登山における救助要請の方法!要請する基準・注意点や役立つ道具・サービス

登山における救助要請の方法!要請する基準・注意点や役立つ道具・サービス

単独でも、複数名でも、登山ではどんなに注意してても遭難事故のリスクはつきもの。
山の難易度にかかわらず、遭難への備えをきっちり行うことが重要です。

そして、緊急時、自分では対処しきれないと思ったらすぐに救助要請をしましょう。ちょっとした道迷いや、歩ける状態なのに安易に救助要請するのは問題だが、自力下山ができない場合は、早めに通報しましょう。

そこで、今回、登山における救助要請について解説していきます。入山前にしておく遭難対策、救助要請する基準、現地での救助要請と要請後の対処、救助要請する際のポイント、緊急時に役立つアイテム、遭難・救助に役立つシステム・サービスなどをまとめてあります。

登山の救助要請する前に知っておくこと! 入山前に遭難対策はしておく

遭難対策は入山前から準備しておく

複数名の登山でも単独登山でも、遭難事故のリスクは変わらない。しかし、単独登山の場合、遭難時に同行者と役割分担をするなど、他社の力を借りて解決するのは難しいです。山の難易度にかかわらず、遭難への備えをきっちり行うことが重要になります。
まずは計画書を作成すること、エマージェンシーグッズを持参すること。単属登山の多い人は家族や友人などの緊急連絡先へ登山前や下山後に連絡する習慣をつけましょう。 そうすれば、下山連絡がないときにすぐ気づいてもらえます。

スマートフォンや携帯電話の機能や操作を把握しておく

優れた機能がついていても、緊急時に使えなければ意味がない。GPS機能をオンにする、位置情報を表示するなど、最低限の操作方法を把握しておきましょう。

スマートフォンや携帯電話の電源は切らない

バッテリーの消耗を防ぐため、電源を切ったり機内モードにする人も多いが、救助要請に関していえば、常に緊急連絡ができる状態にしておくのがベスト。その分、予備のバッテリーは必須です。

途中経過をメールやメッセージアプリで伝える

「これから登山口を出発」「山頂到着」「無事下山」などの途中経過を、メールやLINEなどのメッセージアプリで家族や友人に送る習慣をつけよう

救助要請をする判断基準とは?自力下山の可否

救助要請は、ケガや病気、道迷いなどにより「自力での下山が不可能、あるいは非常に困難となったとき」に行います。
特に注意したいのは道迷いです。「安易な救助要請はいけない」「自分でなんとかしなくては」と思って行動するほど深みにはまります。日没前だからとか、まだ30分しかたっていないからなどと考えず、自分では解決できないと思ったら早めに通報してください。時間が早ければすぐに捜索に出られますし、見える景色などを手がかりに通報者の現在地を特定でき、自力下山の助けになることもあります。
ケガや道迷いで下山が遅れたものの自力下山ができる場合でも、不安があれば警察や家族に相談の連絡を入れておくとよいでしょう。

【基準1】病気・ケガをした場合

自力下山が無理だと思ったら、ケガや病気で自力歩行による下山が不可能と判断したら救助要請をしましょう。無理に行動すると悪化する原因となります。

【基準2】道迷いをした場合

現在地を判断できない、どこにいるのかわからない、自分で解決できないと思ったら、日没まで動きまわらずに救助要請をしましょう。

【基準3】天気が急変した場合

大きな異変が生じ、行動に危険を感じたら救助要請をしましょう。天候が急変し、下山に使う登山道が崩れた、徒渉地点の沢が増水したなど、進退窮まった場合も救助を呼ぶ。

現場での救助要請と要請後の対処

携帯電話の電波が通じず、通報できない場合は決して諦めたらいけません。
電波が不安定で通話ができなくても、メールなら送信できる場合があります。また、自分の居場所を伝えるには声やヘッドランプの明かりも有効です。一般登山道でのケガや病気なら、ほかの登山者に救助要請を伝言することもできます。
その場合は口頭ではなく、救助要請に必要な情報を書面にして託すこと。伝言される側も気が動転しがちなので、口頭での伝言では必要な情報がうまく伝わりません」「助けてくれと言われた」だけで、要救助者の名前や事故の内容、場所さえも覚えていないことがあります。

