冬山用登山靴の選び方!足のフィット感とアイゼンの相性が大切です

冬山用登山靴の選び方!足のフィット感とアイゼンの相性が大切です

低温下の冬山を、快適で安全な歩くために、登山靴がとても重要。相当な寒さと過酷な環境の山行で、あなたの足元を守ってくれる存在です。

ただ、冬山用登山靴は、さまざまなメーカーやモデルがあり、ゴアテックスなどの素材、重さ、コバの有無、ソールの形状や硬さなどチェックするポイントが多く、選び方が難しい登山道具の一つです。

そこで、今回、あなたの足にフィットする登山靴とは?「低山」「残雪」「厳冬」など、それぞれの山行の目的に合った登山靴は何か?など、冬山用登山靴の選び方について、詳しく解説します。

夏山の登山靴との違いをはじめ、ライトタイプやアルパインタイプなどの種類と特徴、各種の名称と役割、選び方、おすすめの商品などをまとめています。

夏と冬の登山靴の違い

夏山と雪山の登山靴の大きな違いは、「シャンクの入った硬いソール」「アッパーには保温材」「アイゼンをつけるためのコバ」の3点です。

そのうえで、ソールの硬さ、保温材の量に変化をつけ、さまざまな雪山に対応するべく、各メーカーがラインナップをそろえています。

雪山靴はなぜ硬いのか

夏山用とのいちばんの違いはソールの硬さです。

試し履きをすると、足元が固定されロボットのようなぎこちなさに不安を覚えますが、この硬さこそが雪山登山靴の命。その硬さ、重さでキックステップを効果的にし、ソールがねじれないのでアイゼンがぴったりとフィットし、機能します。

アッパーには防水透湿剤に加えて保温材を使用し、足元の冷気を遮断してくれます。フィット感を確認したうえで、血流を妨げずに暖かい空気の層を生みだすワンサイズ上を選択すると良い。靴下は夏用よりも厚手を選びましょう。

冬山登山靴の種類

低温下の山行で足元を守ってくれる雪山ブーツは、縦走、高所用に分類できます。山行と目的に応じて過不足のないモデルを選ぶことが、快適で安全な歩行に重要になります。

冬山登山靴は、降雪後の低山や残雪期に向く「ライトタイプ」、2000m程度の中級山岳や日本アルプスの縦走に適した「アルパインタイプ」、アイスクライミングなどの登攀系、高所を登るための「クライミングタイプ」などに分類できます。

他にも、かつては主流だった「プラスチックタイプ」、高所用は6000mを超えるヒマラヤなどの使用を目的としており、一般の登山者はあまり関係ない「ダブルタイプ」の登山靴があります。

登山靴を選ぶときは、用途を踏まえつつ、自分のアイゼンが装着できるか試して、あなたの足に合うを靴を選ぶと良い。

山行の目的に応じた5つのモデル

ライトタイプ

冬の低山から残雪期の中級山岳まで、1年中オールラウンドに使えるモデルがライトタイプと呼ばれるアルパインブーツ。アッパーやソールもソフトで全体の重量も軽くてフットワークよく使用できるが、保温性はあまり期待できません。

かかとのみコバがあり、セミワンタッチやハーネス式のクランポンならば装着も可能。アッパーは合皮とナイロン、またはスウェードを使用しているモデルが多く、さまざまなデザインのものがあります。

こんな人におすすめ

雪の少ない低山や残雪期のみの使用を考えている人。夏山での使用を視野に入れている人

アルパインタイプ

アッパーとソールが硬く、足首をしっかりとホールドする安定性に優れたアルパインモデルは、日本の冬期の縦走登山やバリエーション登山に最適です。プリマロフトやゴアテックスデュラサーモなどの高機能な保温材入り。靴の剛性が高く、つま先部とかかと部にコバがあり、リジッド式のワンタッチクランポンをしっかりと装着できます。

初心者向けの山から3000m峰までオールラウンドに適応しているため、初めて購入するのであれば、このシングルブーツがおすすめ。

こんな人におすすめ

雪山登山を始める一足目に。種類も豊富なので、必ず自分の足に合うものが見つかります。

ゲイター一体型ブーツ

ヒマラヤ登山や海外エクスペンションなど、厳冬期の高山で使用することが可能なオーバーゲイターと本体がいっしょになったモデルがゲイターブーツです。オーバーゲイターは靴の中への雪の侵入を防ぐとともに、保温にもすぐれ、なおかつ軽量なので、海外登山などでよく使われています。ゲイターに覆われているため、シューレースが凍ることもありません。

