単独行・ソロ登山は、自由で山そのものと向き合え、すばらしい風景や雰囲気のなか自由に歩き、登頂の達成感が味わえること。
しかし、単独行・ソロは自由気ままにできるが、一歩誤れば、遭難につながるリスクもあります。パーティ登山と比べて、危険管理も含め、すべて一人でこなさなくてはなりません。
そこで、今回、単独行・ソロ登山の魅力とリスクについて紹介。単独行の魅力をはじめ、単独行・パーティ登山のちがい、単独行遭難や重大化させる理由、不安やリスクを減らす方法など、単独行を楽しむために登山者が知っておきたい基本をまとめました。
ぜひお役立てください。
単独行・ソロとは? 一人で山に登る魅力
単独行・ソロ登山の魅力は、山のすばらしい風景や雰囲気のなかを自由に歩き、心のままに旅してゆけることです。
そこには、普段の社会生活や家庭生活の束縛から解放されて、本当にやりたいことを楽しんでいる姿があります。また、多くの単独行者が感じているのは、単独のほうが出会った人と素直に交流できること。パーティは仲間でまとまってしまいがちですが、単独だとほかの人と話しやすいというメリットがあります。 しかし、単独行のこのユルさ、気ままにできるやり方は、一歩誤れば遭難につながるリスクもあります。
初心者、ベテラン問わず、リスクへの意識が低い人は、事前にきちんと登山計画を立てなかったり、一応計画を立てても登山中の気分で簡単に変更する、または計画は形ばかりで、実際は山にいるときの気分でルートを決めている、そんな単独行も多いのではないでしょうか。
人間は必ずミスをします。
パーティ登山であれば、メンバーのミスをほかのメンバーが指摘し、協力して対処できます。登山中にはそのような場面がたくさん起こりますが、ミスを犯しながらもそれがアクシデントにならないよう、すぐに対応し、リカバリーをして事なきを得ています。
単独行の場合、ミスに気づくのも自分、全力を挙げて対応するのも自分だけになります。ひとたび危険の入り口に立ってしまったとき、一人ということは数段厳しく、ときには危険を伴います。
単独行・ソロとパーティ登山のちがい
単独行は、計画から実際の登山、緊急時の対応まで、全部を一人で考え、判断し行動します。 それに対して、パーティ登山は、参加者で話し合って計画を立て、登山中はリーダーが中心になって判断し行動します。イレギュラーな場面ではメンバー間で話し合い、ルート変更や登山中止を決めることもあります。
パーティ形式は登山中の安全を確保するために考えられてきた方法で、危険な場面では協力して切り抜けられますが、単独行は一人で全部対処しなくてはなりません。この点が最も大きな違いです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
単独行・ソロ | ・自分のペースで歩ける ・自由に行動、休憩できる ・登山計画が簡単にできる ・計画や行動が慎重になる ・危険察知能力や判断力が身につく | ・遭難したときに発見されにくい ・アクシデントのときに対処が困難 ・道迷いの際、気づくのが遅れる ・装備や費用を分担できず負担が大きい ・マイペースのため工程が遅れがちになる |
パーティ | ・遭難したとき通報がしやすい ・アクシデントに協力して対応できる ・共同装備や費用を分担できる ・判断が必要なときに話し合いができる ・ペースや工程を管理しやすい | ・全体のペースに合わせる必要がある ・集団のため、自由な行動が制限される ・スケジュール調整に手間がかかる ・全員分の装備・食料の準備が大変 ・パーティ内の上級者に頼りがちになる |
単独行・ソロの遭難と事態を悪化させてしまう理由
パーティ登山よりも単独行のほうが危険ということは、遭難データに明確に現れています。パーティ登山に比べて単独行は遭難数全体からは少ないが、死亡・行方不明の事例が多い。全国の遭難死亡者のうち約58%が単独登山者というデータで、とても恐ろしいです。
単独行は、一人だけの注意力では登山中にミスを早期に発見・修正しにくい。また、遭難発生も当事者一人だけなので、効果的なレスキューができにくく、状況を悪化させてしまいます。
登山は山を歩く楽しみだけでなく、危険に立ち向かい遭難を回避することも含まれます。そのため、パーティ登山という安全な方法を先人は採用してきました。単独行は自由で快適だが、遭難に対しては弱い登山方法と言えます。
単独行(ソロ)が遭難した際、事態を悪化させてしまう理由
パーティ登山は、行動中複数のメンバーが、常に注意を払い、お互いにミスをチェックできますが、単独行はこのような相互チェック機能がなく、一人だけの自己判断になります。 特に遭難初期は異常事態にあることを認めず「遭難ではない」と考える心理傾向があるため、危機の認知が遅れてしまう。遭難後は、負傷するが精神的に追い詰められた状態で通報から応急処置、生還への努力まで行わなくてはならない。
単独行はあらゆる面で危機対応が遅れがちになるため、事態を悪化させてしまう。
リカバリーが困難
疲労・体調不良などで歩けなくなても、他者のサポートを受けられず、自分で回復するのを待つしかありません。道迷い状態のときには、単独だと気づくのに遅れて状況を悪化させてしまいます
セルフレスキューが難しい
パーティの場合は、事故者以外の全メンバーが協力してしてレスキュー行動をする。単独の場合は事故者本人しかいないという異常な状況のため、セルフレスキューは非常に困難になります。
救助要請できないことも
事故現場が携帯の通信圏外で通報ができず、事故者が負傷して動けない状態のとき、救助要請は不可能でそのまま救助を待つしかない。単独行でこういう遭難事故は多く起こっている。
単独行・ソロの不安やリスクを軽減する方法
単独行の不安やリスクを軽減するために、「グレードの把握」「登山技術の向上」「遭難への備え」の3つのことに注意するとよいでしょう。長い登山経験でも多くの人は単独行に不安を感じていますが、山・ルートをグレートを把握し、登山技術を向上させ、きちんと遭難に備えて準備をすることで、リスクを軽減しています。
山・ルートの”グレード”に把握する
第1に、グレード感覚を身につけるよう努力しましょう。グレードは現在7県で公開されているが、7県以外のルートでも、同じ基準を適用してグレードを判断することができます。 目標とする山・ルートのグレードを正確に把握して、自分のグレードより1〜2階級下のルートに挑戦するようにしましょう。余裕をもって楽しめるように調整すれば、単独行のリスクも軽減されます。 正しいグレード感覚をもつことは、安全登山を実行するために不可欠です。
登山技術の向上させる
第2に、登山技術を向上させるよう努力しましょう。すぐに学べる項目としては、気象知識、地形図の使用方法、救急法。基本的な歩行技術や山での行動技術は、装備の使い方とともに、実際に山を歩くなかで身につけていきましょう。
ただ、山岳会などで学べる総合的な登山技術に比べると、単独行を通じて経験する登山技術は一面的なものになりがちです。いろいろな機会を利用して、できるだけ幅広い人の意見を聞きながら、技術向上をめざしていくとよい。
クライミング、沢登り、雪山へと発展させてくれる技術は、独学ではなく、専門家の指導を受けて確実に学べば、転・滑落、転倒、落石などのリスクが大幅に軽減されます。
遭難に備える
第3に、自分でできる遭難対策を完全に行ないましょう。登山前の対策として、事前に登山計画を立てて登山のアウトラインを決めておく。遭難対策として家族などの「緊急連絡先」を設定し、何日何時を過ぎても下山連絡がなかったら通報してもらう、と決めておくなど。きちんと計画を立てて、計画書提出(登山届)を完了させておく。
また、ツエルト、携帯電話、救急用具などを用意し、使い方も調べて身につけておきましょう。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。