雪山登山で必要なスノーショベルの選び方 グリップやブレードの形状が大切

雪山登山で必要なスノーショベルの選び方 グリップやブレードの形状が大切

雪山三種の神器のひとつ、スノーショベル。雪崩対策以外にも、テント設営時の雪面の整地や雪の除去などに活躍するアイテム。

ただ、その形状やサイズ、用途もさまざま。ここまで種類が多いと、雪山初心者はどれを選べばいいのか迷ってしまいます。

そこで、今回、雪山登山に必要なスノーショベルの選び方を解説していきます。スノーショベルとは何かをはじめ、ショベルの種類、各部名称や機能、選び方のポイントなどをまとめています。

雪山登山に必要なショベルとは

雪上において、ショベルはなくてはならない山道具。テント設営時の雪面の整地や積もった雪を除雪するときに使うし、ビバークのための雪洞を掘るにも不可欠です。トイレや、ちょっとしたテーブルを作るときなどにも大活躍する。

そんな雪山生活での必需品であると同時に、雪山特有のアクシデント、雪崩事故に対応するためのセーフティーギアとしての役割もあります。雪崩が発生したとき、仲間が巻き込まれて完全に埋没してしまったら、ショベルがなければ、お手上げです。膨大な雪の塊を前に、素手では太刀打ちができません。

かつては、ほとんど工事現場で使うような重たいショベルをかついで山に入っていた時代もあったが、ここ十数年のバックカントリーブームもあって、最近では登山用ショベルの軽量化が進み、携行がラクになった。

雪山登山ショベルの種類

ひとくちにショベルと言っても、そのサイズや形状、得意とする作業内容はさまざまです。
そんな多くのショベルのなかから山行目的に適した1本を見つけるために、ショベルの種類を見ていきましょう。

Dグリップ

Dグリップは持ちやすい形状になっているので、操作性がとても良い。そのため、握っている手も疲れづらく、雪を下からすくうにしても、上から削るにしても効率よく作業できる。工事現場の作業員が持つショベルのグリップはD型なのを見ても納得できるかもしれない。また、冬山の分厚いグローブ、とくにミトンタイプを使用してもなんら支障はない。以上を考えると、作業性を重視するならばD型なのは間違いない。

Tグリップ

このタイプは、ほとんどの軽量ショベルに採用されている形状。最大のメリットは収納性がとても良いこと。バックパック内に入れず外に装着する場合、Tグリップの形状を生かしてバックパックのアイスツールアタッチメントに装着することも可能。作業性はD型には及ばないものの決して悪くはない。操作性を良くしたピストルのグリップのようなY型タイプも登場している。

多機能タイプ

シャフトを抜いて、グリップ部分をブレードを差して使うことで、クワのような使い方もできるタイプ。クワ状にすると、雪洞から雪を掻き出す作業や、雪崩遭難者を救出する際のV字掘削法と呼ばれる作業のときにも威力を発揮する。そのほか、シャフトの内部にスノーソーを内蔵してたり、負傷者を搬送する際、スキー板とショベルのブレードを利用してそりを作るためのパーツを内蔵しているモデルなどもある。

ポリカーボネートタイプ

ブレードに防弾ガラスの材料などにも用いられる熱可塑性プラスチックの一種「ポリカーボネイト」を用いたショベル。アルミブレードのショベルの重量が600〜800g前後なのに対し、ポリカーボネイトブレードのショベルは400〜600gと、とにかく軽量なのが特徴。弱点はやはり、硬い雪や氷などには歯が立たず作業性がかなり落ちる点。

スノーソー

雪の塊を切り出すときに使うノコギリ。雪洞を掘るときに締まった雪を効率よく切り出したり、防風のためにテントに周りに積み上げる雪のブロックを切り出すときにも使用。これらはショベルのブレードではきれいにできないので、作業効率が大幅にアップする。また、雪崩回避のための雪質チェック「弱層テスト」の際、雪断面をきれいに切るための必需品だ。刃のしっかりしたソーは骨折時の添木を切り出すのにも使える。

雪山登山ショベルの種類
タイプ特徴
Dグリップ
  • ・握りやすい形状で疲れにくい
  • ・グローブの種類を選ばず使える
Tグリップ
  • ・コンパクトで軽量、パッキングもしやすい
  • ・アバランチ3点セットはこのモデル
多機能タイプ
  • ・ふつうのショベルのようにもクワのようにも使える
  • ・雪洞堀りやアパランチレスキューに適する
ポリカーボネートタイプ
  • ・プラスチックの一種なのでとにかく軽量
  • ・氷や硬い雪などに、文字どおり歯が立たない
スノーソー
  • ・雪洞堀りのブロック雪の切り出しに
  • ・雪崩回避のための「弱層テスト」の必需品

