登山で使える天気図の読み方!気象遭難を防ぐ天気の基礎知識

登山で使える天気図の読み方!気象遭難を防ぐ天気の基礎知識

天気は、山での行動にとても大きく影響します。

天気予報で晴れだと言っていたのに、山では雨ということはよくあります。それは、平地と比べ雨が降りやすいからです。ちょっとぐらいの雨だったら問題ありませんが、予想よりも悪天候になった場合、山岳遭難につながり、命の失う可能性もあります。

天気に関する知識を持つことは、そういった事態への備えになります。山で適切な行動をとるための判断ができ、より安心して登山をする手助けになります。

そこで、今回、登山で使える天気に関する基礎知識を紹介します。日本の天気の特性、平地と山の天気の違い、雲ができる仕組み、前線の種類、高気圧や低気圧、天気図の読み方などをまとめています。

日本の天気は予測するのがとても難しい

日本列島のほとんどは温暖湿潤気候です。春夏秋冬という四季があり、夏は高温多雨、冬は寒く乾燥するという特徴を持っています。

夏は南東から季節風が吹くため太平洋側で雨が多く、冬は北西から季節風が吹くため日本海側で雪が多く降りやすくなります。また6月から7月にかけて雨が降り続く梅雨があったり、夏には強風や豪雨をもたらす台風が通るなど、年間を通してつねに天気は変化しています。
北海道や東北内陸部などは亜寒帯気候で、梅雨がありません。また、南西諸島などは亜熱帯気候に属し1年中高い気温を保ちます。
こうしたことに加え、日本列島は南北に長く、季節風や海流などの影響を受けるため、また山地が多いため、地域地域によって天気が異なります。さらに近年では温暖化やヒートアイランド現象などもあり、日本での天気の予報はより複雑になっています。

このように、日本国内でも、地域によってそれぞれ天気に特徴があるため、各地方の特徴を詳しくみていきましょう。

世界の国々の中には、1年を通して暑い国もあれば、夏でもコートがいる寒さの国もあります。また、1年を通して雨が降る国がある一方で、砂漠のように滅多に雨が降らない国も存在します。
南北に長い日本列島は、冬の寒さが厳しい北海道は『亜寒帯』、冬でも暖かい沖縄は『亜熱帯』に属していますが、その他のほとんどの地域は1年を通して温暖な『温帯気候』に属しています。

東京など関東甲信地方の特徴

関東甲信地方は、日本で最も大きい平野部と最も高い山があることから、「海岸気候」「内陸気候」「山岳気候」の3種類の特性があります。 沿岸に近い地域では、海洋の影響を大きく受けます。海水は温まりにくく冷めにくいため気温の変化も小さいですが、風が強く、湿度が高くなるのが特徴です。 内陸部では海洋の影響を受けにくいため、気温の変化が大きく、空気は乾燥しがちです。山岳地帯では、地表の温度が比較的涼しめで、山谷風が吹くこともあります。

日本海で低気圧が急速に発達し、強い南風が吹きます
6〜7月中旬にかけて梅雨前線の影響で雨が続き、梅雨が開けた8月頃の気温が最も高くなる
秋雨前線の影響により雨や台風が多くなる
日本海から流れ込む雪雲の影響で、山岳部や山間部では雪が多くなる。平野部では晴れの日が続きます。

愛知など東海地方の特徴

東海地方は、太平洋側の海岸平野と北側の山岳地帯や盆地で構成されています。太平洋側では黒潮の影響で温暖な気候が続きますが、内陸では冬場を中心に寒冷な気候なのが特徴です。

低気圧と高気圧が交互に通過するため、周期的に天気の変化が見られ、次第に晴れの日が多くなる。
梅雨前線の影響で前半は雨が続きますが、後半は太平洋高気圧が発達して晴れの日が多くなる。
低気圧と高気圧の影響で、天気の変化が多くなりがち
冬型の気圧配置により、太平洋側では晴れ、山間部では曇りや雨または雪の日が多くなる。

大阪など近畿地方

近畿地方は、日本海、瀬戸内海、太平洋に接しています。また、北南東にはそれぞれ山地や高地、山脈があり、山に囲まれた地形です。

低気圧と高気圧が交互に通過し、周期的に天気の変化が見られます。春先には、晴れて風のない夜などに、晩霜になる『放射冷却現象』が起きる。
6〜7月中旬は梅雨前線や南からの湿った空気により雨が続き、7月後半頃には太平洋高気圧が梅雨前線を北に押し上げ梅雨が明ける。
春季と同様に、周期的に天気が変化がみられます。
シベリアから日本へ寒気が流れ込み、風上の日本海側では雪や雨、風下の太平洋側では晴れが続く日が多いです。

登山で覚えておきたい天気の基礎知識

山と平地では天気が違う

平地の天気予報は好天となっているのに、山では荒れた天気になり、仕方なく途中で下山したという経験を持つ方もいると思います。このような状況は、気象遭難が起こりやすく、とても危険な状況です。なるべくなら避けたい。

