ガス・ガソリンバーナーのお手入れ・メンテナンス方法!保管方法も解説

ガス・ガソリンバーナーのお手入れ・メンテナンス方法!保管方法も解説

登山やキャンプ、アウトドアで調理する際に必要な道具のひとつ。バーナーやストーブと呼ばれる加熱・調理用器具がある。といっても、「ガス」「ガソリン」「アルコール」「固形燃料」などの燃料による違いや、構造によってさまざまな種類が存在します。

ただ、アルコールや固形燃料の場合、構造も単純でシンプルなので、ここでは、ガスバーナー・ガソリンバーナーを中心にお手入れ方法を解説します。

使い終わってそのままにしておくと、ガスを吹き出すノズルにゴミがたまったり、サビついたり、点火装置が作動しなくなったり、不具合が生じることもある。使い終わったら掃除をして清潔に保つことがなにより重要です。

そこで今回、ガスバーナー・ガソリンバーナーのお手入れ・メンテナンス方法をはじめ、お手入れに必要な道具、正しい保管方法、メーカーに相談すべき補修など、バーナーを少し長く使ってもらえるよう、役立つノウハウをまとめました。

ガスバーナーのお手入れの基本 清潔に保つが究極のメンテナンス

誰もが簡単に扱え、安全で基本的にメンテナンスフリーのガスバーナー。しかし汚れを取り、水分を残さない最低限のお手入れは必要になります。

ガスバーナーは安全に使うことができるかを審査するガス検査に認められて、初めて店頭に並びます。目に見えず、安全性に留意しなければならないガスを燃料とするアイデアだけに、ユーザーが本体を分解したり、手を加えたりするのは原則的に禁止されている製品です。基本的に修理は必要なく、メンテナンスフリーの燃料器具として販売されている。なんらかの不注意で修理が必要になった場合はメーカーに依頼して対応してもらうことになります。

とはいえ、過酷な環境で使っているかぎり完全にメンテナンスフリーなどとはもちろんいいきません。本体内部の故障はほとんどないにせよ。外部からの影響で不都合をきたすことがあります。 たとえば、ガスを吹き出すノズルにゴミがたまったり、ゴトクにさびがついたり、点火装置が作動しなかったり。しかし、なにはともあれ、使い終わったら掃除をして清潔に保つことがなによりのメンテナンス方法といえます。

ガスバーナーのお手入れポイント

  • 水分を拭き取り乾燥させる
  • ホコリや汚れを取って清潔に
  • 使い方をもう一度おさらい
  • 保管は収納袋にいれてホコリをシャットダウン
  • スタッフバックに入れて保管する
  • ガスカートリッジはキャップをして保管する

ガスバーナーのお手入れ・メンテナンス方法

使用後にはすぐにメンテナンスが基本

燃料器具のメンテナンスのポイントは燃料の流れを妨げる異物はないか?ということ。カートリッジ内のガスは新鮮な空気だけを取り入れて燃焼する。障害物があるとガスのスムースな流れは妨げられ、出力が上がらなかったり、炎が赤くなったりする。つまり、ガスが不完全燃焼状態。その障害物の代表は、食べ物のカス、ホコリ、吹きこぼれの汚れ、水分など。それらの障害物を探すことからメンテナンスをスタート。吹きこぼれなどのガンコな汚れがバーナーヘッドに付着した際、水といっしょに汚れが本体内部へ流入する恐れがあるから水洗いはNG。また内部に入った水はさびの原因にもなる。タオルで水分をよく拭き取り、ブラシで取り除こう。

タオルで拭き取る

まずは吸水性の高いタオルで水分や汚れを拭き取る。帰宅後も再度チェックしてから収納袋にしまおう。

ブラシで汚れを取る

水気を拭き取ったら真鍮ブラシで汚れを払う。汚れは腐食や劣化につながるだけでなく、燃焼効率も妨げる。

これはやっちゃダメ

細いワイヤーを編み込んだデリケートなメッシュなどのバーナーヘッド部は破損につながる恐れがあるので、触らないようにしよう。

Oリングは定期的に交換

ガスカートリッジとバーナーを接続する部分には、Oリングと呼ぶパッキンが使用されている。これはゴム製のため通常使用でも劣化し、燃料のガスが漏れて事故を引き起こすこともある。使用から1〜2年が経過したら、積極的に交換しよう。安全ピンなど尖ったもので引っかければ取り外せる。

こんな症状が出たら注意

  • 切れ、ひび割れ
  • ささくれ
  • 硬化ちぢみ

赤い炎ばかりで、青い炎があがらない

ガスと空気が混合され燃料されると青い炎となる。燃焼状態に疑問が生じたらすみやかに点検を受けよう。

ヘッドにさびや汚れがないか確認しよう

吹きこぼれや水分を十分に拭き取らずに収納すると、ゴトク部にさびが発生してしまう。保管する際は風通しの良い場所に置くようにしたい。
真鍮ブラシはホームセンターに150円ほどで購入できます。毛先が柔らかく、細かいのでバーナーメンテナンスにもってこい。

ガスの出力が上がらないのはなぜ?

