ハットやキャップなどの帽子は、登山には必要不可欠な装備です。その目的は安全です。暑さや寒さを防ぎ、落石などからも頭部を守ってくれる重要なウェアの一つになります。
頭部を無防備にさらけ出すことは、山中では絶対に避けなければいけません。とくに熱中症と落石や滑落による怪我は、致命的なトラブルに直結します。
そこで、今回、登山に適した帽子の選び方について解説していきます。帽子は他のウェアと違いレイヤリングが出来ないため、いくつかのタイプを揃え、用途や好みに合わせて使い分けると良いでしょう。
目次
登山で帽子をかぶる目的とは 防寒・防暑・怪我の防止
頭部は、行動のすべてのコントロールを司る脳が収まられていて、人体のなかでもっとも重要で、デリケートな部分です。
外部への露出面積が広いため気温の寒暖の影響をうけやすく、筋肉や脂肪で守られている場所でもないので大きな怪我もしやすいです。
そこで、「防寒」「防暑」「怪我の防止」に備え、山では各種の防止が絶対に必要になってきます。帽子は、それらの重要な機能を持っています。
寒い時期には体温をキープするのに役立ち、暑い時期は直射日光を遮って熱中症の予防になります。春や秋の気候が安定した時期には着用しない人も多いですが、整地された街の路面とは違い、不安定な登山道では転倒の可能性も高いです。
とくに滑落や落石がありえる岩場などの難所では、確実に帽子をかぶらなくてはならない。ヘルメットには及ばないながら、わずかに布の生地が一枚あるだけで、怪我の深刻度は大きく違ってきます。
登山で帽子を使用することで、頭部の温度を適度なレベルに保ちながら、簡易的なヘルメットの役割も果たしてくれます。
帽子の種類 用途や好みに合わせて選ぶ
帽子は、ツバの有無の形状によって大きく3つのタイプに分けられます。ツバの面積が大きいハット、前方にだけついたキャップ、そしてツバがないビーニーです。
だが、いくつかの問題は頭にいれておいた上で選びたい。
帽子は、ほかのウェアと違い、重ね着などの方法もないシンプルな装備です。レイヤードで寒暖に対応する工夫はほとんどできず、購入後はただそれ1つを頭部にかぶることになります。
帽子は複数のものを組み合わせて使うことは想定しておらず、1つのもので1年を通して使うのは無理があります。季節や気温、シチュエーションに合わせ、タイプを変えたいくつかの帽子を用意しておきましょう。
自分の用途や好みに合わせ、もっとも快適に使える正しいものを入手することが大切です。
ハット
頭部全体をツバがグルリと囲んでいるのが、ハットタイプです。日差しを効率よく遮って、まぶしさを緩和させ、同時に日焼けの防止にもなります。
また、降雨時には首元から水が内部に侵入することを防いでくれます。そのため、雨が多く暑い夏場にはとくに有用で、速乾性の生地や浸透防水性素材が使われているモデルが多い。
キャップ
一般的に前方のみにツバがついたものをキャップと言います。額付近の日差しや雨を避けるのに有効です。首周りがすっきりするキャップは、ウェアのフードをかぶってもツバが邪魔になりません。
速乾性素材の夏向きのものから、保温性が高い冬向けのウール素材まで、機能が異なる多様なものが作られています。
ビーニー
ツバがまったくなく、伸縮性が高い素材で頭部をぴったりと覆うヘッドウェアが、ビーニーと言われるタイプです。主な用途は防寒であり、ウールや化学繊維の糸を用いたニットやフリースなど、保温力の高い素材が使われています。
また、薄手のビーニーはヘルメットと相性がよく、内側に併用して着用してもヘルメットのフィット感を損ないません。
帽子を選ぶ前に考えておきたい3つの性能
帽子は山中での安全性を向上させるウェアの1つです。落石や滑落を備え、頭部を怪我から守るためには、帽子の形に関係なく、まずは何かをかぶっておくことが大切です。
次に、季節に応じて「防寒性」「防暑性」のどちらかの機能を持つモデルを選んでいきます。雨が多い時期には「防水性」も考慮に入れおくと良い。
防暑性|高温・日差しが強い時期(熱中症・日焼け防止)
直射日光や高温に対応し、熱中症や日焼けを予防するための帽子に必要な機能は、日差しの遮断性、汗をすみやかに発散させる速乾性、蒸れを逃す通気性などです。
なかでも速乾性は重要です。汗が蒸発するときの蒸発熱の作用で、頭部をクールダウンさせてくれます。大きなツバで光を遮り、さらにベンチレーターなどがつけられたモデルが有用です。
防水性|雨の多い時期
帽子に染み込んだ雨水は頭髪を濡らし、いずれ流れ出してウェアにも浸透していきます。そこで防水性の帽子を使用すれば不快感は減り、小雨程度のときはレインウェアのフードをかぶらないで済ませられます。
ただし、汗による蒸れは発散されないので、防水性だけではなく透湿性も併せ持つゴアテックスのような素材を選んでおくと良いです。
防寒性|晩秋から春にかけての寒冷な時期
通気性を重視する夏向けの帽子に対し、寒冷な時期にかぶる帽子は、暖気のキープが最重要な目的です。素材にはウールなどで編んだニットや起毛させた化学繊維などが使われ、しっかり頭部にフィットする形状になっています。裏面にフリースを張った2重構造のものや風を遮断するウインドストップ性の生地を採用したものは、より効果的です。
登山に帽子を選ぶポイント
帽子を選ぶときの大きな要素としては、形状と素材です。これら2つの要素の組み合わせを中心に、状況に合ったモデルを選んでいく良いです。
帽子の形の違い
帽子の形の違いによって、それぞれ長所や短所があります。どれが優れているとか、万能な帽子という訳ではありません。自分の用途や好みによって選ぶことが大切です。
ただ、個人的は、晩秋から春にかけて寒冷な時期はニットのビーニー、それ以外の季節はレインウェアやヘルメットでも万能なキャップが便利で、よく使用しています。