なぜ平地は晴れているのに、山で雲がかかったり、雨が降ったりするのか?ここでは、その理由について考えていきたい。

雲が発生するために重要なのは、「水蒸気がたくさんあること(空気が湿っていること)」と「水蒸気が冷えること(空気が上昇すること)」です。

低気圧や台風、前線が接近するときは、上昇気流が起きたり、湿った空気が入ってきます。平地で天気が崩れるのはこのようなときです。
ところが、山ではこうしたことがなくても、風が吹くだけで簡単に上昇気流が発生し、雲ができてしまいます。風が山の斜面に沿って昇っていき、空気が上昇するためです。
そして、水蒸気が多い海から風が吹くと、この湿った空気が山にぶつかって上昇し、風上側で雲が発生します。さらに、大気が不安定な状態になると、雲は発達して大雨や大雪、雷をもたらすこともあります。
つまり、海から風が吹くときの風上側の山岳では天気が崩れやすい。逆に風下側では下降気流で雲は消えていきます。

雲はどうしてできるの?雲ができる仕組みとは

山の天気が崩れる理由のひとつは、雲ができること。
雲ができなければ好天となるが、雲が発達すれば大雨を降らせることもあります。したがって、雲が発生・発達するのかを予測することが天気を予想する最も重要なポイントとなります。

では、雲はどうしてできるのだろうか?

雲のもとは水蒸気です。水蒸気は目に見えないが、空気中にたくさん浮かんでいます。これが冷やされると、水滴になり、水滴がたくさん集まったものが雲になります。
つまり、雲が発生するには、「水蒸気がたくさんあること」「水蒸気が冷えること」が 必要になります。

水蒸気は、「湿った空気が入ってくるところ」「海の上」にたくさんあります。そして、空気が上昇したり(上昇気流)、冷たい空気が入ってくると、水蒸気が冷えます。

上記のことから、水蒸気がたくさんある海から風が入ってきて空気が上昇するときに、雲ができやすくなります。

大気が不安定ってなに?雲が発達する仕組みとは

大気が安定か不安定かというのは、簡単にいえば、上空と地上付近との温暖差によって決まります。空気(大気)は暖かいと軽く、冷たいと重たくなるという性質があります。したがって、通常は暖かい空気は上方に、冷たい空気は下方に溜まっていきます。このような状態を「大気が安定」しているといいます。

しかし、実際の空気は、このような状態になっているところはわずかで、ほとんどの場所で上方へ行くほど温度が下がっていきます。 これは、空気にとって理想的とは言いがたい状態です。それでも空気はなんとか耐えているが、上空に寒気が入るなど、地上付近と上空とで気温差が著しく大きくなると、空気の限界を超えてしまいます。

このような状態を「大気が不安定」という。

暖かい空気は上方へ、冷たい空気は下方へと動いて、上下の温度差を和らげようという運動が起きます。このときに起きる上昇気流が非常に強く、雲を上へ上へと成長させていく。すると、雲は積乱雲と呼ばれる、雷を引き起こしたり、激しい雨や雪を降らせるような危険な雲にまで発達します。

雲は上方へ発達しなければ、雨や雪を降らせる雨雲にまで成長しません。 とくに、落雷や大雨、大雪などの気象現象は、雲が上方へ著しく発達したときに起きます。雲が上へ上へと昇っていくためには、大気が不安定であるということが重要です。

大気が不安定な状態にある条件

  • 上空に強い寒気が入ってくること
  • 地面付近が強く暖められること
  • 暖かく湿った空気が地面付近に入ること

前線にはどんな種類があるの?

水と油が混じり合わないように、暖かい空気と冷たい空気、湿った空気と乾いた空気は仲が悪く、混じり合おうとはしません。
すると、異なる性質をもつ空気同士の間でケンカが起きてしまいます。それが前線です。

前線付近では空気が上昇していくので、天気が悪いことが多い。天気の崩れ方は4つある前線の種類や目的の山が前線のどちら側に位置するかによって大きく異なります。

温暖前線

冷たい空気が居座っていたところに暖かい空気がやってきて、冷たい空気を押しのけながら上昇していく前線。前線の北側や東側で雲が発達し、広い範囲でしとしととした雨が降るのが特徴。雨は長時間降ることが多い。

寒冷前線

暖かい空気が居座っていたところに冷たい空気がやってきて、暖かい空気の中にむりやりもぐり込んでくることによって発生する前線。暖かい空気が急激に上昇させられるので、雲が上方へと発達しやすく、積乱雲から短時間に強い雨が降る。落雷や雹をともなうこともある。

停滞前線

暖かい空気と冷たい空気、あるいは湿った空気と乾いた空気の勢力が同じくらいで、それらの間にできる前線。勢力が同じくらいなので、勝負がつかず、長時間同じような場所に停滞する。日本では梅雨前線や秋雨前線が代表的。長雨をもたらすことが多い。

閉塞前線

温暖前線よりも寒冷前線のスピードが速いので、寒冷前線は温暖前線に追いつく。その追いついた状態の前線。温暖前線と寒冷前線両方の性質を併せ持つ。

高気圧と低気圧とは?

