登山など、さまざまなアクティビティで大活躍するテント。
しかし、使用後そのまま保管したのでは、本来の性能を維持し、快適な居住空間を保つことは出来ません。
長く快適に使うには、乾燥と汚れの除去がとても大切です。
ここでは、テントって、どうやってお手入れすべきなの?という疑問を解消すべく、通常時のお手入れ方法はもちろん、防水性をアップさせる方法、生地やポールやファスナーの修正やパーツ交換などのメンテナンス、お手入れに必要な道具まで徹底的に説明します。
正しいお手入れやメンテナンス方法を身につけて、テントをより長持ちさせましょう。
テントを長く使うポイント。乾燥と汚れの除去が大切。
アウトドア道具のなかでも高価なもののひとつがテント。これがすぐに使えなくなってはがっかり。正しい使い方とケアを学んで、できるだけ長持ちさせたい。
テントのケアはもちろん重要だが、それ以上に大切なのは正しい使い方を知ることです。たとえば、本来強い風にも対応できるテントでも、ペグをきちんと打っていないと過度な負担がかかってしまい、ポールの破損や生地の破れにつながってしまいます。壊れたらどうするかというよりも、壊さないためにどうすればいいか、説明書をよく読んで覚えておくことが重要です。
帰宅後に行うべきは、汚れを落とし、テントを乾燥させることです。乾燥の際、ベランダなどに吊るして干す人も多いが、これはあまりオススメできません。 というのも、テントはウェアなどと異なり、いろいろな素材を縫い合わせて作られています。同じ化学繊維であってもそれぞれ乾燥に必要な時間が異なるため、ベランダなどにぶら下げた状態で乾燥させると、素材による乾燥率の違いからシワやちぢみ、またラミネートタイプの素材の場合、剥離の原因となる場合もある。
こうしたトラブルをさけるためにもケアする際にもポールを通し、実際にフィールドで使うときのようにテントを立てた状態で空気にあて汚れを落とすのが正解です。
テントを長く使うポイント
- 山行前には試し張りして、各部をチェックする
- たたむ前に、内部にゴミが残っていないか確認する
- 使用後には設営した状態でしっかり乾燥させる
- ファスナーやポールのケアをする
- テントの乾燥は組み立てたままで行う
- 撥水剤は生地全体にまんべんなく
- 生地の修理は穴が大きくなる前に
- 風通しのいい場所で保管する
テント使用前にチェックするポイントとお手入れ
テントを使用する前に、テントパーツをチェックし、実際に設営しましょう。
購入したらパッケージを開け、必要なものがそろっているか確認する。山のなかで戸惑わないように、あらかじめ試し張りをして、テント設営の手順を覚えておくことも大切です。
張り網などに不備がないかチェック
設営したら、各部に不備がないか点検する。張り網や自在が正しくついているか、本体のフロア部分のペグループはついているか、ファスナーがスムーズに開閉できるか、などがチェックポイント。
シームコートで縫い目を防水処理する
テントには構造上、シームテープだけでは完全な防水性を発揮できない箇所がある。その部分の縫い目に、テントの外側からシームコート(撥水剤)を塗り、縫い目を塞いで防水処理を施します。
ダブルウォールテントではフロアの四隅の縫い目に塗る。薄くのばして乾燥させます。シングルウォールは、天井のループ部などに外側から塗ります。
テント使用後のお手入れ
テントの汚れ落としや各種パーツのケア
地面に接するボトムの部分は汚れやすく、使用後にそのまま保管していると土壌の成分で生地が劣化しかねません。汚れはブラシをかければだいたい落ちます。ひどい汚れは水につけてこすってください。それでも落ちないときにだけ薄めた中性洗剤を。ただし石けん分残らないように、そのあとは水でしっかり拭き取りましょう。
濡らしたタオルなどで汚れを拭き取る