シングルブーツの中にさらに保温ブーツが入ったダブルもありますが、国内登山ならシングルで充分対応できます。

こんな人におすすめ

寒がりで保温力を求める人。ベタ雪でも、靴のコンディションを保ちたい人。

クライミングブーツ**

アイス・ミックス、アルパイン、バリエーションルートなど、ウィンタークライミング全般に幅広く対応するのがこのモデルです。軽量でソールが硬いので、アイスクライミングなどの、よりバーティカルな世界の使用に向いている。ゲイターがそもそもセットになっているものがあるが、深雪などの場合は、ロングスパッツなどを併用するといいだろう。また、コバがつま先とかかとにあるので、クランポンとの相性も良い。

こんな人におすすめ

アイス・ミックス、アルパイン、バリエーションなどウィンタークライミング全般を楽しみたい人

プラスチックブーツ

革靴全盛の時代にプラスチックブーツの登場は、まさに登山靴革命でした。メンテナンスいらずで、凍らないアウターと、テントシューズとして履けるインナーシューズの二重構造だが、革製に比べて軽く、防水性は非常に高いです。

しかし、保温材入りハイテク素材のアルパインブーツの登場により、プラスチックブーツの天下はそう長くなかった。アウターとなるプラスチックの寿命を超えると加水分解や突然破壊を起こすことも。

こんな人におすすめ

バックカントリースキーなど特殊な用途がなければ、アルパインタイプがおすすめ

ダブルブーツ

プラスチックブーツの構造に似たインナー付き二重シューズは、保温性に優れ、海外のエクスペディションなどにも使用される。アッパーがプラスチックと違い、レザーはナイロンを使用しているので足入れがスムースで、履き心地もよい。ただし、少々重いのが難点だといえます。

こんな人におすすめ

海外のエクスペディション、厳冬期の高山

おすすめの低山雪山
タイプ特徴用途想定山域
ライトタイプセミワンタッチクランポンに対応低山や残雪期向き雲取山、残雪期の谷川岳
アルパインタイプ
  • ワンタッチクランポン対応
  • もっとも一般的で種類が多い
日本の冬期の縦走登山やバリエーション登山北横岳、西穂高岳往復など幅広い山域に
プラスチックタイプ
  • 本体樹脂製でダブルブーツ仕様
  • かつての主流だが現在はわずか
アルパインタイプとほぼ同様-
ゲイター一体型タイプ
  • ゲイターで覆われた構造
  • 保温性が高いわりに軽量
ヒマラヤ登山や海外登山、厳冬期の高山向き赤岳〜横岳、槍ヶ岳など
クライミングタイプ本体は軽いがソールは硬いアイスクライミングなどを想定-
ダブルブーツタイプアウターとインナーの二重構造海外の標高の高い場所を想定-

冬山用登山靴の各部の名称

雪山を登るときに、登山靴はまさに足周りの要となる重要なアイテムです。見た目やデザインに惑わされず、各部の名称と役割を理解しつつ、納得がいくまで何度も試し履きをしてしっかりと選びたい。