ガスカートリッジのバルブが凹んでいる

バーナー本体を接続する際に拭き取らず強く回しすぎると、ガスカートリッジのバルブが凹んでしまう。バルブが凹んでしまうとガスが出なくなってしまうので注意してほしい。山行出発前にバルブの形状をよく確認しよう。

極寒仕様のパワーガスに変えてみよう

気温が著しく低い環境ではガスは気体になりにくいため燃料しにくくなる。そんなときは低温時でも気体になりやすいプロパンガスを混合させた寒冷地用ガスカートリッジに変えてみよう。

ノズルにホコリが溜まっていないか

ガスカートリッジからのガスはこの小さな穴から勢いよく吹き上がり、空気と混合して着火され、安定した炎になる。ノズルが汚れていないかチェック

コレはやっちゃダメ

本体とガスカートリッジを横にして接続するのは禁止。垂直に接続しないと液体のガスが勢いよく噴出するので危険

点火装置が作動しない

点火装置が熱で溶けている

燃焼させた状態で扇風機で強い風をあててみると、炎が右に流されると同時に巻くようにして下へ。こうして点火装置が溶けることもある。

スパークする先端が濡れていないか?

火花が散る点火装置の先が濡れていると着火は困難。こんなときは、完全に乾くのを待つかライターやマッチで着火しよう。

出力を抑えて点火してみよう

ガスを出しすぎて、点火装置の放電力がガスの流れに負けている可能性がある。ガスの出力を抑えて、点火してみよう。

これはやっちゃダメ

日本で購入できるガスカートリッジはどれもバルブ形状が似ているが、すべてのメーカーのバーナーに対応するよう設計されているわけではない。必ずバーナーに合わせて、同じメーカーのガスカートリッジを使用しよう。

ガスカードリッジの使用・保管方法、正しい捨て方

ガスカートリッジについて勉強しておくこともトラブルを未然に防ぐ対処法のひとつ。ガスカートリッジにメンテナンス方法ということもないが、使用方法や保管方法、正しい処分方法にもちょっとした注意が必要です。

ガスカートリッジには圧縮されて液体になったLPガスが詰まっている。LPガスはガスカートリッジから排出される瞬間、気体に代わり、空気と混合され燃焼する。しかし、極度に気温が低い環境やガスカートリッジが冷えきった状態におかれると、LPガスは気体になって初めて燃焼するわけだから、寒冷地だと出力が低くなり炎が小さくなることがある。そんなときは、寒冷地でも気体になりやすいプロパンガスを含んだ寒冷地用のガスカートリッジが有効。

また逆に極度に暑い場所に置いておくとカートリッジ内のガスの圧力が高まり、爆発する恐れが高くなる。ほかの熱源を近づけたり、気温40度以上のところには置かないというのが鉄則。

あと、気軽に使えるガスバーナーだが、使用後に残ったガスの処理が悩み。ガス缶は最後まで使い切って捨てるのが鉄則。缶に穴を開けプシューっとガスを抜く人もいるが、ガスはなにかの拍子で引火する恐れもあるのでNG。バーナー本体を取り付け、ゆっくり燃焼させてガスを使い切るというのが安全な方法。中身がないことを確認して廃墟しよう。

お湯を沸かして使い切る

クッカーに水を入れ、お茶でも沸かすくらいの余裕をもって最後まで使い切る。

ガスが残っていたら、穴を開けてはいけない

マルチツールの栓抜きツールで裏側の端に穴を開けることができるが、これはNG。

ガスバーナーのお手入れに必要な道具

メンテナンスには真鍮ブラシと柔らかいタオルを用意。真鍮ブラシはスチールブラシに比べて柔らかく、本体を傷つける心配もない。素早く確実に汚れを落とせ、吹きこぼれなどのガンコな汚れを落としに重宝する。タオルはさびの原因の水気を拭き取るのに使用。山行時にはバーナー専用タオルを装備しよう。