軽い泥汚れなら、乾燥後、叩けば落ちる。もし落ちなければ、ぬるま湯に浸けてよく絞ったタオル(スポンジ)でこすって落とす。洗剤は、生地が変質する可能性があるため、極力使わない。
ボトムの汚れ落とし
テントを組み立てたうえで全体をひっくり返し、ボトムを大きめのブラシなどでやさしくこする。あまり汚れていないときは、これだけでも十分。
歯ブラシで汚れ落とし
特に汚れている部分があれば、使用済みの歯ブラシなどを使って重点的にこすって落とす。無理に力を入れて生地を傷めないようにていねいに。
スポンジで拭き洗い
こびりついていてブラッシングだけでは汚れが落ちないときは、ぬるま湯でスポンジやタオルを濡らし、きつく絞ってから拭き取る。その後は十分に乾燥させる。
テント内部のゴミを残らず出す
テント内にゴミや小物(ライター、ヘッドランプなど)を入れたままでたたむと、臭いや汚れ、破損の原因に。たたむ前には忘れ物を確認し、細かいゴミはテントを逆さにして残らず出す。
テントを逆さにするとき、強風にあおられないように。また、ポールに無理な力がかかったり、テントが何かにぶつからないように注意する。
ファスナーの滑りをスムーズにする
ファスナーのレールに泥や砂がついているとスライダーが磨耗し、正しく開閉できなくなってしまう。付着した不泥や砂を落としつつ、ファスナー用潤滑剤を塗ることで磨耗を防げる。
ポールやペグについた泥を落とす
本体だけでなく、ポールやペグもきれいにする。ポールは濡れタオルで拭いた後に乾燥。ペグは水洗いで泥などをしっかり落として、乾燥させる。*
テントの乾燥方法とたたみ方
テントの湿り気はカビや異臭の原因かつ防水コーティングの劣化の元凶。テントを組み立てたら、なにかに立てかけ、湿りやすいボトムを中心に乾燥させます。この状態は風に弱いので、横で番をすること。本当は陰干しがよいですが、直射日光も短時間で乾くので、大きな問題はありません。
テントの乾燥方法
フライシートの乾燥
外側の雨を防ぎ、内側は結露するフライシートはもっとも湿りやすい。表面が乾いたら、裏返してテントにかけておくと、まんべんなく乾燥できる。
立てかけてボトムの乾燥
テント本体の乾燥は組み立てたままボトムを外に向けて行なう。そうすることで空気に触れる面が多くなり、乾燥時間がかなり短縮できる。
設営した状態で陰干しする
風通しのいい場所で陰干しして、自然乾燥させる。その際、設営した状態で干すこと。物干し竿などに垂らして干すと、生地が縮んでポールが入らなくなる場合も
テントのたたみ方
テント内のゴミを出す
テントの入り口を開き、内部のゴミを外に出す。思い切って持ち上げ、テントに負担がない程度に振ると作業が早い
ボトムを内側に半分に折る
多くのテントは左右対称。対になる角を合わせ、ボトムを内側にして半分に折る。うまくやれば地面にテントがつかない。
横半分、さらに半分に折る
中央で、さらに半分に。適度な幅になるまでこれを繰り返す。テントをアゴではさみ、両手を前に突き出すと折りやすい。
縦にクルクル折っていく
このくらいの幅になったら、次は縦に折りたたむ。ゆっくりと圧縮して十分に内部の空気を抜くときれいにたためる。
完成
ボトムが内側なので、汚れが他の部分に触れず、広がらない。しかもすべて空中で行なえ、作業時に汚れることもない。
フライの撥水性を高める
撥水性が保たれたフライシートは、雨をドンドン弾く。だが、撥水性が落ちると全面がぬれたままに。フライ表面の水が水玉にならなくなったら、撥水剤の出番です。
まず汚れを落としてから撥水剤を使用しましょう。そうでないと、その汚れが落ちたときに撥水性も落ちてしまい効果半減してしまいます。
撥水剤は、液体タイプとスプレータイプの2種類があります。
液体の薬剤は、撥水剤をスポンジにとり、まんべんなく伸ばす。スプレーよりも面倒だが、厚塗りしやすいのが長所。スプレーは、広範囲に一気に作業を行うのが便利。生地から20cmほど離して噴射すると、液が広がり疲れにくい
