登山中に高山病にならないための予防や対処法!ゆったりした計画が大切

登山中に高山病にならないための予防や対処法!ゆったりした計画が大切

高山病とは、高い山に登ったときに起こる全身的不調のことです。高地においては気圧が低いことから、血液中の酸素濃度が低くなることから、起こる症状です。

富士山頂においては体内の酸素量は平地の半分なります。標高2,500m以上の高所では誰でも、何かしら不調が起きてもおかしくありません。ただ、予防を心がける事で、高山病のかかる確率を減らしたり、対処法を知っていれば、いざという時に落ち着いて対応ができます。なので、あまり、怖がる必要もありません。

ここでは、今回、高山病の予防・対処法を解説していきます。高山病の症状と原因、事前に準備できる予防、登山中にとる対策、高山病になってしまってからの対処法、高山病の有効な薬の流れで進めて行きます。

高い山に登った時に起こる高山病の症状とは

高山病は高い山に登ったときに起こる体の不調で、一般に標高2,400m以上で発症します。症状は主なものが頭痛で、ついで倦怠感、食欲不振、吐き気、不眠、むくみなどです。
富士登山でも約半数の人が、この症状を訴えます。風邪に症状が似ていることから、区別しにくい場合もあります。

通常は1日から数日で体が高所に順応し、その症状はなくなるはずですが、必ず高所に順応できるかというとそうではありません。そのときの体調や体質によっては高山病を悪化させてしまうこともあり得ます。

悪化すると肺水腫や脳浮腫を発症し、重篤な場合は死亡することもあるので、よく注意する必要があります。

高山病の自己判断

標高の高い山へ向かったら、まずは以下を参考に、高山病の程度を自分で判断しよう。もし高山病の可能性があるとしたら悪化させないように対策をとる必要があります。

Aで見られるのは初期症状であり、それほど苦しくないのであれば呼吸をしっかりとして、様子をみる。Bで見られるのは危険な症状であり、ただちに下山が必要。その高度にいつまでも留まり続けるのは自殺行為です。

高山病の主な症状
Aの症状
  • ・頭痛
  • ・食欲低下
  • ・吐き気
  • ・顔のむくみ
  • ・呼吸の不調(せきやたん)
  • ・不眠
Bの症状
  • ・激しい頭痛
  • ・突然の嘔吐
  • ・歩くとふらふらする
  • ・物が考えられない状態
  • ・横になると呼吸が強くなる
  • ・意識がもうろうとする
  • ・目がよく見えない

高山病の種類

高山病の症状は、重症度によって以下のように分けられます。

急性高山病

頭痛と、次の症状のうち少なくともひとつ。食欲不振、吐き気、嘔吐などの消化器症状、倦怠感や虚脱感、めまい、睡眠障害。
標高3,500mでほとんどの人に上記の症状が現れ、そのうち10%は重症化する。

脳浮腫

急性高山病の症状に加え、精神状態の変化が運動失調のある場合。急性高山病の症状がなければ両方がある場合。

肺水腫

安静時呼吸困難、咳、虚脱感か運動能力低下、胸部圧迫感か充満感のうちふたつの症状があるもの

高山病の種類症状対策
急性高山病頭痛+食欲不振、吐き気、嘔吐などの消化器症状、倦怠感や虚脱感、めまい、睡眠障害のうちひとつアセトアミノフェンなどの鎮痛解熱剤、休息、安静、ダイアモックス
脳浮腫急性高山病の症状+精神状態の変化か運動失調酸素の使用、下山
肺水腫安静時呼吸困難、咳、虚脱感か運動能力低下、胸部圧迫感か充満感のうちふたつ大量の酸素吸入、加圧パック、すみやかな下山

高山病の予防 ゆっくりした登山計画が大切

高山病の原因は高所特有の酸素不足、低圧と寒さです。

高所では酸素が少ないので、体内に十分に酸素が取り込めず、さまざまな問題を起こします。ヒマラヤのトレッキングでは次の4つの原則があり、高山病の予防として急に高度を上げずゆっくり登ることがとても大切(1日500mがひとつの目安)。また、150m登るごとに気温は1℃ずつ下がるので、それにともない体のさまざまな機能が低下します。

高山病にかかりやすいのは、脱水を起こしていたり、疲労しているときです。
山に慣れていない初心者もよくかかります。意外なことに元気な若い男性もかかりやすい場合があります。酸素消費量が多いことと、男性は女性よりも3割ほど筋肉量が多く、酸素をより高くキープすることが、高山病予防にもつながります。

その他、ダイアモックスという薬やイチョウの葉エキスに予防の効果があるとされている。

ヒマラヤトレッキング 高所での4原則

  • (1)高山病の初期症状を自覚する。
  • (2)症状が出た場所より高いところに泊まらない。
  • (3)症状が悪化したら下る
  • (4)ひとりで下山させない。

高山病の予防法

標高2,500m以上では高山病の初期症状は誰でも起こる可能性があります。高山病を防ぐには、とにかく呼吸を深く行うことが大切です。

鼻から吸って、口から吐くのが基本だ。行動中は意識して強い呼吸をし、立ち止まったり休むときは深呼吸を繰り返す。登るペースは、体は高所に慣らすようゆっくりと。体力のある人が、体が慣れないうちにどんどん標高を上げてしまい、高山病を悪化させることは意外と多い。
また高所は空気中の水分量が少ないため、強い呼吸を繰り返すとその呼吸で体の水分を失われてしまい、体調が悪化してくる。
したがって水分をしっかりとることも重要だ。標高3,000m以上であれば、1日2L以上は飲むようにしたい。