あと、機能のほかに見た目も重要で、気分によって帽子を変えることもあります。帽子はおしゃれも楽しむことができるウェアの一つです。
タイプ | メリット | デメリット | ウェア・ギアの相性 |
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キャップ |
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ハット |
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ビーニー |
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帽子に使われている素材
帽子に使われている素材は、機能に直結するので慎重に選びたい。
蒸し暑くて汗をかきやすく、雨も多い初夏から初秋にかけては、速乾性の化学繊維が適しています。蒸発熱の作用で、帽子内の温度が上がりにくいメリットもあります。好みによるが、黒などの濃い色のものは日光からの熱を溜め込みやすいので、できれば淡色のものが良い。
防寒性が高い天然ウールや化学繊維のアクリルのニットは、晩秋から春にかけての寒時間向けです。起毛させたフリースも同様です。
ポリエステル
速乾性にもっとも優れるものはポリエステルなどの化学繊維。さらにメッシュであれば通気性も高まり、ますます頭部の蒸れを軽減できます。
ウール
天然素材のウールは、防寒用の帽子の定番です。多少湿っていても暖かさを保ち、天然の防臭性も持っているので、快適に長期間かぶることができます。
フリース
暖かさのわりに軽量で、気楽に使えるのが、起毛素材のフリース。速乾性も高い化学繊維が原料であり、比較的安価であるのも魅力です。
頭部のフィット感
帽子のサイズは充分なフィット感を持つものを選んでおきたいです。小さいものは窮屈で、ときに頭痛の原因にもなったりします。反対に大きすぎると風で吹き飛ばされやすく、深すぎるものもずり下がってきて視界を遮ってしまいます。
適度なサイズを選べば、夏は汗をどんどん吸い上げて速乾を促し、冬は暖気を内部に溜めて保温力を増します。
ただし、ビーニーであれば、深さのあるモデルは耳や首元の保温に役立ちます。反面、ウェアのフードの下にかぶるには浅いほうが良かったりします。
プラスαの機能
メインとなる生地が持つ特性に加え、プラスαの機能を備えた機能的素材を使った帽子があります。
ゴアテックスを代表とする透湿防水性素材や、防風性に富むゴアウインドストッパー。他にもUVカット機能や消臭作用を持つ素材もポピュラーになりつつあります。
ゴアテックス
透湿防水性素材のゴアテックスを使用していれば、水分を遮断。もちろん蒸れも少ないです。
ウィンドストッパー
風を遮って暖気を逃さないゴアウインドストッパー。薄手でも防寒性に優れています。ゴア社の素材だが、防水性とは無関係なので要注意です。
山中で帽子を快適に使うための重要な機能
さらに帽子の性能を効果的に発揮するために、いくつかの工夫を追加したモデルがあります。冷えやすい耳を覆うイヤーパッド、歩行中に日焼けしがちな首の裏側を隠すスカートを取り付けたもの、蒸れの防止には通気を促すベンチレーター付きもあります。
また、山では強風がつきもので、帽子はたびたび吹き飛ばされそうになります。地味だが、顎にかけたり、フィット感を高めたりするストラップも重要な機能になります。
フィット感を上げるストラップ
いくら帽子を用意していても、激しい動きや風によって外れては意味がないです。ハットやキャップは、ストラップが付属したモデルも選ぶと良い。
それか、帽子のツバなどと上半身のウェアをつなぎ、紛失を防ぐ防風用ホルダーを利用すれば、安心です。
紫外線を遮るUVカット素材
紫外線は高山ほど強いです。行動中に汗をかく山ではせっかく塗った日焼け止めが流れ落ちやすく、ツバのある帽子を積極的に利用したい。UVカット効果を持つ特殊な生地を使ったものに加え、無防備になりがちな首の裏を覆うスカートがついたタイプは、高い効果が期待できます。
とくに夏の長時間行動には役立ちます。
蒸れを逃すベンチレーター
蒸し暑さを縫って帽子をかぶらない人もいるが、無帽で直射日光を頭部に受けるほうが熱中症の恐れは圧倒的に高まります。多少蒸れたとしても必ず帽子をかぶるべき。
しかし、それでも蒸れを嫌うならば、ベンチレーター付きを選ぶ手です。
変形も可能なツバ
帽子のツバは日差しや雨を遡る効果を持つが、深くかぶると視界を狭くするのが難点です。
しかし、光の角度や風雨の向きにあわせてツバの角度や形を変えられるものは、視界が遮られる範囲を最低限にとどめつつ、強い日差しや雨などのさまざまな状況に対応できます。ツバにワイヤーが入ったタイプが、このところ非常に増えてきている。
あと、ツバが折れてコンパクトになるタイプもあります。休憩中やテント場などの不必要な持ち運びの際は、ポケットにも収納できて便利です。
ヘルメットの相性
ヘルメットは構造上、防寒性は期待できません。寒冷期の登山時にはそのまま着用していると体温が発散し、体調悪化の一因になってしまいます。
そこで、内側に薄手のビーニーを組み合わせることが多いが、ヘルメットとの相性がいい小ぶりのものが使いやすい。
おまけ:登山に適したおすすめの帽子
ここまで登山に適した帽子の選び方について解説してきましたが、おすすめの帽子は他の記事で詳しくまとめてあります。もし自分の用途や好みに合う帽子をお探しの方は、以下記事も合わせて確認してみください。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。