雪山登山ショベルの各部名称と機能

グリップ

形状は、大きく分けてT型とD型の2種類がある。より握りやすさを求めたタイプと、収納性と軽量性を重視したタイプ。

シャフト

現場で使いやすい長めのもの、収納性と軽量性を重視した短めのものがある。握りやすいよう、楕円形や多角形などのモデルもある。

ブレード

軽量性を重視したポリカーボネート性と耐久性を重視したアルミ製がある。また、使用目的に合わせて、形やサイズも多様

トップ

尖らせた形状など、いろいろある。ブレードの形状で使い勝手や収納性に大きく差が出るので、選ぶ際に最重視するポイント

雪山登山ショベルの選び方

使用用途が長期のテント山行か2泊程度か、バックカントリースキーか、険しいバリエーションクライミングかなど、自分のスタイルに合わせたショベルを選びたい。

グリップの形状 T型・D型

持ち手のT型とD型のどちらを選ぶかは、山行スタイルで決まります。ショベルが必ず必要で長時間使用する山行であれば、D型を選ぶことが多い。

たとえば、雪洞泊。人数にかかわらず、雪洞作りにはショベルを長時間使い続けます。また、掘るときの雪質もそれなりにしっかりした雪質を選びます。つまりよく締まっていて硬い雪。そうなるとD型のほうが力が入りやすく、真価を発揮します。

またベースキャンプを決めて、数日間同じ場所でテント設営するときにも便利です。たとえばバックカントリースキーや雪山登山において、アパランチセットを携行する必要があるが、この場合に使うのは、ショベルでアパランチテストを行なうなど、1日の行動のなかで短時間。また、1泊2日のテント山行、あるいは長期山行であっても移動してテントを設営するときは、収納性と軽量性を優先してT型の使用がおすすめ。

トップやブレードの形状

先が細めのモデルは硬い雪を扱いやすいというメリットがあるが、逆にそのメリットのみということになります。ブレードの先はある程度フラットなほうが雪山では扱いやすい。平地で砂や土を掘るのとは異なり、雪はブロック状にして掘るのが基本。そうするとブレード自体にある程度の面積があったほうが効率良くブロックを成形できる。

また、雪洞を掘る時、雪洞の天井部分をブレードのトップを使って凹凸が少なくなるように削る。このときも、ある程度フラットなほうが削る作業には向いている。ブレード両サイドの枠は、あまり高さのないものを選ぶ。たとえばアパランチテストで雪の側面の一部分だけを切りたいときなどは、あまり枠が高いと上手く操作できないからだ。登山用のショベルはブレードにも穴が空いている。これは軽量性向上のためと、雪崩発生時の捜索の際、ショベルを肩に背負うためのストラップを装着しやすくするため。

収納性も考慮

ショベルはその形状からパッキング時にはどうしてもかさばってしまうが、少しでもコンパクトに抑えたい。ブレードとシャフトが分かれるタイプと一体型があるが、シャフトが分かれるタイプのほうが、収納性は高い。

一体型のメリットは、アパランチ発生時など最大限急ぐときに、わずかな動作でショベルを瞬時にセットできること。使用し始めるまでの動作が迅速という点がある。

また、シャフトの長さも重要で、1段式と2段式がある。2段式のほうがシャフト部分をより長めに調整できるので、操作性がいい。1段式はシャフト自体も細い場合が多くコンパクト。もし2段式と1段式があって両方とも収納サイズが同じ長さであれば、2段式がおすすめ。

太さが多少変わっても、実際に使用するときは短すぎると極端に使いにくくなる。

収納性も考慮しつつ、使用する状況にできるだけマッチするモデルを選びたい。

ほかに特殊な機能があるか

いくつかの登山用具メーカーからショベルが発売されているが、それぞれに個性があります。軽量性を重視したもの、耐久性重視のもの、またショベル本来の機能に加え、プラスαでなんらかの特殊な機能が付加されているモデルもあります。

例えば、ショベルの中央両サイドに小さな穴が空いているショベルは、その穴にスリングを通して簡易支点とする「スノーアンカー」として代用できる機能をもっているモデルがある。

また、シャフトの中にスノーソーが組み込まれているモデルもある。これは収納性にも優れていて便利なモデルです。ブレードの上下左右にに丸い穴が空いているタイプは、スキーなどを接続するときに使用できたりもします。

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てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。