真鍮ブラシ・金ブラシ

金属部についたさびを落とすには金ブラシがあると便利

タオルなど

吹きこぼれなどを拭いてきれいにするためにタオルや雑巾を用意する

ガソリンバーナーのお手入れの基本 こまめなクリーニングとOリング交換で不具合解消

山で使用したら、帰宅後にできるだけ早くクリーニングするのが基本。経年劣化するOリングは1年を目安に交換しよう。

高地、寒冷地はもちろん極地においても、力強い燃焼で登山家や冒険家の多くをサポートするガソリンバーナー。なかでもMSRのガソリンバーナーは、その信頼性の高さで愛用者も多い。ここでは、MSRのガソリンバーナーを例にして、そのメンテナンス方法を説明していきます。
壊れにくく、信頼性の高いバーナーですが、購入後まったくメンテナンスをしなくても大丈夫かといえば、それはNOです。
本体を振ることでジェットの詰まりを抑制できる機能が装備されているが、それでも長く使い続けるためには、登山から帰ってきたらバーナーヘッドに付いたすすきを拭き取り、定期的に分解してクリーニングを行わなければならない。分解も、最初は不安かもしれないが、付属のジェット&ケーブルツールと六角レンチでパーツ交換ができるように設計されているので、心配無用。
特に各地に装備されているOリングは1年ごとに交換し、燃料を通すヒューエルラインは定期的にクリーニングしてください。不具合が出てからのメンテではなく、出る前のクリーニングが大切です。

ガソリンバーナーのお手入れポイント

  • 燃料漏れの原因はOリングの劣化。1年ごとに交換を
  • ポンピングしても圧が掛からないときは、ポンプカップに発油
  • ほぼ使用していなくても劣化は進む。使用前にメンテナンス

ガソリンバーナーのお手入れ・メンテナンス方法

バーナー本体の各部分の名称を知る

メンテナンスするにあたって、その解説に出てくる名称がどの部分をさしたものなのかを知らなければチンプンカンプンだろう。そこで最低限の各パーツの名称とその場所を覚えておきたい。取り扱い説明書やホームページには、さらに詳しい名称が出ているので、そちらも参考にするとよいが、基本的なメンテナンスにおいて、下記の名称を知っておけば問題ないだろう。

  • バーナーヘッド
  • 五徳
  • ミキサーチューブ
  • プライミングカップ
  • ヒューエルライン

ジェットのクリーニング方法

ヒューエルラインを通った燃料が噴射されるジェットにゴミやすすがあると燃料の流量が減り、バーナーの性能を低下させる。シェイカーニードルによって微量なゴミは解消できるが、多い場合は分解して付属のニードルで取り除きたい。最低でも年に数回のクリーニングを行うよう。

プライミングカップを外す

バーナー本体の中央下部にある円形のカップがプライミングカップ。これを回して緩め、芯を取り除く

ヒューエルラインを外す

カップを外したら、バーナー本体のミキサーチューブからヒューエルラインを外す

ジェット緩める

バーナーに付属するジェット&ケーブルツールのレンチを使ってジェットを回して緩める

ニードルでクリーニング

外したジェットの内部からシェイカーニードルを取り出し、付属のニードルでクリーニングしよう。

ヒューエルラインのクリーニング

ガソリンバーナーの燃料不良の原因の大半は、このヒューエルラインのクリーニング不足。購入後一度もクリーニングしていないと思われるバーナーが修理依頼されてくると、大量のゴミが出てくるという。燃焼が安定しないときには、フィールドでも行えるのでしっかりと手順を覚えよう。

ケーブルを外す

ジェットを外したフューエルラインから、ケーブルをペンチや付属のジェット&ケーブルツールで外す

ケーブルのゴミを拭き取る

取り出しケーブルについた汚れをキレイなウエスで拭き取る

ケーブルでライン内を掃除

ラインにケーブルを戻し、幅約13cmで往復20回擦って内部清掃。再びケーブルを出しウエスで拭く

クリーナーを使う

さらに汚れを取りたいときは、ライン内にパーツクリーナーなどを通してクリーニングしてもよい

バーナー本体のクリー二ング

ジェットは小まめに、ヒューエルラインは最低でも年数回、その際の分解ついでに行いたいのがバーナー本体のクリーニング。ホームセンターで売っている真鍮ブラシで、ミキサーチューブやバーナーヘッド内部のすすやサビの原因となる吹きこぼれのシミ跡をきれいに磨き落としたい。またその際にバーナーヘッドを留めるネジの着脱に3mmの六角レンチが必要なので別途用意する。

