山の中で入るということは、自然を壊さないように気をつけて過ごさないといけません。
そのため登山ではいくつかのルールやマナーが決められています。毎日生活で行っている歯磨きもその中の一つです。
日常使用している歯磨き粉は環境に配慮すると山では使用できません。しかし、歯磨き粉を使わないでブラッシングのみでは、口の中がすっきりせずとても気持ち悪い。できれば口の中もさっぱりした状態で、自然のなかを歩きたいものです。
そこで、今回、登山で歯磨きを行う方法を解説します。登山の歯磨きのルール、山で口の中をさっぱりに保つ方法、登山に適したジェル歯磨き(オーラルピース)、登山に携行しやすい歯磨きセットなどをまとめてみました。
登山の歯磨きのルール 山の中で歯磨きどうしているか
何日もかけて山を歩く泊まりがけの登山では、日常とは違う限られた条件のなかで長い時間生活をします。当然、自然のなかではいくらかの制限は避けられません。山には守らなくてはいけないルールやマナーがあります。
その一つに、歯磨きに関するものがあります。普段は毎日欠かせない習慣である歯みがきも、山では歯みがき粉の使用や、歯みがき自体が禁止されているところが多くあります。
生活の基本といえる歯磨きが、山ではなぜできないのか。主に2つ理由があるかと思います。
水の節約
1つ目の理由は、水を無駄にしないためです。多くの山小屋で使う水は、雨水を貯めます。雪解け水をポンプで汲みあげたり、ヘリコプターで空輸するなど、確保に手間も費用もかかるため、とても貴重なものです。
テント泊で自分で運び上げた限られた水でも同様です。食事や飲料をまかなわなくてはならない場合も多く、歯みがきに使う水は、まっ先に節約の対象になります。
環境への影響
2つ目の理由は、排水処理の問題です。山では本格的な浄水設備がないところがほとんどで、私たちが使った水はそのまま山に流れてしまいます。
歯みがき粉の成分の多くは化学物質で、自然界では分解されません。そのまま多量に流せば生態系に影響が出るのはもちろん、下流域にも影響を及ぼすことになります。
有機物でさえも分解に時間がかかる高所では、ひとりひとりのほんの少しの汚水が積み重なることで、自然に大きく影響を与えてしまいます。
山には何一つ残さないというのが、最も基本的で大切なルールです。
山でも口の中をさっぱりに保つ方法
しかし、登山やハイキングの中で我慢して歯磨きをしないことは、あまりおすすめしません。虫歯や歯周病の原因となります。
なるべくなら自然の中でも、歯磨きを我慢しないでスッキリ、サッパリした状態で過ごしたい。そこで、登山やハイキング中に、口の中をさっぱり保つ方法を紹介していきます。
ブラッシング後に紙に吐き出して持ち帰る
一番単純な方法は、歯磨き粉をつけていない歯ブラシでただブラッシングすることです。
ブラッシングした後、少量の水もしくはお茶などで口をゆすぎ紙に吐き出します。吐き出したゴミは持ち帰るといった方法です。
口の中の汚れを拭き取る
2つ目の方法は、指などにウェットティッシュやガーゼを巻き、汚れを拭き取ります。体の起こせない人や、水を口に含むことができない高齢者などに、看護や介護で行われる口腔ケアの方法です。
この方法で良い点は、うがいをする必要がないので水がない場所でも、口の中をさっぱりさせることができます。ティッシュやガーゼがあれば出来るので、荷物も少なく済みます。
アウトドア用のジェル歯磨きを使う
登山にも持っていける歯磨き粉は無いかと探していたところ、見つけたのがジェル状の歯磨き剤「オーラルピース」です。元々、介護を必要とする人や高齢者、妊産婦、乳幼児など、自分でうがいや吐き出しができない人のために開発された製品みたいです。
ジェルは天然由来の可食できる成分でできているので、飲み込んでもアミノ酸として体内で分解、消化されます。なので、もし自然界に吐き出しても速やかに生分解され環境に優しいことがポイント。