各部の名称

プルタブ

登山靴のタンまたは、後部に付いている、指をかける部分のこと。ブーツの脱着の際に利用します。

タン

ブーツ内の浸水を防ぎ、足首から甲を柔らかく保護します。形状が舌に似ていることから、タン、または日本語ではベロとも呼ばれています。

シューレース

靴ひものことで、シュー・ストリングともいいます。防水性がある素材や、結びやすくほどけにくいひねりをかけるなどの工夫がある。

レースフック

シューレースを通す穴はアイレットと呼ばれ、ブーツの甲の部分、足首の関節部分にはレースフックというフック状の金具が配されています。

ランド

アッパーとソールの周りをぐるりと取り囲むように覆い、防水性と足元の安定性を高めています。硬く分厚い素材が使われている。

アッパー

雪や氷などの侵入や凍結を防ぎ、岩や氷にも耐える堅牢な本体部分。素材は、革や合皮のほかナイロンなどの化学繊維、プラスチックなどがあり、耐久性に優れている。

アンクルパッド

足首をすれや衝撃から保護し、緩衝材を入れることで、フィット感と安定感が増し、保温の効果もあります。

ブーツシャフト

足を入れるブーツの筒部分をブーツシャフト、またはブーツレッグと呼ぶ。重い荷物を背負ったときの足首の安定感につながる部分。

コバ

かかとやつま先にある溝のこと。ワンタッチアイゼンやセミワンタッチアイセンの器具を引っかけるためのパーツがコバです。前は前コバ、後ろは後ろコバと呼びます。

ミッドソール

地面からの衝撃を吸収する、クッション性の高いアウトソールとインソールの間のパーツのこと。ソールの硬さや粘り、クッション性などを決定づける重要なパーツ。

アウトソール

直接地面に触れる靴底のラバー部分。ソールパターンはモデルごとに異なるが、アルパインクライミングや雪山登山用のアウトソールは硬めのものが多い。ここがすり減ると、アイゼンとのマッチングが悪くなるので要注意。

冬山用登山靴の選び方

雪山登山靴は夏用に比べ、保温性を高めるための工夫がされています。また、アイゼンが装着できるような構造になっているのも特徴です。
氷化した部分を歩くことも多いため、アイゼンが装備できることは必須になります。このため、登山靴の後ろ、もしくは前後にコバが付いてる。また、アイゼンが外れないようソールが硬くなっています。

雪山登山では、厳冬期から残雪期まで使えるシングルブーツが主流となっています。ほかに、登山靴を覆うゲイターが付いたゲイター一体型、保温材の入っていない残雪期に使いやすいモデルなど、さまざまなタイプの靴が存在します。

ただ、選ぶときに最も大事なのは、自分の足にフィットすること。

また、アイゼンと登山靴のフィッティングには相性があるので、登山用品店でアイゼンと一緒に試着して選ぶようにしましょう。

足型がすべて

雪山ブーツ選びは無雪期用のブーツを選ぶよりも慎重に選びたい。

というのも、雪山用のブーツは無雪期用のブーツに比べ、より堅牢に、そして最新の素材でできているため、履いているうちに慣れて自分の足型に合ってきます、履いてならすというようなことはほとんどありません。無理をして履いていることで血行障害や凍傷などに見舞われることさえある。

自分の足型の特徴を理解し、いくつものサイズや各社のブーツを履いてみることで自分の足に合う一足を必ず見つけられるだろう。重要なのはサイズのほかに、ワイズ(足囲)です。幅が合っていないとブーツ内で足がぐらつき、安定しない。

軽さも気にして選ぶ

クランポンを装着していたり、ブーツが二重になっていたりなど、冬山の足元は、ただでさえ重くなりがち。ひと昔前の革製の二重靴などは、なかば拷問に近い重さだった。しかし、現在では合皮やナイロン、プラスティックなどの新素材によるアッパーが主流になっているので、以前と比べれば格段に軽くなった。保温性や堅牢性を求めれば求めるほど、よりハードな環境下で使用するブーツを選ぼうとすればするほど、重量はかさんでくるもの。現在はさまざまなタイプのブーツが出ているので、自分の山行レベルに合ったブールを選べば、重すぎるということはない。

対応のアイゼンを確認する

まずは、自分の足に合ったブーツを選び、そのブーツにはどんなタイプのアイゼンが合うのか確認しておきたい。

アイゼンを購入する際は、自分のブーツをショップに持っていって実際に装着してみると良い。とくにつま先のコバの有無やソールの形状、さらにアッパーの素材などは、クランポン装着の際に重要なポイントとなるので、しっかりと確認したい。アイゼンを固定する方法もさまざまなものがあるので、靴に合った装着方法を選ぶようにしよう。

サイズ選びは慎重に

同じサイズでも各社、各ブーツ、モデルによってサイズ感やフィット感は微妙に違います。また、厚手の靴下を履くのか、薄手の靴下を履くのかによてtもサイズ感は違ってきます。

サイズのほかに、前術のワイズ(足囲)もメーカーによって異なってくるので、サイズは合っていてもワイズが合っていなかったりすると、靴の中で足が左右にぶれたり、くつすぎると血行障害や凍傷など、重度の後遺症が残るような致命的な結果を招いてしまうこともあります。くれぐれもデザインやブランドだけで選ばないこと。実際のところは履いてみないとわからない。店頭で何度か試し履きして、自分の足に合ったブーツを慎重に選びたい。