メールなら通じることも

電波状態が不安定で、長時間の通話は難しくても、救助要請に必要な事項を記したメールを作成し、送信を試みよう。警察に直接、メールで救助要請するのがベストだが、家族や友人に送り、警察に転送してもらってもよい。

ライトは山麓に向けて

夜間、点灯、点滅する光は、遭難に気づいてもらうには有効。ヘッドランプを山麓や山小屋に向けて点滅させるとよい。スマートフォンにもライトの機能はあるが、電池が切れると救助機関と連絡が取れなくなるので控えよう。

大きな声で叫ぶ

周囲に音が少ない夜間には声は案外遠くまで響きます。「山から声が聞こえた」という山麓住民の通報で救助につながることもある。日中も、どこかから声が聞こえてくるときは、自分の発した声がほかの登山者に届く可能性があります。

誰かに救助要請してもらう

通りかかった登山者に下山地あるいは携帯の電波の届く所で救助要請してもらう、または途中の山小屋への通報を依頼する。自分の名前や連絡先、事故の状況などの情報を紙に書いてまとめておき、そのまま渡すと確実だ。

救助要請する際のポイント!山岳事故とはっきりと伝えよう

救助要請は、110番(警察)か119番(消防)か、どちらでもかまいません。
最初に「事件ですか、事故ですか」と聞かれますから、町での事故と区別するために、必ず「山岳事故です」とはっきり答えます。さらに、ケガをして動けない、道に迷っているなど救助が必要な状況であることを伝えます。

救助要請をする前に行なってほしいのが、通報する内容の整理。
オペレーターが必ずしも山岳事故に精通しているとは限らず、捜索・救助に必要な情報を過不足なく聞き取ってもらえないことがあります。「いつ、どこで、だれば、何を、なぜ、いかに」という原則に従って状況の説明すると、事故の状況が詳しく伝わります。
特に、注意したいのは場所の情報です。山名だけでなく都道府県名も伝えます。110番や119番での通報は、最寄りの警察や消防につながるとは限りません。確実に場所を特定できる情報を伝えてください。

  • いつ:事故が発生した場所
  • どこで:山名(都道府県も)、おおよその場所、標高
  • だれが:遭難者の氏名・住所など
  • 何を:足を骨折して動けない、道に迷ったなど
  • なぜ:登山道から滑落した、下山時に登山道が分からなくなったなど
  • いかに:自分が今いる場所と容態について

救助機関からの指示に従う

救助要請を行った後は、できるだけ安全な場所でビバークし、救助隊が到着するのを待ちます。
警察や救助隊などの救助機関は事故の内容や現場の状況、天候といった条件を考慮して捜索・救助の方針を決定し、その内容を要救助者に伝え、救助現場に向かいます。救助機関の指示は忠実に従ってください。特に道迷い遭難では「その場を動かない」と指示があると思います。
救助を待っている間に注意したいのが、家族や友人への連絡です。
救助機関からの連絡に備え、スマートフォンなどは常に通話ができる状態にしておいてください。家族への連絡も最小限に。無事を伝えるためでも、家族や友人との通話で電池を消耗するリスクがあるだけでなく、救助機関が連絡をしたときに通話中でつながらないということがあります。救助機関から救助の段取りについて説明を受けてから、事故の状況と救助の予定についてメールを送るとよいでしょう。

家族・友人への口頭ではなく要点を書面で伝えておく

遭難事故が発生して自分では救助要請ができない場合、家族や友人からの通報の後、登山計画書の有無で捜索・救助機関の初動は大きく変わります。
計画書は「作って提出したら終わり」ではありません。家族や友人など緊急時に救助要請をしてくれる人に、計画書を預けることが重要です。登る山の名前を口頭で伝えても、登山知識のない家族は山名を聞いても場所がわからないものですし、口頭での伝言は記憶に残らないことがほとんどです。
万一の遭難事故に備え、登山計画書を託す相手と、救助要請の段取りを決めておくことも大切です。

