら捨て、押して、捨ててを繰り返して、きちんと脱水しておきたい
汚れが少ないときは
肌が当たる頭部や、呼気があたる口まわりは、汚れやニオイがつきやすい。でも使用の度に洗濯する必要なく、洗剤をウエスなどに付けて部分的に拭き洗いするのがよい。このときも洗濯残りには気を付け、しっかりすすいで乾燥させる。汚れがひどいときはベンジンで拭き取るのもよい。
ダウンはていねいに
ダウンは軽く、保温力に優れているが、丈夫さには欠ける。だから洗濯や脱水の際にひねったり絞ったりはご法度。一度千切れてしまったダウンは元には戻らず、保温力が低下する。それではフカフカを取り戻すために洗濯する意味がない。だから必ず押し洗いし、ていねいに洗濯しよう。
化繊綿シュラフ・寝袋の洗濯方法
化繊シュラフは濡れに強いのが特徴だが、洗濯の場合もその丈夫さからガンガン洗ってしまって問題ない。手ではなく足で踏んで洗ってしまってもOK。洗濯、すすぎ、脱水の手順はダウン同様。洗濯残りがないように、しっかりとすすいでおくことも忘れずに。
汚れが目立つ部分には化繊綿洗剤を染み込ませる
ダウンシュラフ同様、首筋や顔、足元など素肌が触れる部分には、脂分による汚れがつきやすい。洗う前に化学繊維用洗剤の原液を直接染み込ませれば、汚れが落ちやすくなる。
生地をもんでから染み込ませると、より効果的。
洗濯機で洗い、脱水、乾燥する
化繊綿のシュラフは、洗濯機と乾燥機で洗い・脱水・乾燥までできる。洗濯中にファスナーが擦れて生地表面を傷めることがあるので、ファスナーはきちんと閉めてから弱で洗う。
乾燥にムラがないよう、乾燥機にかけた後は陰干しする。その際、ファスナーを開けて熱を冷ます。
撥水スプレーをかけ、再び乾燥機で熱を加える
完全に乾かしてから、撥水スプレーを生地全面にかけて、再び乾燥機に入れる。熱によって撥水成分が生地に定着すると、撥水性能が増し、脂分などの汚れがつきにくくなる。
ダウンシュラフ同様、低温に設定したドライヤーで熱を加えてもよい。
シュラフ・寝袋の脱水の仕方
おけのなかで念入りに押し洗いして水分を出すだけでは、脱水はまだ不十分。そのまま干しても、乾燥するまでに時間がかかってしまう。そこで吸水性が高く、大きなバスタオルなどでシュラフを包んで、手でしっかりと押して水気を取ろう。ダウンはていねいにあつかうことが基本だが、タオルで包んでロール状に巻いて脱水するのも一つの手。通常より早く脱水できる。
大きなバスタオル上に広げる
よく乾燥したら吸水性の高いタオルを用意。すっぽりと包めるくらいの大きなもののほうが作業しやすい。その上にシュラフを広げよう。
タオルで包んで水気を押し出す
撥水性の高い生地を採用しているシュラフは水を弾いてしまい。シュラフ内の水分の抜けが悪い。タオルで包んで、念入りに押して水分を出そう。
濡れたタオルはすぐに交換
洗いやすすぎど同様に、絞ってはいけない。押して水分をタオルに移す。タオルが濡れたら、新しいものにすぐに交換するのがポイント。
シュラフ・寝袋の乾燥の仕方
シュラフ内に封入されたダウンの偏りを防ぎ、残っている水分を出しやすくして空気に触れさせるために、すのこの上に置いて干す。好天が続く日を見計らってこの乾燥までを一気に行うことがキモ。長くとも2日程度で乾燥させないと嫌なニオイが発生してしまうので、風通しのよい場所で行う。しかし、紫外線による生地の痛みを防ぐため直射日光には当たらないようにしたい。
シュラフ全体が乗るすのこを用意
吊るし干しすると封入されたダウンが偏る原因にもなる。そこでシュラフ全体が乗るすのこの上に置いて、風通しのよい場所で乾燥させる。
すのこの上に広げる
シュラフを広げ、全体が空気に触れるようにして置く。すのこの下に残った水分が出てくるので、室内の場合はタオルを敷いておくとよい。
押して脱水、揉んでほぐす
乾燥開始前にもう一度押して脱水。乾燥開始後はときどきチェックして、反転させる。ダウンが固まっていたら揉んでほぐしておこう。
シュラフ・寝袋の撥水性を取り戻す方法
シュラフの表地には結露や雨に濡れて保温性が低下しないように撥水加工が施されている。しかし使用とともに、その撥水性は落ちてくる。そこで市販の撥水スプレーを定期的に吹きかけるメンテナンスが必要になります。 スプレーのノズルを20cmほど離して広く、薄く噴射するのがポイント。一度で終わらせようとせず、薄く吹きかけたら乾燥させ、再度吹きかけてと、何度かにわけてスプレーすると、撥水性が高くなり失敗も少ない。陰干ししてよく乾燥させてから行うと効果的。
洗濯直後の撥水剤塗布
乾燥前にアウターシェル用の撥水剤を塗布し、乾燥させることによって撥水性を取り戻す撥水剤もある。ダウンシュラフは乾燥機にかけてもよいが、厚手のものはコインランドリーの大型乾燥機をを使用しよう。
シュラフ・寝袋の生地の破れの補修方法
補修の際に必要となるのは、専用の薄いリペアシートのみ。シュラフがダウン製でも化繊製でも同じリペアシートを使用する。ただし中綿がリペアシートのシールに付着してしまうと、そこだけ固まってしまうので、貼り付ける前中綿を内側に押し込んでおこう。