山行中にできるテントのケア
山のなかでもテントのケアはできる。もし朝の出発前に時間があれば、本体やフライシートを干して、テント内の砂やゴミを出してから撤収しよう。そうしておけば、家に帰ってからのケアが楽になる。
テントの防水性UPのために
縫い目の防水をしているシームテープは経年劣化ではがれてくる場合がある。その場合、シームコーを縫い目の外側から塗ることで縫い目の穴を塞ぎ、シームテープと同じ防水効果が得ることが可能。シームコートはウエアなどの縫い目の防水にも有効なので、ひとつ持っておくと便利
縫い目をコートする
フライシートの生地の縫い目に沿って、シームコートを細長く絞り出す。無駄なく、しかし小穴を十分に覆うように
指などでなじませる
指などを薄く膜を作るように伸ばし、縫い糸と生地の間の隙間をつぶす。シームコートは乾燥が早いので手早く行おう。
テントの生地の修正
テントを使っていると避けては通れないのが、フライシートやテント本体の生地の痛み。早め早めの補修が、大きなトラブルをなくす秘訣。リペアシートがあれば、自力での処置も簡単です。 裏からもリペアシートを張っておくと、多少大きめの穴でも自分で補修可能。コインサイズが目安です。それ以上の破れはメーカーに修理を依頼しましょう。
穴を見つけたらすぐ補修
小さな穴を発見したら、すぐさま補修を行う。そのまま使っていると次第に穴が大きくなり、直しにくくなてつぃまう
穴より大めにシートを切る
穴のお大きさを充分にカバーする面積にリペアシートを切る。シートが小さいと、生地が引っ張られたときにはがれやすくなる
シートの角を丸く切る
サイズを合わせたら、シートの角を丸く切り取っておく。角があると、巣の部分からシートがめくれてしまう恐れがある
穴を中央にしてシートを貼る
シート裏面の紙をはがし、穴が中央にくるように貼る。生地にシワがよってしまうと補修の効果が薄れ、はがれやすくなるので注意
貼りあがりは美しく
これが貼り終わった状態。近くで見れば補修したことがわかるが遠くから見ればほとんど見分けはつかないくらいきれいに仕上がる
丸いものでさらに圧着
最後にドライバーの持ち手やペンの端などの丸い部分でこすり、圧着度を高める。このひと手間がとても大事。
テントのファスナーのすべり向上
ファスナーは使っているうちに磨耗して、すべりが悪くなります。スムーズに動かないからと力を入れて使っていると破損したり、生地をかんで傷めてしまいます。使い勝手が悪いだけでなく、大きな問題につながりかねない。潤滑剤を使えば、驚くほど滑らかに動くようになります。ウエアや寝袋のファスナーなどにも使え、ひとつ用意しておくとよい。また、テントのファスナーは泥汚れなどが付着しやすく、そうした汚れを落とすこともファスナーの機能維持に重要になります。
テントポールのパーツ交換
強風などであおられて曲がったり、ミスを犯して折れることもあるポール。交換用パーツは大きなショップなら用意していますし、店頭になくても取り寄せ可能です。 多くのテントのポールは交換可能だが、一部のポールにはメーカー依頼して修理しないとできないものがあるので注意。
ポールが曲がってしまった
下はつながったまま曲がってしまったポール。強度が落ちていて、いずれ破損するはずだ。上は交換用。
エンドチップを外す
ポールを伸ばして連結し、内部のコードが伸びやすい状態にしエンドチップを外す。
コードの根元をカット
ポールを連結していた伸縮性のコードの根元をハサミで切る。ポールのパーツをすべてバラせる。
曲がったポールまでコードを抜く
ショックコードを引っ張って、曲がってしまったり、折れてしまったポールの部分までパーツを抜いていく
コード抜け防止方法
コードには伸縮性があるため、不必要な部分まで抜け恐れも。不要なポールに巻いてしめておこう。
交換用ポールにコードを通す
交換用のポールのなかにコードを通したら、他のポールも元に戻し、再びエンドチップにコードを結ぶ
