青空の下、きれいな景色に囲まれながら食べるごはんは、山登りの大きな楽しみのひとつ。
効率的なエネルギー補給をするだけでなく、自分のカラダの仕組みや、登山に必要な栄養のことをもっと知ることで、山で食べるごはんをより楽しくなるはず。
ただ、はじめて食料計画をする人や食料計画のコツを知らない人は、食料計画が上手くできません。山行日程や季節、そして自分の体力・技術などを考慮しない、無理な食料計画は最悪の場合、事故や遭難を起こしてしまう可能性もあります。
ここでは、効率なエネルギー補給や荷物を少しでも軽くしてラクに登山ができるような、上手に食料計画ができるポイントを解説していきます。
山の食料計画を立てて、食べておいしく、カラダにもうれしい山ごはんを。
登山の食料計画をする6つのポイント
おいしいご飯を食べたければ重たくなるし、軽くしたければ栄養が足らなくなる恐れがあります。登山では、食料をどのくらい持っていき、何を、いつ、どこで食べるかが重要になります。
ただ、計画を立てるうえで、自分の体力や技量に見合った計画を立てることがいちばん大切です。自分の実力を超えた無理な山行計画では、事故や遭難を起こしてしまいます。
また、山行日程や季節、スタイルに応じて、持っていく食料は大きく変わってきます。食料計画時に考慮するポイントを説明していきます。
山行の日数から食事の回数を考える
日帰りの登山であれば、昼ごはん1食分で済みますが、2泊の登山であれば、1日目の昼・夜、2日目の朝・昼・夜、3日目の朝・昼の合計7食分の用意が必要になっていきます。
季節・気温・湿度の対応
寒く乾燥している冬は食中毒などの心配は少ないですが、気温・湿度の高い夏は食材の持ち運びに注意が必要です。
自分の体力で持てる荷物の重量・容量
長期の山岳縦走はより体力を使うため、必要なエネルギーを効率良く摂取できる最低限の荷物に抑えたい。重い食料のせいで、バテてしまったのでは本末転倒。
悪天・荒天などのアクシデント
悪天候のときは、食事がとれなくなる可能性があります。昼食を簡単なもので済ませられるように計画するとよい。
どのような調理器具を持っているか
持っている調理器具によって、調理できる料理が変わってきます。まずは最初は、シンプルな器具で作れる料理を計画すると良い。
どのように食材を調達するか
近場の日帰り登山に行く場合は、前日に近所のスーパーで買い出しすればよい。遠くに遠征する登山の場合は、早めに食材を調達しておきたい。
登山はどのくらいエネルギーを消費するのか?
登山の消費エネルギーは、気温や天候、斜度や登山の歩きやすさ、歩く速さなど変わってきます。
例えば、荷物を4.5〜9kgを背負って、塔ノ岳表尾根をピストンした場合、消費エネルギーは以下のようになります。
- 消費エネルギー:約3373kcal(おにぎり約19個分)
- コースタイム:7.7時間(塔ノ岳表尾根・ピストン)
フルマラソンを5時間完走した場合、約2700kcal消費するので、登山はフルマラソン以上のエネルギーを使うと言えます。そのため、計画的に食事を取ることが必要になります。
どのくらい食料を持っていけばいいのか?
1日3食の山ごはんは、普段食べている食事と変わらないエネルギー量が理想です。1食を約600kcal摂取するなら、1日3食は約1800kcalあたりが目安。
行動食は、山ごはんで不足するエネルギーをもとに、行動食として摂取すべきエネルギー量として計算していきます。
例えば、体重が60kgだった場合、何もしなくて消費するエネルギーは、30 × 60kg = 1800kcalになります。さらに、6時間の登山では、2160kcal(1時間で約360kcal消費)を消費します。 1日に取得すべきカロリーは、合計3960kcalとなります。
ただ、これだけのカロリーを、山ごはんと行動食で補うのは難しいため、行動食は、約1200kcalあれば、充分かと思います。
山に持って行くべきエネルギー量
1日のエネルギー量の目安:約3000kcal
(山ごはん(朝昼夕):約1950kcal + 行動食:約1200kcal)
山ではどんな食べ物を選べばいいのか?食料の軽量化も考慮してみる
携行しやすく、たべやすいものを
山ごはんは日常生活で食べている食事と同じ量、同じ栄養バランスにすることが理想です。
山小屋の食事は肉や野菜なども豊富で、家のごはんと変わらない栄養バランスのものを食べることができますが、山で自炊する場合は持っていける食材の種類も量も限界があり、かなり難しい。
栄養バランスを崩さず、同じ食材を使いまわしながら、味に変化を加えるといった工夫も必要です。
また、家のごはんと変わらないものを山に持っていこうとすると、荷物が重たくかさばってしまいます。そんな時は、お湯があれば簡単に調理ができるアルファ米やドライフーズを選ぶと良いです。最近では、日持ちも良くバリエーションも多いし、味もとても美味しいものが多いのでとてもおすすめです。
あと、山ごはんだけではなく、行動食もバランス良く持っていくと、荷物がコンパクトになります。
- 朝食の食べ物を選ぶポイント
寝ている間も体温の維持などにエネルギーが使われているため、体はエネルギー不足になっており、朝起きて何も食べないのはとても危険です。前日寝る前に仕込みをして、手早く作れるものがよい。 - 昼食の食べ物を選ぶポイント
日帰り登山であれば、山に持っていける食材の幅が広がり、手の込んだごはんに挑戦できる。一方、山岳縦走の場合、いつ天候が悪化するか分からないので、手の込んだ料理は避けて、手早く食事を済ませられるもの。 - 夕食の食べ物を選ぶポイント
夕食は山行中に疲労した筋肉を修復させるため、タンパク質を含んだ食材を使ったメニューがよいでしょう。冬場では、体が温まる「鍋料理」がおすすめ。調理のときには翌日の朝食の準備もしておきましょう。
行動食ってなに?