予防法としては次のようなものがあります。

ゆったりとした計画をたてる

ゆったりとした計画をたてましょう。富士山など高い山では、登山口で1時間程度、軽くストレッチなどをして、高所に体を慣らしてから出発します。欲張って1日のうちに一挙に高く登らないようにします。

水分をたくさんとる

水分をたくさんとりましょう。高所では空気が乾燥している上に、呼吸が増えるので、体から水分が蒸発して脱水症状を起こしいます。喉の渇きを感じる体のセンサー機能も低下しています。平地と同じぐらいの尿量をキープできるように、水分をしっかりとりましょう。

ゆっくり息をして歩く

ゆっくり息をしながら歩きましょう。息を切らせて歩くと出入りの気道の部分にばかり息が行き来して、肺の深い部分が換気されません。そうすると二酸化酸素の排出と摂取が効率的にできず、息が苦しくなります。酸素消費量も多くなり、心肺への負担もさらに増します。急に走ったりするのはもってのほかで、動機もおさまりにくくなります。ともかく「ゆっくり」と自分に言い聞かせながら歩きましょう。

口すぼめ呼吸法をしましょう

笛を吹く要領で、口をすぼめてゆっくりと長く吐くと、自然と腹筋を使った腹式呼吸になり、息を吸うときに深く空気が入るようになります。高所に強い人は、意識しないでこの呼吸をしていることが多いです。

温かいウェアを着る

温かいウェアを着ましょう。寒さを常に意識し、十分な衣類を用意しておきます。寒さを感じる前に、着こみましょう。

高山病の対処方法 重症なら一刻も早く高度を下げる

高山病と思われる頭痛などの症状が起こったら、最善の対策は高度を下げることです。

地球の上では、標高が高くなるにつれて気圧が低下します。気圧が下がると酸素分圧も下がって、酸素の量が減っていきます。酸素分圧は、標高3,000mで平均の約3分の2、5,000mで約2分の1、エベレストの頂上で約3分の1になります。

体の中ではもっと大幅に酸素が減少していて、高度順化をした場合でも、富士山の頂上で約2分の1、5,000mで約3分の1、エベレストの頂上で約4分の1になります。

人間が生きていくために酸素は絶対に必要です。

高山病の初期症状がでたら、2、300メートル下って様子をみますが、症状がひどい場合は次のようなことを対処しつつ、下山を考慮しましょう。

口をすぼめて呼吸を長く吐く

予防法と同様に、口をすぼめ呼吸で長く息を吐きます。バルスオキシメーターの数値を見ながら呼吸の仕方を工夫してみます。高山病は眠っているときに悪化しやすいので、夜間ん、目が覚めたら深呼吸をしましょう。

水分を飲む

水分を十分飲みます。脱水は高山病を一層悪化させますので意識的に飲むようにします。高所では脱水しており、自分が思う以上に飲むことができるものです。
疲れていたら、横になって安静します。ただし、眠りこんでしまうと呼吸が少なくなって、かえって頭痛などがひどくなる場合もあります。昼間なら人と話したり、歌を歌ったりします。散歩など軽い運動をすると、気も紛れて良いでしょう。無口な人は高山病にかかりやすい傾向があります。

薬を飲む

軽い頭痛程度ならアセトアミノフェンなどの鎮痛剤解熱剤を飲み、可能なら休憩して安静にする。他の症状も加わってきたら、ダイアモックスを服用すると効果的です。主に海外トレッキングで飛行機や車で高所に急に行く場合や、日程の余裕がない場合に使われます。

標高を下げる

脳浮腫の段階になってしまったら酸素の使用が効果的だが、高地のトレッキングでもない限り酸素を持参していることは少ないと思います。症状がひどい場合は、下山することを考えたほうがいい。

体が順応することはあっても高地にとどまる限り酸素が少ない状態が続きます。そのため、なるべく早く低いところに下りるのが、一番の手段。

よく富士山の八合目あたりで高山病のせいか座り込んで動けなくなっている人を見かけるが、動ける体力が残っているなら誰かがつき添って早く下山したほうが良い。急性の高山病なら、高度を下げれば嘘のように治ってしまいます。

重篤なときは緊急搬送

重症になると脳浮腫や肺水腫を発症します。脳浮腫で意識障害を起こしたり、よろめいたりといった症状がでます。農水種では呼吸困難を起こし、激しく咳こみ、ピンク色の泡のような痰を吐きます。薬は、脳浮腫ではステロイド、肺水腫では降圧薬などが使われます。こうなったら一刻も早くヘリで病院に搬送します。

高山病に有効な薬

ダイアモックス

高山病に有効な薬は、ダイアモックス(アセタゾラミド)というものがあります。これは脳の呼吸中枢を刺激することで体内に酸素を取りやすくします。海外のトレッキングでは高山病の予防や治療に使ったりしますが、あまり富士登山で使っている人は聞いたことがありません。

残念ながら、処方箋なしで一般の薬局で購入することはできません。もし薬の入手したい場合、医師に相談して処方してもらってください。ちなみに保険の適応にはなりません。

プロフィール画像

てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。