テント場においてのテント設営は、テント泊を楽しめるかどうかの重要なポイントになります。たとえ同じテント場でも、設営場所によって快適性や利便性に大きな差が出てしまいます。
自分たちにとって、どこが快適か、どこが便利かを考えて、設営場所を選びましょう。
ここでは、登山のテント生活を快適にするために、テントを設営する際に気をつけたいことを紹介。テント場到着後にまずしておくこと、避けるべき設営場所、テント場のルールやマナーなど、快適に過ごすコツをまとめてあります。
テント場到着後、まず設営前にしておくこと
まず、テント場に到着したら、ゆっくりと休む前に所用はすべて済ませておきましょう。
はじめに行うべきは、山小屋での受付です。このときに水場やトイレの場所も確認しておきましょう。山小屋は周囲の登山道の詳しい情報も持っているから、翌日のルートの注意事項や危険箇所のこともいっしょに聞いておくとよい。
テントを設営する場所は、一部のテント場を除き、基本的には早いもの勝ち。好みの場所にテントを張るには、できるだけ早く到着したほうがよい。人気山域ではテントを張る場所すらなくなってしまい、計画を大きく変えねばならないことにもなりかねないので、そういった状況は避けたい。
多くのテント場は山小屋が充分に管理しているため、落石などの危険な要素はほとんど排除されています。だが、森林限界を超えた高山では強風にさらされるテント場が多いです。可能なかぎり風雨に強いポイントを見つけ出し、適切な方法でテントを設営しよう。また、どんなに混雑していても、立ち入り制限されている場所はやめておく。
あと、天気が急変する山では、天候の悪化に備え、水は早めに汲みに行っておく。トイレも我慢せず、明るいうちに行っておくのが賢明です。
なお、テント場の多くはトイレ代がかかり、水が乏しい場所では購入しなければならない。小銭を充分に用意しておくとスムーズです。
山小屋での受付
テント場を管理している山小屋があれば、設営前に立ち寄って受け付けを済ませる。山中のテント場では、料金は1泊当たり500円程度が多い。テント場によってはテントを張る場所を指定されるので、指示に従いましょう。
水場での水汲み
水はテント設営直後に汲んでおいたほうがよい。日本の山では午後から夕方にかけて雨が降ることが多く、夕方までのんぼりしていると水を汲みに行く前に大雨になることも。水場がないテント場では、小屋で購入しておく。
トイレの場所の確認
暗くなる前にトイレの場所は確認しておく。トイレは離れた場所に設置されていることもあり、日が暮れてからだと見つけにくくなるからだ。いっしょに代金もチェックし、用を足すときに忘れずに持っていくようにしたい。
テント設営場所の選び方!快適に過ごすために避けるべき設営場所とは
すべてのテント場が快適とは限りません。部分的に設営に適さない場所があったり、落石や強風で危険な場所に設けられたテント場も存在します。 以下のような場所はできるだけ避け、居心地のよい場所を見つけましょう。
立ち入り禁止地帯
予定していたテント場の近くには植生保護や危険性が高いために立ち入りを禁じている場所があるかもしれない。そんな場所にはロープが張られている。混雑していてもこれを越えた場所にテントを設営してはいけない。
崖の近く
崖に近い場所では落石が生じ、転がった岩にテントが押しつぶされたり、落ちてきた岩で破壊される可能性も、頭部に当たれば大けがは避けられない。地震の発生まで想定し、できるだけ安全なポイントを見つけたい。
雨がたまる窪地
晴れているときには広くて快適そうに見えても、ひとたび雨が降ると水たまりになる設営地も。また雨水が川のように流れる場所もあり、降雨時の水の流れを予想しつつ、雨が降っても水はけのよい場所を探す。
凸凹が激しい場所
高山ではテント場の地面が岩や石で覆い尽くされていることも珍しくない。凹凸が大きいと寝心地が悪く、鋭利な岩が下にあるとテントに穴があく恐れも出てくる。せめて体を横たえる分だけは平坦な場所に設営をしたい。