数時間歩き続けるためには、朝食と夕食の間に、昼食の代わりにもなる小まめなエネルギー補給が必要だ。休憩時にすぐ食べられる手軽なものを「行動食」として持参しよう。行動1時間当たり約100〜200kcalを目安に、基本的には自分が食べたいものとなるが、調理不要で日持ちし、カロリーが高いものを。1種類に偏らず、いろいろ持っていくとバランスもよくなる。
チョコレート、トレイルバター、ようかん、セミドライフルーツなど砂糖の添加はなく素材の甘さをいかしたもの。血糖値がゆるやかに上昇するものがおすすめ。
水分補給ってどのくらい必要なの?
1時間あたり200〜250ml
30分〜1時間ごとに休憩をとり、こまめに水分を摂るのがよい。摂取量は、1時間あたり、体重の4〜5倍が目安。体重50kgなら200〜250mlほど補給が必要となる。
また、行動中に摂る水分としては、電解質を含んだもの(スポーツドリンクなど)がよいとされているが、多量に摂取するときや甘みを強く感じるときは、水で倍に薄めて飲むのもひとつの方法。
具体的な食料計画をしてみる
それでは、食料計画のポイントや1日に必要な栄養・カロリーが分かったところで、具体的に食料計画を立ててみたいと思います。
基本は、1日に約3000kcalのエネルギーをバランス良く摂取すること。
山ごはん(朝・昼・晩)で1800kcal、つまり1食600kcal前後。行動食で約1200kcalを目安に、食べ物を選んでいくとよいです。
また、食料を選んでいく際に、あまりにも重いものや嵩張るものは避けましょう。お湯だけで料理を済ますことができるアルファ米やドライフードのものを選ぶと、軽くてコンパクトに収まります。
では、そんなポイントを踏まえて、食料を選んみました。
参考にしてみてください。
朝食 / 必要なカロリーの目安:600kcal
おにぎり 鮭 | 178kcal |
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おにぎり ツナマヨ | 237kcal |
コーンスープ | 59kcal |
昼食 / 必要なカロリーの目安:600kcal
チキンラーメン | 375kcal |
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ヤマザキあんぱん | 305kcal |
夕食 / 必要なカロリーの目安:600kcal
尾西の白米 | 366kcal |
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アマノフーズ 畑のカレー | 209kcal |
行動食 / 必要なカロリーの目安:1200kcal
カロリーメイト(4本) | 400kcal |
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ブラックサンダー(2個) | 224kcal(112kcal×2個) |
ミックスナッツ 72g | 472kcal |
ドライフルーツ | 230kcal |
少し目標としていたエネルギー量に満たないところもありますが、水分を補給したり、行動食を多めに摂取したり、夕食の後に夜食を食べたりなど、少し工夫をして、効率良くエネルギーを補給していくと良いです。
山で食べる食料はどこで買えるのか?おすすめのお店を紹介
カルディ・無印良品・コンビニなどの食材が使い勝手よい
全国に408店舗を構えるカルディコーヒーファーム。コーヒーだけでなく食材の種類が豊富で、「山メシ調達はいつもカルディ」という人もいるとか。小分けされた合わせ調味料や、スーパーではあまり見かけない食材など、山で使えそうなものがここにはあふれている。
他にも、無印良品やコンビニ、近くのスーパーで調達するのもよい。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。