コードは余裕を持たせて
はじめに末端を切りすぎるとコードの長さが足りなくなる場合もあるが、これくらいの余裕があればよい。
エンドチップを戻す
エンドチップをポールの末端に差し込んだら完了。
テントを壊さないように使うには
ケアやメンテナンス以前に、破損や劣化をもともと防ぐことがテントを長持ちさせる最良の方法。手間がかかるからと荷物を入れたまま引きずって移動させたり、急ぐあまりにポールの連結をおろそかにしていると、テントはあっという間に傷んでしまう。使い終わったあと、すぐに乾燥させて保管するのは面倒だが、湿ったテント生地はどんどん機能を損なっていく。困ってから補修するよりも、あらかじめ補修の必要がない使用方法がベストなのはいうまでもない。
ポールはいっかりと連結する
ポールの連結部分はストレスが多い部分で、よく割れやすい。この部分は最後までカチっといれこまないでポールに圧力がかかるとひびが入り、ひどいときには金属がめくれ上がったり、割れ落ちる。正しい使い方を守れば、こんな問題は起きにくい。
地面の上で引きずらない
テントを移動するときは、内部のものをすべて出し、空中に浮かせて行なう。引きずると、ボトムにあっという間に穴が空く。
保管場所にもご注意を
テントの大敵は高温多湿。湿ったまま日の当たる車内に放置するのは最悪。迅速に乾かせないときには、日陰においておこう。
自分でできる簡単な補修
ライシートの撥水性が低下してきた
フライシート(ダブルウォールの場合)やテント本体(シングルウォールの場合)の撥水性が低下してきたと感じたら、市販の撥水スプレーを塗布して、撥水性を回復させる。
ショックコードのテンションが緩んできた
ポール内部のショックコードが緩んできたら、フレームの端からコードを取り出し、長さを調整。緩みがひどい場合はコード自体を交換する(交換は登山用品店やメーカーに依頼)
生地に小さな穴が開いてしまった
生地に穴が開いたら、リペアテープで補修。穴の周辺の汚れを落とし、適度な大きさに切ったテープを裏表両面に貼る。貼ったあとはグリップエンドなどでこすり、圧縮。
メーカーに相談すべき補修
ポールの曲や破損があった
ポールは、使っていれば多少の曲がり癖がつくが、ひどい場合は曲がった部分を交換する。端が欠けたり、折れたりした場合も同様。なお、軽い曲がりを強引に直そうとすると、かえって折れの原因になる。
ファスナーのスライダーが磨耗した
スライダーが磨耗するとファスナーを噛み合わせる力が弱くなり、閉まらなくなる。スライダーをペンチで締めて直そうとする人もいるが、ファスナーを痛める原因になるので厳禁。スライダーを交換すれば解決する。
生地に大きな穴が開いてしまった
3cm程度の穴まではリペアテープで補修できるが、それ以上だとミシンなどの大がかりな道具が必要になるのでメーカーに修理を依頼する。
テントのお手入れに必要な道具
スプレーと薬剤はフライシートの撥水性回復を使い、どちらかひとつあればOK。シームコートは生地の縫い目をコーティングし、小さな穴から水が漏れてこないようにする防水液。小さなノズル付いていて、狭い場所でも塗りやすくなっている。すべり剤とシリコンスプレーはどちらもジッパーに使う潤滑剤。
撥水スプレー
テント本体やフライシートの撥水性を回復させる
ファスナー用潤滑剤
ファスナー専用の潤滑剤。塗布すれば滑りがよくなる。
リペアシート
生地に穴を開けてしまったときに補修。裏に粘着成分がついたリペアシート。メーカー純正のものは色が統一でき、補修箇所がわかりにくくなるのでおすすめ
歯ブラシ
ファスナーのレールなど細かい部分に付着した泥や砂を落とす
タオルやスポンジ
ぬるま湯で濡らして、テントの生地についた汚れを拭き取る。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。