春こそ雪山入門のチャンス!残雪期こそ雪山登山デビューする絶好の時期

春こそ雪山入門のチャンス!残雪期こそ雪山登山デビューする絶好の時期

3月下旬ごろになると、厳しい冬山の季節から春山へと移行していきます。

雪山は相当寒く過酷な環境なため、難易度が高く、命の危険とも隣り合わせ。
ただ、残雪シーズンは、冬期に比べると天候も安定しているため、幅広い地域で雪山を楽しむ絶好のタイミングです。

ここでは、初心者が雪山デビューにおすすめの残雪期の山々を紹介します。残雪の山の特徴、登山に適した時期、計画の立て方、注意点、おすすめの山をまとめています。

春こそ雪山入門のチャンス!残雪期で雪山登山デビュー

3月下旬を過ぎると、雪の降る日は少なくなり、気温も日に日に上がっていく。晴れていれば、朝晩を除く日中は行動しやすいです。 残雪期には、ビギナーは2000m前半の中級山岳などでピッケルやアイゼンを使用する本格的な雪山登山にデビューするチャンスだし、経験者は森林限界を超えた高山にチャレンジすることができます。

北に行けば行くほど遅い時期まで雪山登山を楽しめます。まずは、危険箇所の少ない中級山岳で雪山に慣れたら、いよいよアルプスなどの高山へステップアップしていきましょう。

森林限界を超えると雪山の表情はがらりと変わり、さえぎるもののない稜線では風雪の影響をダイレクトに受け、転・滑落のリスクも増します。確実な歩行技術、ルートファインディングや天候判断の能力が問われることになります。

残雪期こそ、初心者でも確実に雪山のスキルアップをすることができます。

残雪期の山の特徴

春期に入ると、日に日に気温も高くなり、移動性高気圧が通過するようになるため、標高の高い雪山にも登りやすくなります。
しかし、油断は禁物である。なぜなら、ときに強い寒気が南下して、低気圧が発達。低気圧の通過後には一時的に冬型の気圧配置となり、真冬に逆戻りしたような大荒れの天気になることもあるからです。
下部ではポカポカ陽気だったのに、稜線に出た途端に暴風雪…こんな急激な天候変化も、春山では充分にありうるため、注意が必要です。

また、春は一年で紫外線が最も多い時期になります。しかも、標高の高い雪山では、大気による紫外線の減衰が少ないうえに、雪面による反射もあるために、紫外線が非常に強い。紫外線による日焼け、雪目への対策も入念にしておきましょう。

紫外線対策は入念に

日焼け対策には、肌を必要以上に露出させないことが第一。長袖シャツやアームカバーを着用し、道まわりにもタオルやネックゲーターを巻いておく。顔や首筋には日焼け止めクリーム、唇にはUVカットのリップクリームを塗っておく。 また、紫外線によるダメージを受けて雪目になると、まぶしさと激しい痛みで目を開けていられなくなる。雪目を避けるには、日中はサングラスをかけ、紫外線から目を保護する。

急激な気候変化に要注意

薄手のシャツでも暑く感じるときもあれば、真冬のような風雪・寒さに見舞われることもあります。春山では、こうした急激な気候変化に対応しなければならない。 行動中はこまめにレイヤリングで調整します。暑かったら脱ぎ、寒かったり風が強いときはジャケットを着て、汗で衣類を濡らしたり、体を冷やさないように注意します。 下部で雨に濡れて、上部で真冬並みの寒気にさらされれば、春とはいえ、低体温症の危険が高くなります。濡れには細心の注意を払い、もし衣類が濡れたら、山小屋やテント内で乾燥させましょう。

