登山で応急処置を行う必携ファーストエイドキットと処置の幅を広げる道具

登山で応急処置を行う必携ファーストエイドキットと処置の幅を広げる道具

山奥深くに足を踏み込んだ登山で、ケガや体調悪化を招いたとき、救急車を呼ぶこともできない。救助要請してもすぐに助けが来ると限らない。そんな困難な状況に、もし陥ってしまったら、頼れるのは自分だけ。

大量出血、低体温症、高山病などの事態にどうすればいいか? その場で適切に対処しないと命にかかわる場合もあります。
万が一に備えて、応急処置を行うためのファーストエイドキットを備えて、対処法のシミュレーションをしておくことがとても大切です。

ここでは、今回、応急処置を行うための最低限のファーストエイドキットとあると便利なアイテムたちを紹介。また、万が一の事態に冷静に判断ができるように、登山のアクシデントへの心構えに関しても説明しています。ぜひお役立てください。

登山で応急処置どこまでできる? 万が一に備えて、ファーストエイドと心の準備をしておく

単独行の場合、緊急時のリスクが高いことを認識する

たとえば、滑落や転倒で意識を失ったとき。同行者がいれば、必要な処置をしたり、救助を要請したりできるが、単独行では、誰かが発見してくれるか。意識が戻るまで、なすすべがありません。
救命のカギとなる早急な気道確保は、他者がいてこその処置だし、止血もケガの部位によっては一人では難しい。片手がケガの部位によっては一人では難しい。片手が使えない状態で、ほかにも重度のケガがあったら?痛みに耐えてどこまでできる?リアルな場面を想像してみると、ソロでできることは意外と少ないことに気づくかと思います。
アクシデントで動けなくなったとき、声かけ、手当てをしてくれる仲間がいることと、すべてを一人で行うことの違いを、理解しておきたい。

起こり得る事態を想定し、装備と心の準備をする

ちょっとした傷くらいなら、絆創膏を貼って終わりだが、骨折や重度の低体温症など、緊急度の高い場面では、知識の有無がその後の展開を左右します。何かが起こってから考えても、あやふやな知識で対処するのは難しい。
山に入る前の準備として、「何か起こり得るか」「どんな処置が必要か」「処置の方法は」と、さまざまな場面を想定してシミュレートしておくことが大切です。
普段からよく考え、必要な知識と装備を持っていれば、緊急時に落ち着きを取り戻るのも早い。何が起こっても、「想定外ではなく想定内」と言えるよう、しっかり準備しておきましょう。

大きなアクシデントが起きても、事態を冷静に把握する

大きなアクシデントが起きたら、放心したり、パニックになったりと、平静でいることは困難なものだが、対処の第一歩は落ち着くことです。
続いて、転倒が滑落かなど、何が起こったのが把握する。それと同時に周囲を見渡し、自分がいる場所が安全か、すぐに移動が必要かを判断する。その次に全身のチェック。強い痛みがあると、そこだけに意識が集中し、他の部分のケガを見落としやすい。頭や胸・腹などは、最初は痛みが軽くてもあとから重症になることもあるので、頭の先から重症になることもあるので、頭の先から爪先まで触ったり動かしたりして、痛みや変形、動きの異常がないか確認することが大切です。

対処法を知っておき、できることをしっかりやる

多量の出血を前に、対処法を知らない人と、手順をしっかり把握している人では、処置のスピードも確実性もまったく違います。テキストで手順を読むだけでなく、自分の体で繰り返しリハーサルして、動きを感覚で覚えておくといい。
傷の止血、洗浄、骨折・捻挫・脱臼の固定など、できることは手の届く範囲に限られるとしても、可能な処置を淡々と行えるくらいにしておきたい。
低体温症、熱中症、高山病は、症状が軽いうちに自覚し、対処することで重症化を防げる。また、普通に歩けない状態での処置は、このまま登山を続けるためではなく、あくまでその場から無事に下山するためのものだということを認識しておきましょう。