バーナーヘッドを外す

別途用意した3mmの六角レンチで、バーナーヘッドを留めたネジを緩める。リング状のパーツも外れる。

ミキサーチューブを清掃

本体中央のミキサーチューブ内や空気取り込み口は細いので、ワイヤーブラシで清掃する。

フレームリングを清掃

バーナーヘッドを外した際に出てくるフレームリングも、真鍮ブラシで磨く。サビは燃焼不良の原因となる

綿棒を使って細部の汚れを除去

ミキサーチューブ上部の小さな穴は、綿棒を使ってゴミを拭き取る。パーツクリーナーを付ければ落ちやすい。

ポンプの各部名称を知る

燃料ボトルに装着して、燃料を吸い出し、火力を調整するポンプ。燃料の漏れを防ぎ、安全を確保するパーツなので、しっかりとしたメンテナンスが必要。とくにゴムでできたOリングやポンプカップは、使用頻度の多少にかかわらず年に1回の交換が必須。
なかでも燃料パイプブラッシング、コントロールバルブのOリングは不具合の原因となりやすいので、使用前に必ずチェックするようにしたい。

  • ポンプ本体
  • コントロールバルブ
  • ポンププランジャー
  • 燃料パイププラッシング
  • 燃料パイププッシングの溝

プランジャーの外し方

ポンピングしてボトル内の圧力を高めるプランジャー。通常使用中に簡単に外れないような仕組みになっているが、取り外す際にはプランジャーそのものに明記された1、2、3の手順を守れば、取り外しが可能。慣れるまではその方法に迷うかもしれないが、一度わかってしまえば至極簡単。自宅でしっかりと手順を覚える練習をして、山で不具合が生じた際に慌てないようにしておこう。

「1」という番号を合わせる

プランジャーに明記された「1」という番号と矢印を合わせる

プランジャーを回す

次に番号の「2」の下にある矢印の方向に、プランジャーを回転させる

プランジャーを引き抜く

回転させたら「3」の隣に書いてある矢印方向にプランジャーを引き抜く

慣れるまで何回も練習

コツを掴めば簡単に引き抜ける。ゴム製のポンプカップの不良はポンピングの不具合の原因。何度も練習しよう。

ポンプカップへの注油と交換

プランジャーを引き抜いたら、ポンプカップの劣化がないかを確認。劣化していたらすぐに交換しよう。またもし乾いていたらバーナーに付属されている専用のオイルで発油。ポンピングの際に圧力が掛からない不具合を解消できる。山でオイルがない場合は応急処置として唾液でもよい。

コントロールバルブのOリングの交換

コントロールバルブとは火力を調節するバルブ部分のこと。燃料の流出量を決める大切なパーツで、その内部のOリングの劣化は、燃料漏れの原因となる。ひび割れ、硬化を1年に1度は確認して、山での不具合を防ぐようにしたい。Oリング交換の際にはオイルを注入すると装着しやすい。

燃料パイプのOリングの交換

プランジャーを引き抜いたポンプ本体の燃料パイプ連結部分のパーツを、燃料パイプブッシングと呼ぶ。その内部にも燃料漏れを防ぐOリングが装着されていて、その劣化によって燃料漏れが生じる。こちらもジェット&ケーブルツールと安全ピンを使って取り外し、簡単に確認、交換ができる。

燃料ボトルキャップのOリングも忘れずに

ガソリンバーナー愛用者にありがちな失敗に、燃料漏れがある。しっかり燃料ボトルのキャップを緩めたはずなのに、バーナーを使おうとしたら燃料のツンとしたニオイがパックから…内部はビチョビチョ。そうならないためにキャップのOリングもマメに交換。

ガソリンバーナーのお手入れに必要な道具

バーナーには、各モデルに応じたメンテナンスキットが用意されている。工具のほか、交換パーツも装備されフィールドでの不具合にも対応するために購入したい。またバーナーにはジェット&ケーブルツールやジェットをクリーニングするニードル、オイルが付属。それらにペンチや真鍮ブラシをプラスして用意すれば、クリーニングできる。

  • 専用メンテナンスキット
  • 工具一式
  • バーナー付属の工具
  • パーツクリーナー

ガス・ガソリンバーナーの保管方法

バーナーは袋に収納し、カートリッジにはキャップを付ける。バーナーをそのままむき出しで保管すると、燃料が吹き出るニードルの穴や、炎が出るヘッド部分にホコリが溜まって付着してしまうことがあるので、収納時に入れて保管する。

バーナーが故障した際にメーカーに相談すべき補修

下記のような場合は、ショップやメーカーに相談する。原因がわからないまま自分で分解し、自己流で修理して使用すると、バーナーを壊してしまったり、使用時に危険なことにもなりかねない。

  • 自然点火装置が機能しない
  • ゴトクが曲がってしまった
  • 赤い炎が立ってしまう

プロフィール画像

てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。