1500m付近

1500m付近。樹林帯内は風もなく、暑い。袖をまくって、体温調整をする。

2000m付近

2000m付近。樹林がまばらになり、風の影響を受けるように。袖をおろし、ニット帽などをかぶる。

2500m以上

2500m以上。標高が高くなり、気温も下がり、冷たい風が吹きつける。アウタージャケットを着て、フードをかぶる。グローブは厚手のものに。

残雪期の登山適期 おすすめの時期とは

3月以降、高気圧と低気圧が交互に日本列島を通過して、天候は周期的に変わります。冬型の気圧配置の影響を受けて厳冬期には厳しかった山も、大陸からの移動性高気圧に覆われて晴れて風がなければ日中は暖かくなる。
ただし、北からの強い寒気が入ってくると、天候は一気に真冬に戻るので、特に標高の高い山を登るときは注意が必要です。

4月下旬になると、冬期は閉鎖していた山小屋やロープウェイなどが営業を開始するので、アプローチが楽になったり、山中で一泊できるようになります。
また、降雪がなく、雪質も安定し、雪崩の危険がほとんどなくなるので、安心して雪渓など谷のなかを登ることもできるようになります。

冬山登山の計画の立て方

雪山登山といえど、夏山とあまり変わりはありません。
しかし、そこにはひとつ大きな壁があるのは事実。

森林限界を越えない標高の低い山でのスノーハイキングであれば、特別な技術は必要ないし、実際、山登りの初心者であったとしても、天候さえ良ければ楽しい1日を満喫して無事に帰ることができるだろう。
ただし天候が、荒れてきたり思いのほか時間がかかって日暮れまでに下山できなかったりなど、ひとたびアクシデントがあったときに、夏山よりもずっと深刻な状況ににおかれてしまうのが雪山なのである。

夏と冬では登れる山が違う

夏や秋には初心者でも登れる山が、冬にはピッケルやクランポンが必須の山になってしまうことはよくあります。逆に、降雪の少ない場所では、夏でも冬でも登山の難易度はほとんど変わらないという場合もあります。
夏に登ったときは楽だったという思い込みで山を選ぶと痛い目にあうこともあるので、降雪の有無とその量は事前にチェックしておきましょう。

山小屋が使えるところは限られる

雪山で泊まれるときはテント泊が前提となります。というのも、山小屋に泊まりたくても、冬期は休業しているところがほとんどだからです。可能ならばキャンプ指定地に張ったほうがいい。雪が積もっていると植生を傷つけることも少ないし、そもそもコースタイムが読みにくい雪山では、予定どおり宿泊地にたどり着けるとは限らないからです。

雪山はコースタイムが違う

雪が積もっていると驚くほど歩きにくくなることは、一度体験しないとなかなか想像できない。トレースがあって踏み固められた道ならかなりマシだが、それでも滑るのを防ぐために無意識に体に力が入ってしまい、疲れやすくなる。深い積雪の場合はなおさらです。腰上まで潜るほど深い場合は、無雪期のコースタイムの10倍くらい時間がかかることもあります。

エスケープルートを考えておく

エスケープルートというのは、予定を変更して下山できる道のことを言います。夏ならばいくつかの選択肢がとれる場合が多いが、雪山では往路を戻るしかないという場合も多い。雪が積もっている山は安全に歩ける場所が限られるからです。
積雪が多く、傾斜が急なところでは斜面をショートカットできることはきわめてまれで、安易にトラバースををすると雪崩の危険もあります。

メンバー選びには注意

若くて体力のある人なら、初心者を夏の北アルプスに連れていってもほとんど問題はありません。しかし、さすがに登山初心者をいきなり雪山に連れて行くのは無理があります。それが許されるのは、同行者の完璧なケアができるプロガイドが同行している場合か、平坦な場所でのスノーシュートレッキングなどだけです。

雪山登山は荷物が増える

ピッケルやクランポン、スノーシューなどはもちろん、防寒着や手袋、分厚い寝袋などでバックパックはあっという間に膨れあがる。荷物の量は夏の1.2〜1.5倍くらいになると見積もっておこう。ということは、その分余計に体力も必要になります。
ただでさえ歩きにくい雪山で荷物が多いとさらに疲れます。行動予定には余裕をもっておくことが大切です。