登山やハイキングなど水がない環境や歯磨きが禁止されている山小屋でも歯磨きができるので、口のなかをさっぱりときれいな状態を保つことが出来ます。普段から歯の予防を心がけたい人でも安心して使用できます。
登山でアウトドア用歯磨き・オーラルピースを活用
ジェル状のオーラルピースを歯ブラシに付けて使用することで、一番馴染みのある歯磨きを山の中で行うことができます。また、ジェル状なので他の使い方もできるのが特徴です。
清潔な指に適量を取り口腔内に塗って使ったり、保湿ジェルのような使い方もできます。歯の中がちょっと気持ち悪いなあと思った時に、サコッシュからさっと出して塗布できます。
生態系に優しいアウトドア用歯磨きジェル・オーラルピース
先程も同じ内容を書きましたが、オーラルピースは、もともと介護が必要な高齢者や乳幼児、うがいや吐き出しができない人やペットなどの誤飲を考え開発された口腔ケアアイテムです。
天然由来の可食できる成分で作られた化学合成成分フリーの歯みがきジェルになります。歯みがき後に吐き出しても生分解され生態系にも優しく、水なしでも使えるのは、アウトドアととても相性が良いです。
「アウトドアアドベンチャー トゥースペースト」というアウトドアに特化した製品も販売されています。登山家やアスリートの意見を取り入れながら開発され、様々なアウトドアフィールドでも使える製品みたいです。
水のない場所や冬山などあらゆるフィールドで使える
「アウトドアアドベンチャー トゥースペースト」は水のないフィールドでもお口すっきり清潔に保つことができます。これひとつで不快感が消えて口の中の爽快感をキープできるほか、高地や乾燥地などで口内保湿としても役立つ優れものです。
環境にやさしくあらゆるアウトドアシーンで使えて、マイナス20°C以下でも凍らない冬山にも対応しています。ギアの軽量化を実現するために濃縮タイプ・ライトパッケージ仕様になっているのも嬉しいポイントです。
スプレータイプなら、いつでも口の中を洗浄できる
ジェルではなくスプレータイプのオーラルピースもあります。スプレーはジェルとは異なり指に付けたり、歯ブラシにつけたりする必要がないので、登山中にはとても重宝する。
例えば、時間がなくて歯磨きやうがいができない時、人目が気になるような場所など、口内に直接プッシュしてさくっと使用することができます。保湿と殺菌をしてくれ、更には口の中の爽快感が高まるので、不快な気持ちから脱却できます。
水を口の中に含めて使えば、マウスウォッシュのようにして口の中を洗浄することもできます。
無印良品の歯ブラシで、さらにミニマルな歯磨きセットに
ここまで環境にやさしくアウトドアシーンで使える歯磨きについて紹介してきましたが、歯磨き粉の話がほとんどだったかと思います。
ただ歯磨きを行うには歯ブラシも必要になります。当然、歯磨き粉といっしょに歯ブラシも持っていき、登山やハイキング中に歯磨きを行っています。
歯ブラシはドラッグストアやコンビニで売っている製品は使用していません。普段はヘッドも持ち手も真っ直ぐなシンプルな形の歯ブラシが使いやすいですが、登山ではコンパクトに収納できる2つに折りたためる携帯歯ブラシを使っています。
トラベル用の歯ブラシなども試したことがありますが、現在は無印良品の折りたたみ歯ブラシを使用しています。見た目もすっきり、小さめのポーチにしまいやすいコンパクトな形状。入手がしやすく、価格もそこそこなので気に入って使っています。
使用している時は伸ばして使います。柄がポキっと折れないように少し慎重に扱う必要はありますが、今まで折れた経験はないので、強度もそこそこあるので問題ありません。
歯ブラシセットがかさばるなって困っている人は、これらのセットはおすすめです。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。