色の明るいもの、動くものが目立つ

ヘリコプターによる救助の場合、上空から発見してもらうことが重要です。
明るい色のもの、光るものは上空からよく目立ちます。黄色やオレンジ色のテントやツエルト、自然にない色という意味ではブルーシートも見つけやすいです。動くものもよく目立ちます。ヘリで捜索をしているとき、樹林の中で動く動物もよく見えます。ヘリが近づいてきたら、ツエルトやエマージェンシーシートを大きく振って合図しましょう。トレッキングポールにツエルトやエマージェンシーシートを縛りつけ、旗のように振り回すのも効果的です。

緊急時に役立つ救助要請9種のアイテム

白煙器具

着火して煙を発生させ、現在地を遠くまで知らせるのに役立つ。車載用の発炎筒は煙の量が少なく不向き。

エマージェンシーシート

活用法はツエルトと同じだが、光を反射するため、見晴らしの悪い場所でも振り回すとよく目立ち、発見されやすい

火器(バーナーや固形燃料)

救助を待つ間、暖を取り、低体温症を防ぐために有効。湯を沸かすための小型クッカーも常備しておきたい

ツエルト

体温を保持するためだけでなく、黄やオレンジなどの色が目立つため、上空からの捜索時に発見されやすい

予備のメガネ

転倒や滑落時に破損・紛失しやすいのがメガネやコンタクトレンズ。現場の状況を正確に把握するために携行したい

ホイッスル

叫ぶよりも簡単に書く音を出せる。特に夜間は音がよく響く。登山用品店で販売されている専門のホイッスルがよい。

予備のバッテリー、電池

救助要請だけでなく、その後も救助機関との連絡がスムーズにできるよう、予備のモバイルバッテリーや電池は必須

遭難連絡カードと筆記用具

捜索・救助に必要な情報を伝えるため、状況を整理できる用紙を常備した

ヘッドランプ

夜間、山麓に向けて事故を伝えるときや、救助隊に現在地を伝えるときに有効。点滅機能もあるものを選びたい

捜索・救助に役立つシステム・サービス

オンラインで登山計画を手軽に提出できる「コンパス」

日本山岳ガイド協会が運営する、インターネットで登山計画を家族や友人、警察と共有できるシステム。ウェブサイトから全国の山域の登山計画が提出できる。 サイトの書式に従って情報を入力し、登山計画がを提出すると、指定した家族や友人に登山情報のメールが送られる。
「コンパスには下山通知機能があり、予定の下山日時を過ぎても下山連絡がない場合は、登録した緊急連絡所や登山者本人に確認の連絡が届きます。家族や友人から相談・依頼を受けて捜索を開始しますが、コンパスと協定を締結している自治体や警察も多く、実際に家族から捜索依頼があった場合は、コンパスに提出された登山の情報が救助機関と共有され、迅速な活動に役立っています。

コンパス~山と自然ネットワーク~

会員制の捜索ヘリサービス「ココヘリ」

2016年のサービス開始以来、利用者が急増している会員制捜索ヘリサービス。 入会すると、会員個人の識別番号をもった電波発信機が会員証として提供される。発信機はスイッチを入れると数キロメートル届く電波を発信し、1回の充電で約3ヶ月間、電波を発信し続ける。会員が行方不明となった場合、家族や友人からの要請を受けて捜索ヘリが飛び、行方不明者の発信機が発する電波をキャッチして位置情報を特定し、救助機関に引き継ぐことができる。
電波が長期間発信されるので、行方不明者の捜索には非常に有効です。登山計画書を基に範囲を絞り込み、捜索ヘリを飛ばします。捜索ヘリは1回の事案で3回まで無料で利用できます。

COCOHELI ココヘリ | 会員制捜索ヘリサービス

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てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。