地形に凸凹があるように、空気にも凸凹があります。高気圧は山、低気圧は窪地と考えるとわかりやすく、凸が高気圧、凹が低気圧です。

空気が押す力のことを気圧といいますが、気圧が周囲より高いところを高気圧、低いところを低気圧と呼びます。
空気は目に見えないが、地形のようにとらえるとイメージしやすい。地形に凸凹があるように、空気にも凸凹があります。高気圧は山、低気圧は窪地と考えるとわかりやすく、凸が高気圧、凹が低気圧です。

山の頂上から水を流すと低いところへと流れていきます。同じように空気も高いところから低いところへと流れます。この空気の流れのことを「風」と呼びます。

高気圧は山なので、高気圧から周囲に風は吹き出していきます。すると、高気圧の中心付近の空気が少なくなってしまう。それを補うように上から空気が下りてくるので下降気流となり、天気がよくなります。
一方で、低気圧は、窪地であることから周りから空気が流れ込んできます。周囲から集まった空気は行き場がなくなるので上昇していく。そのため、低気圧の中心付近では上昇気流が発生し、雲ができやすい。定期月の中心付近で天気が悪くなるのはそのためです。

高気圧、低気圧の中心付近はそれぞれ好天、悪天と判断できるが、中心から少し離れたところでは天気が異なってきます。
それらの地域では、等圧線から風向きを判断し、海から風が吹いてくる風上側の山岳で天気が崩れる。

天気図の読み方

等圧線の向きと間隔をチェック

山と平地で異なった天気になるのは、山に風がぶつかって湿った空気が上昇していくため。
また、低体温症などの気象遭難が発生するのは、山で風が強いときに起こりやすい。風が強いと、体感温度が下がり、体温が急速に奪われていくから。とくに雨や雪をともなって体が濡れると体温の奪われ方がさらに早まります。
そのため、山の天気で最も重要なのは風の向きと強さ。それらを天気図から読み取れるようになろう。

風向きを天気図から調べる

高気圧では中心から周囲に向かって風が吹き出していきます。また、低気圧の中心では周囲から中心に向かって風が吹き込んできます。それらの風は地球の自転の影響を受けて北半球では右寄りに向きを変えていく。
一方で、高気圧や低気圧から離れたところでは、風は等圧線の向きによって決まる。等圧線の向きから風向きを判断しましょう。

  • 目的とする山の両側の2つの等圧線を見つける
  • 2つの等圧線のうち、どちらの気圧が高いかを判断する。低気圧や高気圧の位置を参考にするとよい
  • 気圧が高い方から低いほうへと矢印を引く
  • 自転の影響で(3)の向きを90度右向きに変える

この方法ですべての場所で、地形の影響を受けない風向きがわかります。そして、もし海側から風が吹いてくる山に登山する場合は、天気が悪化するので気をつけよう。

風の強さを天気図から調べる

等圧線の間隔が狭いとき

風が強く吹く。日本列島で5本以上の線が走っているときは要注意。とくに、中部地方や東北地方などひとつの地方だけで3本以上走っているときは大荒れの天気に。

等圧線の間隔が広いとき

標高の低い山を中心に風が弱い。ただ、高圧線の進行方向側では高圧線からの吹き出しにより風が強まるところもある。また中部山岳など標高の高い山では、等圧線の間隔が広くても風が強くなることもある。

目的に応じて使い分ける!テレビやインターネットの天気予報の賢く利用する

天気予報には数時間先の降水の状況などを予想する短時間予報から、数ヶ月先の長期予報までさまざまな種類があります。
そのなかで、登山者が最も利用するのは、翌々日までの短期予報と週間予報かと思います。そこで注意がしなければいけないのは、いずれも平地の天気予報であること。したがって、登山に利用するためにはひと工夫が必要になります。

府県天気予報

大荒れの天気になるのは海から風が吹く風上側の山岳です。
したがって、目的の山が2つ以上の県をまたがっていたり県境近くの山の場合、風上側の府県の天気予報を利用します。
たとえば、白馬岳の場合、西風が吹くような気圧配置の場合は富山県東部、東風は長野県北部、北風は新潟県上越地方というように使い分ける。風向は等圧線の向きから推定します。

週間天気予報

週間予報の精度も近年は高くなってきており、予報を見て、週末の登山を実行するかどうか決める人も多いと思います。しかし、夏季の予報精度はまだ低く、3日以上先の予報は外れることもしばしばある。また、直前になって予報が変わることもあります。
なので、目的の山で大荒れになるような天気を除けば、雨予想のときに登山を中止してしまうのは早合点。ただ、荒れた天気に登るのは危険なので、週間予報では大荒れになるかどうかを見極めるのが最も重要です。

プロフィール画像

てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。