登山中に多い切り傷・すり傷の応急処置!傷の洗浄・止血・閉じるが基本

登山中に多い切り傷・すり傷の応急処置!傷の洗浄・止血・閉じるが基本

登山中に多いのが切り傷や擦り傷などの外傷です。

何気ない動作で、うっかりこけて擦りむいた傷や切り傷など、そのままでも大丈夫と思っていても、正しく処置をしないと後々傷が悪化したり、傷跡が残ってしまうこともあります。

ここでは、今回、切り傷やすり傷の応急処置を紹介していきます。ちょっとした傷に効果的な処置、応急処置の基本3ステップ、止血方法、用意しておきたい道具・薬などをまとめました。
いざという時、落ち着いてすばやく処理ができるように、事前に応急処置を基礎知識を身につけておきましょう。

登山でよくある小さなケガ 切り傷・すり傷などには湿潤療法が効果的

ちょっとした傷にも大量に消毒液を使う人もいるが、消毒液は不要な菌も除去する反面、皮膚や皮下組織にも悪影響を及ぼす場合が少なくない。結果、治りが遅くなったり傷跡が残ることになります。

傷にはやたらモノをつけずに、すぐに病院にいく。止血だけきちんとして、可能な限り早く専門医に任せてしまうのが賢明です。
傷口に砂などの汚れがある場合は、水筒の中の清潔な水をかけて洗い流す程度にしておきたい。消毒液や赤チンの類、軟膏などはやたらとつけないほうがいい。

昔は傷口をふさがずに乾かしていたが、現在は湿潤療法が一般的です。

傷口にラップするようにフィルムを貼り、外気を遮断して回復を待つのが湿潤療法。回復が早くて跡も残りにくく、痛みが緩和します。薬局では湿潤療法の考えにのっとった傷治療用のフィルムや特殊パッドが多数市販されています。皮膚が擦れて体液がにじみ出ているようなすり傷には特に効果的です。

傷は消毒しなくて良いの?

傷は消毒しなくていいという説もある。消毒は悪い細菌だけでなく良い細菌も殺してしまうので、傷のなおりを悪くするという考えだ。実際、すり傷程度なら消毒せずに洗浄だけして、傷口を密閉すると早くキレイになおる場合がある。しかし、山の中にはさまざまな細菌、たとえば破傷風菌などがいる危険がある。消毒が不要なのは、傷が浅いケースに限られる。傷が深い場合や、受傷から時間がたっている場合は、しっかり洗浄し、消毒することが必要です。

切り傷・すり傷の応急処置。3つの基本ステップ

バイ菌が繁殖する前に処置することが大切です。
傷口を観察し、まずは傷口を洗浄します。洗浄後に出血が続くようであれば止血し、血が止まったら傷口をふさぐ、という順番で対応しましょう。感染症防止のため、必ず手袋をして行うこと。

1.傷の洗浄

傷にはすり傷、切り傷、刺し傷などがあるが、そのように皮膚が破けた傷は、バイ菌はが入って化膿しやすくなります。傷の面積が広ければ、悪化する可能性が多い。

バイ菌が傷のなかで繁殖しやすくなるのはケガをしてから6時間以内。したがって、できる限り速やかに傷口を洗浄すること。また、傷のなかに砂、岩くず、草、木くず、コケなどが入っていると悪化しやすいため、徹底的に傷を洗いましょう。

傷口洗浄の手順

  • 傷口全体を観察する。服の中にも傷があるときは、ナイフやハサミで服を切って確認しましょう。
  • 傷のなかに小石や草などがあれば、できる限り取り除く。
  • 徹底的に傷を洗う。ペットボトルのキャップに穴を開けたもので、水圧をかけるとよりよい。
  • 充分に傷を洗ったら、清潔なタオルやガーゼで血や傷口の水分を拭き取る。
  • さらに傷の周囲をイソジンなどの消毒液で消毒しておこう

2.止血

出血には、傷口から脈のリズムにそって血の出る動脈性出血と、傷口からじわじわと血の出る静脈性出血がありますが、止血をする方法はいっしょ。出血部に清潔なタオルやガーゼを直接当てて、根気よく圧迫します。
上から圧迫することで血管がふさがれ、そこに血液を固める機能が働いて、ホース(血管)の切断部が固められる。大きな出血であれ、小さな出血であれ、根気よく圧迫していれば、血はいずれ止まります。
頭部や顔面は血液が多く、小さな傷でも血が大量に流れ出ます。しかしこれも圧迫すれば必ず止まるので、出血量の多さに慌てないこと。