雪山独特の用具は事前に練習しておく

無雪期には使うことのない、雪山独特の装備があります。ピッケルやクランポン、スノーシュー、ショベル、ビーコン、グローブなど。特にビーコンなどの安全用具は、事前に練習をしておかないと、ぶっつけ本番ではまず使えません。必ず練習しておきましょう。

登山届けを出そう

山行プランは出来上がったら、計画書を書いて登山届けは必ず出しましょう。万一、遭難してしまったときに、登山届けがあると救助の効率が大きく上がります。ちょっとした手間で、緊急時に命綱となります。

残雪の山の注意点

気候の安定した春期(残雪期)は、初心者が本格的な雪山登山を始めるのに最適な時期です。しかし、雪山ならではのリスクは当然あります。ルートファインディング、地形、気象など、安全に登るために最低限覚えておきましょう。

的確なルートファインディング

春期の山は、冬の間に降った雪で覆われている。気温が上がるにしたがって徐々に雪は解け、雪に隠れていた地面が現れてくるが、基本的に夏の登山道は当てにできない。それゆえ、自らの目でルートを選ぶ力、つまり「ルートファインディング力」が必須となる。
ルートファインディング大事なのは、計画・準備段階で地形図を見て自分が歩くルートを決めておき、山の中では地形図と周囲の地形を比べて、常に現在地と進行方向を把握すること。また、天候が悪化してガスに包まれると、ホワイトアウトで視界がなくなってしまうなど、悪天候時の対応力も身につけておかなければならない。
ルートファインディングは、雪山登山の登山となる技術。着実に経験を積み、自分ひとりでも的確なルート取りができるようになってほしい。

地形図と地形を見る

山に入ったらこまめに地形図を開き、周囲の地形と地形図を見比べ、自分の現在地を把握する。そうすることで、正しいルートを的確に進んでいけるし、行動の進捗状況を確認して先の予定を考えることもできる。
地形図や地形の見方は、山岳団体などが主催する講習会で学べるほか、日頃の登山で意識的に地形図と地形を見るクセをつければ自然と身につく。

赤布などを目印に

雪山では、赤布や赤旗などの標識類をルートファインディングの目印にする。多くの人が登り下りするルートでは、近隣の山小屋がつけておいてくれることもあれば、ほかの登山者が残置した標識もある。人が入らないルートの場合は、自分たちで赤布・赤旗を持参し、迷いそうなところにつけておく。なお、自分たちがつけた標識類は下降時に必ず回収すること。

悪天候時はコンパスやGPSを活用

森林限界以上を行動しているとき、天候が悪化するとホワイトアウトで視界を失うこともある。
悪天候は、標識類を目印にするほか、地形図とコンパスで進むべき方向を定めながら慎重に登り下りしていく。同じルートを往復する場合、往路の軌跡をGPSに記録しておけば、引き返す際の参考になる。もしどうしてもルートがわからなければ、無理に行動せず、安全な場所でツエルトを利用してビバークすることも検討する。

下部の中途半端な残雪にも注意

残雪の山では、標高の低いところから雪が解け、地面や登山道が現れはじめる。注意したいのは、登山道と登山道の間の中途半端に雪が残っているところ。雪の上を歩いている間に登山道を大きく外れて、いらぬヤブこぎをする羽目になって体力を消耗したり、道に迷ってしまう恐れがあるからです。登山道と残雪が混在する箇所では、登山道を見失わないように気をつけよう。

広く急な斜面はジグザグ登り

斜面のきつい斜面を直線的に登ると、一気に標高を稼げるが、反面、脚の筋肉に負担もかかる。特にアイゼンを装着してフラットフッティングで直登すると、傾斜に対して足が開いてガニ股になり、ふくらはぎへの負担が大きくなる。脚への負担を軽減するには、直登ではなく、右斜登・左斜登を繰り返してジグザグに登っていくルート取りをするといい。脚部の筋肉への負荷を右斜登・左斜登と交互に分散できて疲れにくくなる。