風が強い場所
悪天候時にも安心なのは木立の中だが、茂みの間の広い空間は、かえって風の通り道になっている可能性もある。テント場の風の流れを予想しよう。木立に密着するようにテントを張れる場所は、比較的安全度が高い。
おまけ:テント場でのルール・マナーを知っておこう
テント場も街での生活と同様に、ルールやマナーを守り、テント場にいる他の人に迷惑をかけない行動を心がけましょう。
日本の山は広大だが、テントを設営できる場所は限られています。そして、ほとんどの場所はそれほど広くありません。だから街での生活と同じように、山で生活するうえでのルールとマナーが存在します。それは、1泊でも2泊でも変わりません。
キャンプ指定地が定められていれば、それ以外の場所にはテントを張らないように。積雪期の山や沢登りの際など、グレーゾーンといえる状況もないわけではないが、登山者が多い時期は動植物が成長する時期とも重なり、植生保護のためにもキャンプ指定地以外は自制しましょう。なお、山域によってはキャンプ指定地が定められていない場所もあるが、その際も環境に負荷をかけない行動を心掛ける。
テント場ではたとえ早く到着して好きな場所が選べる状況でも、後から来る人のことを考え、無用なスペースを使わないようにしたいです。混雑する時期には後からテントを移動し、場所を空けなければならない事態にもなりかねないからです。
あと、山はとくにテント場では就寝時間も起床時間も早く、日暮れとともに寝て、夜明けとともに起きるのが普通です。計画に余裕があれば自分なりの時間帯に行動してもよいが、ほかの人の迷惑にならないように。
混雑期のテント場
夏の人気山域のテント場は、とにかく混み合う。混雑が予想される場所やタイミングで山に入るならば、テントはできるだけ小型のものを。大きなテントは快適だが、無用なスペースを占め、ほかの人がテントを張れなくなる。
夜は早めに就寝
山の夜は早い。翌日は夜明け前から行動する計画は立てている登山者も多く、日暮れとともに眠りにつく人も珍しくない。夕方以降は話し声を控えめにし、大きな音を立てないように注意。そして翌日に備えて眠りにつこう。
お湯は捨てない
パスタの茹で汁を熱いまま周囲に流す人は多い。だが、これは土壌を汚すだけではなく、地中の微生物を死滅させる原因になる。周囲の状況を判断し、残り汁は冷やしてから処理するか、スープなどにして飲み干してしまう。
ゴミは自分で持ち帰る
山小屋に設置されたゴミ箱は小屋に宿泊した人だけが利用でき、テント泊者は使えない。ただし小屋で購入して飲料の缶やペットボトルは回収してもらえる。だがゴミ処理の基本は、すべてのゴミを自分で持ち帰ることだ。
朝の準備も静かに
早朝から行動する場合、テントの撤収は夜明け前になる。すでに起きている者には気づきにくいが、撤収時の物音や話し声はまだ寝ている人には非常に耳障りだ。足音すら響かせないように、静かに出発準備を行なおう。
テントの設営ポイント
いくら広くて平らな場所でも、テント場の通路になっている場所は避ける。夜になると張り網やペグでつまづく人も現われ、安眠を妨げられて、自分自身も不快な思いをする。ほかの人の行動の邪魔にならない場所を選びたい。
キャンプ指定地
自然環境を守るために、国立公園内の山などには管理された「キャンプ指定地」が設けられている。逆にいえば、この場所以外は基本的にテント設営を禁じており、指定地に登山者を集中させることで、それ以外の場所の自然に負荷をかけないように配慮しているわけだ。緊急時のビバーク以外は、このキャンプ指定地を利用するのがテント泊山行の大前提となっている。
また、テント泊登山の基本知識やルール・マナーに関しては、以下の記事にもまとめてあります。より詳しく知りたい方は、合わせてチェックしてみてください。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。