3.傷口を閉じる

傷口が小さければ、絆創膏を貼るだけで充分です。広い場合はテーピング用テープを使って傷口を閉じよう。傷が広範囲なときは、無理に閉じる必要はないです。 また、傷が動物にかまれたものならば、感染を避けるために傷口は閉じないでおきましょう。

傷が直線的で浅い場合

傷の消毒後、テーピング用テープを細かくカットして、傷を寄せ合わせるようにして固定します。傷が長い場合は、傷の端から等間隔で固定していきます。

傷がかぎ裂きになっている場合

傷の消毒後、テーピング用テープを細くカットし、かぎ裂きの頂点を固定します。傷が長い場合は、そこから等間隔で固定していく。

覚えておきたい止血法、基本は圧迫止血

まず止血をする前に、傷口を清潔な水で洗い流します。泥などの異物は水を含ませたガーゼを傷口に当てて、拭き取っておきます。

出血していたら、ガーゼなどで患部をおおって手でおさえて圧迫します。数分圧迫すれば止血できる場合が多いです。布に血液がしみた場合、その布をはがすと再出血してしまうことがあるので、布をその上に重ねます。傷口を心臓より高くあげると、出血しにくくなります。止血できたら、清潔な布でおおいます。なお、止血に生理用ナプキンも適しています。清潔で吸水性が良く、個別包装されていて、携行に便利だからです。吸水性の高いものと少ないものを持っていると良いです。

拍動に合わせて吹き出すような出血は動脈からです。動脈の傷口か、傷口よりも心臓に近い上流部をおさえます。しばる場合は、細い紐や針金でしばると神経などを痛めるので、使ってはいけません。幅広の布を使いますが、30分に一度ゆるめて様子を見ます。

圧迫止血の手順

  • 傷口を清潔な水できれいに洗い流す
  • ガーゼやハンカチなどで、傷口をおおって手でおさえて圧迫する。
  • 体重をかけながら数分圧迫する
  • ガーゼに血液がしみた場合、布をはがすと再出血してしまうので、その上から重ねる。
  • 出血が止まりづらい場合、傷口を心臓より高くする
  • 止血できたら、清潔な布でおおう。

鼻血が出た 小鼻を圧迫して止血するのが基本

登山中に鼻血が出たら、詰め物はせずに、小鼻を圧迫して止血します。

鼻をぶつけたりするほか、気温が低かったり空気が乾燥していたりすると鼻から出血することがあります。たいした量ではないものだが、いきなり出血するとびっくりするし、血を流しながら歩くわけにもいかないので困ることも。

鼻血は鼻のずっと奥のほうからでているように感じるが、ほとんどの場合、キーゼルバッハ部分という鼻の穴から少し入った部分から出血しているケースが多い。この部分には細かい血管が集中していて粘膜が薄いため、わずかな刺激でも出血しやすいです。

鼻血が出た時は、上を抜くと血がのどに入ってしまうことがあるので、やや前かがみの姿勢をとります。出血部を心臓より上にしたほうが出血は止まりやすいので、横にはならないほうが良い。また、ティッシュや綿などは鼻に詰めないほうがいい。出血が止まったあとで詰め物を取る時、また出血してしまう可能性があるため。

鼻血の応急処置。基本は圧迫止血

鼻血を止めるには圧迫止血が基本で、小鼻の部分を親指と人差し指でつまんで圧迫する。だいたい5分から15分も圧迫していれば出血は止まるはず。 万一、30分圧迫しても止まらないような場合は、外科的な処置が必要かもしれません。すぐに医者にかかることが無理であれば、冷たいタオルで鼻を冷やすなどして鼻血を止めましょう。

切り傷・すり傷に持っておきたい道具・薬

正しい処置には、事前準備が大切。登山中のケガは誰にもでも起こりうるものです。ちょっとした傷でも冷静に対処できるよう、応急処置に必要な道具や薬を持っていない人は揃えておきましょう。

  • 消毒液
  • 滅菌ガーゼ
  • 三角巾
  • テーピングテープ
  • ビニール手袋
  • バファリン

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てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。