またリペアシートの角は丸くカットしておきたい。角のあるままだと、使用によってそこから剥がれてきてしまう。補修自体は難しくないが、そうしたことが失敗しないためのコツです。
穴が開いた場所を確認
化繊であれば大きな問題はないが、ダウンだととめどなく流出してしまう。テープ留めして応急処置した場合はノリをきれいに取り除く
中綿を内側に押し込む
外側にでていた中綿を押し込み、穴をきれいに整える。リペアシートを穴に合わせて、穴より大きめになるサイズに見当をつける。
リペアシートをカット
穴をすっぽりと覆うくらい余裕を持たせた大きさにリペアシートをカット。少し大きめでないと生地が伸びたときに剥がれやすくなる。
角を丸く落とす
カットしたリペアシートは、使用時に剥がれてこないように角を丸く落とす。そのためにも大きめにカットしておくのが肝心
平らな場所で作業
リペアシートを貼り付ける際、生地がヨレないように、平らな場所で作業。穴がきっちりと合わさるようにしておく。
穴をリペアシートの中心に
リペアシートの裏紙を剥がし、破れた穴がリペアシートの中心にくるように貼る。生地がシワにならないようによく伸ばしておこう。
中心から空気を押し出す
貼り付けたリペアシートの中心から外側に向けて、指の腹で空気を押し出すようにして、ぴったりと圧着させる。念入りに行なおう。
完成
空気が入らず、シワが寄らず、ぴったりとリペアシートが貼りついたら完成。きれいに仕上がれば、修理跡にも愛着がわくだろう
シュラフ・寝袋のファスナーが噛んだら
疲れた体をシュラフに押し込み、内側のジッパータブを手探りで押し上げようとしたら生地がかんでしまった。そんなシュラフあるあるの際、無理に動かそうとすると生地が破けたり、さらに深く噛んでジッパーがかまったく動かなくなり、寒い夜を過ごすことになる。そうならないためにもライトを点け、眠い目をしっかり開いて、生地をやさしく引っ張り、噛み込みを解消する。
生地がかんでしまったら
たるみをなくしてからジッパーを動かせば、大抵の噛み込みを防げる。が、こうなってしまったらイライラせずに一度深呼吸して落ち着く。
やさしく生地を引く
決してファスナーを無理やり動かしてはいけない。生地をやさしくゆっくり左右に引っ張りながら、ファスナーを慎重に動かす。
マメに潤滑剤を塗っておく
シュラフの生地は薄いので、ゆっくり引けば噛み込みは大抵解消される。頻繁にかむときにはジッパー用潤滑剤を塗って滑りをよくしておく。
シュラフ・寝袋カバーの使用後のお手入れ
汚れが目立つ部分に化繊用洗剤を染み込ませる
首筋や顔が当たる部分は脂分の汚れがつきやすい。そのような汚れが目立つ部分には、直接洗剤の原液を染み込ませ、生地になじませてから洗うと、より落ちやすくなる。
洗濯機で洗い、脱水、乾燥する
表面生地が擦れてしまわないようにネットに入れてから洗う。脱水前に、カバー内に残る水を切ってから入れれば、抜けない水の重みで洗濯機に負担をかけることがない。
小さいネットに押し込むのではなく、大きめのネットに余裕を持って入れよう。
撥水スプレーをかけ、アイロンなどで熱を加える
乾いたら、風通しの良いところで生地全体に撥水スプレーをかけ、熱を加えて撥水剤を生地に定着させる。乾燥機でも、当て布をして低温のアイロンをかけても、同様の効果がある。 アイロンをかける場合は必ず当て布して、低温でムラなくかけよう。
寝袋のお手入れに必要な道具
シュラフの手洗いするのに必要な洗剤。シュラフの中綿に合わせたものを用意しよう。1本でダウン用はシュラフ3枚、化繊用は4枚を手洗い可能。撥水スプレーはすすぎ・脱水後の濡れた状態で吹き付けてから乾燥させることで、強力な撥水性をもたせられるものがおすすめ。洗濯には他に大きなおけ、または湯船、乾燥用にすのことバスタオルも必要。
ダウン専用洗剤
ダウンの油分を残しつつ汚れだけを落とす専用洗剤
化繊専用洗剤
柔軟剤や芳香剤などが入っていないシンプルな化繊専用洗剤
タオルやスポンジ
泥などの汚れを落とすときに使用。柔らかいものを用意する
大きめのタライ
余裕をもってシュラフを洗える大きさが必要。浴槽でも代用できる。
リペアシート
生地の穴や裂け目に貼り、穴を塞ぐ。透明で何色の生地にも使用可能。
洗濯用ネット(大・小)
大きなネットはシュラフ保存用に。カバーの洗濯には小さなものを。
ファスナー用潤滑剤
ファスナーの動きを改善する潤滑剤。塗った部分の撥水効果も増す。
すのこ
乾燥機がない場合、シュラフが形くずれしないよう、すのこで平干しする。
撥水剤
撥水性を復活させるスプレー。熱を加えると成分が定着する。
アイロン
撥水剤をかけた後にアイロンで熱を加える。当て布は必ず使おう。
ドライヤー
撥水剤を生地に定着させるためのドライヤー。熱風が出せるものを。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。