アッパーの素材 オーソドックスはスウェード

雪山用のブーツのアッパーに求められる機能は、防水性と耐久性。オーソドックスなアッパーの素材としては、スウェードを使ったものが、丈夫で防水性にも優れています。また強靭で伸縮性のあるけプロテックなどの化学繊維は軽量だが、耐摩耗性にも優れ、ミックスクライミングなどに適しています。
また、柔軟性に優れ、軽量なコーデュラナイロンと合皮のコンビや完全防水仕様のプラスティックなど、アッパーはいずれも防水性と耐久性を兼ね備えながら、アッパーの直下には、防水透湿性のあるメンブレンがあり、さらにその下の保温材などへの水分の侵入を防いでくれます。

保温材をチェック

雪山では歩いていれば意外と冷えを感じないものだが、休憩したり、アルパインクライミングでビレイをしたりして、ひとたび歩みを止めると、つま先からジンジンと冷えてきます。

とくに保温力の低いブーツを履いて、靴下が湿っていたりすれば、深刻な血行障害を起こしてしまいます。雪山用ブーツにはさまざまな保温材が使われていますが、ゴアテックスデュラサーモ、シンサレート、プリマロフトといった素材は防寒性に優れている。

しかし、オーバースペックな保温素材を使用したブーツを低山などで使用すると、かえって内部のムレを招くこともあるので、使用する山の環境や条件に合う登山靴を選びが重要です。

足首の柔軟性は重要

雪山用ブーツは頑丈で無雪期間のトレッキングブーツに比べると全体的にしっかりと作られているため、どうしても柔軟性やフィット感が損なわれてしまいます。

そこで、それを補うために、アッパーの素材やアンクルパッドの形状を工夫したりして歩行性を高めている。とくに足首の柔軟性は重要で、足首の関節部分にくるレースフックの位置や、しっかりとかかとをオールドするヒールカーブなど、できるだけ足に負担がかからないような設計になっている。歩行だけでなく、ドライツーリングなど、ミックスクライミングを行なう際にも足首のホールド感と柔軟性は重要です。

アウトソールのパターンと湾曲具合

積雪期のブーツのアウトソールのパターンは、無雪期のブーツのアウトソールに比べるとじつにシンプル。というのも、雪面は地面ほど複雑ではないからで、クランポンの装着も前提としているためです。

また、アウトソールの湾曲は、ライトなモデルほどつま先の反り上がりが大きい。これは歩行性能を重視したもので、アイスクライミングなどでつま先への立ち込みやワンタッチ式のリジッドタイプへのクランポンの相性を重視しているものは、湾曲が少なく、フラットなものが多い。

おもに雪山をメインに使うブーツは、クランポンとの相性をまずは第一に考えたい。

ソールの形状 ターンインにも注意

ブランドやモデルによって、ソールの形状がターンインし、つま先が内側に向いているものがあります。自分の足型がそのような形状になっている場合は、ターンインした形状のブーツを選ぶと良い。
ただし、そのようなブーツにクランポンを合わせる場合は、ターンインしたブーツに合わえることのできる、センタープレートが付いたクランポンを選びたい。ターンインした細身のモデルのソールは、接地面積が少なく、ミックスクライミングに適しており、岩場の細かな突起を確実に足先で感じることもできるに違いない。

インソールにもこだわる

アルパインブーツにはあらかじめ、インソールが敷かれているが、クッション性や断熱性、保温性などの機能はあまりありません。歩行をラクにしたり、保温性を上げたりするためには、かかとを包み込む矯正力のあるフットペッドがおすすめ。
また、アルミを蒸着したものや起毛したものなど、保温性を上げるためのインソールもあります。履き心地の調整や歩行を楽にするためにも、インソールにこだわって、自分の足にフィットするように登山靴のカスタマイズしてみると良い。

おすすめの冬用登山靴

ライトタイプの冬用登山靴

ハンワグ Makra Combi GTX

ハンワグ Makra Combi GTX

重量1250g
サイズUK6〜13

公式・販売サイトで詳細を見る

アルパインタイプの冬用登山靴

スポルティバ ネパールキューブGTX

スポルティバ ネパールキューブGTX

重量950g(片足)
サイズ38〜48

公式・販売サイトで詳細を見る

ゲイター一体型タイプ

スカルバ ファントムテック

スカルバ ファントムテック

重量730g(片足)
サイズ38〜46

公式・販売サイトで詳細を見る

プロフィール画像

てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。