自力下山か、救助要請か、症状に応じて見極める

動けるようなら自力下山も選択肢に入れてよいだろう。だが、時間の経過とともに症状が重くなることもあるので、登山道の状況、下山口までの距離なども併せて判断したい。
大腿骨や骨盤の骨折、または骨折が2ヶ所以上ある場合は、すぐに救助要請を。多量の内出血を起こしていることがあるからだ。また、頭、胸、腹部を強く打ったときも要注意。内蔵破裂、肺挫傷などでは、最初の痛みは耐えられても、次第に重症化していく。自力下山するときも、救助を待つときも、症状の変化に気をつけて、記録を取っておきたい。
ビバークや救助待機は落石、雨、風を避けられる場所を選び、ツエルトやエマージェンシーブランケットで身を守りましょう。

応急処置に行うための最低限持つファーストエイドキット

応急処置に行うために、これだけはもっておきたい必携のファストエイドキット。
山奥では、救助要請してもすぐに助けが来るとは限らなず、その場で数日間耐え忍ばなくてはならない。登山中に、万が一困難な状況に陥ったとしても、応急処置が行えるように、最低限の備えとして、用途、使い方を理解して携行したい。
マイクロボア(茶テープ)、トランスボア(白テープ)のテープなどはなじみが薄いかもしれないが、一般向けに販売されているため、どれも手に入れやすいです。

三角巾

腕を吊ったり、止血などに使う。帯状に折りたたんでおくとすぐに使えます。

ガーゼ(滅菌、非滅菌)

圧迫止血やキズの保護に。トランスボア(白テープ)、消毒綿を2枚程度持っておく。

新聞紙

5枚程度持っておく。固定のギプス代わりに使えます。

エラスコット

コットンの弾性包帯。骨折時の固定など、巻きやすく、安定感がある。テーピングの代わりにも。2〜3巻持っておきましょう。

手袋

他社の手当てに必須。医療用の使い捨てのものを複数枚持っておきましょう。

絆創膏

湿潤療法のものではなく、一般的なガーゼ+テープのもの。

ピンセット

傷から細かいゴミをとりのぞく。

ハサミ

処置の場面ではナイフより使いやすい。

穴をあけたペットボトルの蓋

水で傷口を洗うときの必携アイテム。千枚通しで穴をあけておく。

マイクロボア(茶テープ)

皮膚が濡れていても貼れる。傷を寄せるときなどに役立つ。

トランスボア(白テープ)

手で簡単に切れる。包帯、ガーゼの固定に役立つ。

消毒綿

傷の消毒に使う。個包装が便利です。

アルコール綿

ピンセットなど機器の清拭に。

内服薬

鎮痛剤、胃腸薬など、使い慣れているもの。

ポーチ

他者に取り出してもらう際にわかりやすい色、形状のものがいい

ファーストエイドキットとは別にあると便利なスグレモノ!応急処置の幅を広げてくれるアイテム

応急処置がしやすくなったり、スピーディになったりする、持っていると便利なアイテムたち。それぞれの重量や大きさはそれほどでもないので、熱中症、低体温症など、備えたい症状に併せてピックアップしても良さそう。

うちわ

風を送って、体のほてりを冷ます

ノコギリ

枝を使って副え木、焚き木、杖などを鶴久。たったの105g

タオル

止血のときにガーゼの代わりになる

自着性包帯

巻くとくっついていくので、片手でも巻きやすい

サムスプリント

受傷箇所にあわせて整形できる、アルミウム合金とウレタンフォームの副え木

折りたたみ傘

日差しをさえぎり、熱中症をやわらげる

ツエルト

体調不良、救助待機などの際、寒さ、雨、風から身を守る

エマージェンシーブランケット

体の放射熱を逃さず、体温を守る。広げてもたたみやすく、ガザガサする音が静かなポリエチレン製がおすすめ

安全ピン

ウェアで腕を吊る場合など、簡易な固定に

氷スプレー

ミストが氷状に変化スプレー。熱中症や捻挫の冷却に

プロフィール画像

てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。