人のトレースを信用しすぎない

先行者のトレースがあると、ついそれに頼って登りたくなるが、むやみに人のトレースを信用してはいけない。そのトレースが正しく、安全なルートを通っている保証はないからです。
大事なことは、自らの目で地形や地形図を見て、正しいルートを選ぶこと。自分が正しいと判断したルートに先行者のトレースがあれば、体力温存のために利用させてもらおう。

休憩時のポイント

雪山では、自身の安全確保や装備の紛失を防ぐため、休憩時にもいくつか注意すべき点がある。たとえば、急な雪面に直接バックパックを置くと、そのまま滑り落ちてしまう可能性があるため、必ずバケツを掘って、そのなかに置く必要がある。また、上からの落下物に当たらないよう、常に上方に注意を向けていなければならない。

バケツを掘る

バケツとは、ピッケルのブレードで斜面を削った平らなスペースのこと。雪が軟らかければ、踏み固めることでもバケツをつくれる。休憩時には、バケツを掘り、バケツ内にバックパックを置く。
さらにバックパックのショルダーハーネスにピッケルを通し、シャフトを雪面に突き刺す。こうすればバックパックが滑り落ちるのを防ぐことができる。

目線は常に上方へ

季節を問わず、山では上方からの落下物に注意を向けるのが鉄則。特に残雪の山は、雪に埋まっていた不安定な石などが、融雪とともに崩れてきやすい。しかも、夏山では落石は地面に当たって音がするが、雪の斜面の場合は音がしない。休憩中はバックパックに座り込んで、上方への注意を怠ってしまいがちだが、目線は常に上に向けておこう。

注意すべき地形

残雪期となり、雪の状態が安定すれば、谷筋もルートとして使える。しかし、春の早い時期や大量の降雪があった直後は、雪崩の危険があるので、谷には入らないようにする。上部からの落石も多く、行動中は常に周囲に注意したい。

急斜面(雪壁)

斜面のきつい斜面では、滑落に注意する。特に気温が低く、表面がカチカチに凍っている場合は要注意。ピッケルを雪面にしっかりと刺し込み、両足はキックステップもしくはアイゼンで足場を安定させて、着実に登っていく。

細い雪稜(ナイフリッジ)

左右が切れ落ちた細い雪稜の通過は緊張感を伴う。滑落に要注意。一歩一歩慎重に安定した足場を選びながら、バランスよく通過することが重要。後続の人は、トップの人のトレースをたどっていくと、比較的楽に通過できる。

残雪期のおすすめの山

春期(残雪期)は、冬期に比べると天候が落ち着き、雪山デビューするにはおすすめ。
山域や標高によって、天候は変わりますが、GWごろに残雪期を迎える山々が多くあります。休みも取りやすく、日程に余裕を持って挑むことができます。

まずは、森林限界を越えない2000m前半の中級山岳などがおすすすめ。「ルートが整備状況が良い」「山小屋が営業している」「技術な困難が少ない」「適度な登山時間」などをポイントに山を選ぶと良い。
ピッケルやアイゼンを使用して雪山に必要な技術や経験が身についたら、3000mを越える本格的な雪山登山へ挑みましょう。

残雪期のおすすめの山
山名標高レベル特徴
上越国境・谷川岳1977m中級山岳谷川岳ロープウェイを利用し、天神平へ。適期は4月下旬まで
浅間山外輪山・黒斑山2404m中級山岳雪の浅間山を眺める最高の展望台。適期は4月上旬まで
頸城山塊・火打山2462m中級山岳高谷池ヒュッテ(4月下旬から営業)に一泊し、大展望の頂をめざす。適期は5月中旬まで
八ヶ岳・蓼科山2530m高山北アルプスを一望する八ヶ岳の大展望台。適期は4月中旬まで
北アルプス・唐松岳2696m高山広い雪尾根をたどって後立山連峰の頂へ。適期は5月上旬まで
北アルプス・立山3003m・雄山高山室堂を拠点に、立山連峰の主峰・雄山をめざす。適期は立山黒部アルペンルートが開通する4月下旬から6月上旬まで

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てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。