ハイドレーションを使い終わったら、まず水洗いしてしっかり乾燥させるのが基本。
入れるのが真水ならば乾燥だけで済むお手入れも、アイソトニック飲料などを入れた際にはしっかりとした洗浄が不可欠になります。洗浄しないでそのままにしておくと、腐敗や悪臭の原因になってしまうので、使い終わった後はきちんとお手入れが必要です。
そこで、今回、ハイドレーションのお手入れ・メンテナンス方法を解説。小型と大型バッグのお手入れ方法、頑固なニオイや汚れがついたときの対処、正しい保管方法、効果的なオプションパーツ、買い替えどき、お手入れに必要な道具などまとめて紹介します。
ハイドレーションのお手入れの基本
ハイドレーションバッグとウォーターキャリーの厳密な差というのはないのだが、通例では口でくわえることのできるチューブが付いて行動中も水分補給ができるものをハイドレーションバッグ、チューブの付いていないものをウォーターキャリーと呼びます。
ウォーターキャリーにもハードタイプとソフトタイプがあり、登山では小型のソフトタイプがあり、登山では小型のソフトタイプを水筒として使うことが多い。ここではハイドレーションバッグとソフトタイプのウォーターキャリーのメンテナンスについて紹介していきます。
通常、ハイドレーションバッグは真水を入れるものとして想定されています。そのため、その場のメンテナンスの基本は乾燥ということになり、使用後きっちり水分を切って、乾燥をしておきさえすればそれだけで十分です。
問題は水以外のものを入れた場合。トレイルランナーや山岳マラソンの選手だけでなく、登山者でもアイソトニック飲料を入れる人はいて、それらはひと手間かけてきちんとした洗浄をする必要があります。
ハイドレーションのお手入れポイント
- 水の場合は水分を切り、とにかく乾燥させること
- 水以外のものを入れた場合は使用後すぐに真水で洗浄
- 折りたたまないのが長持ちさせるコツ
小型ハイドレーションバッグの洗浄と乾燥
開口部の狭い小型のハイドレーションバッグの場合、内部の洗浄や乾燥はけっこう大変です。奥まで届く専用のブラシを使って洗浄したり、針金に布を巻き付けて内部の水分を拭き取るなどの作業が効果的。そのため、開口部の狭いタイプは水以外のものは入れない気配りも必要になります。使い終わったらキャップを開けてきちんと乾燥させるのが基本であることはいうまでもありません。
専門ブラシで奥まで洗浄
オプションとして用意されたブラシを使えば、開口部が小さいハイドレーションバッグでも奥まできちんと洗うことができます。
針金と布で水分を取る
乾燥を急ぐ際には、アルミ製の柔らかい針金に乾いた布を巻きつけてハイドレーションバッグ内部の水分を拭き取るのも有効です。
開口部を上にして乾燥
開口部を上に向けて、中の水分を完全に乾かしてから保管します。開口部を下にしたままだと湿気が飛ばずにこもってしまうので注意。
キャップの溝も掃除
キャップの内部の溝はホコリやゴミがたまって不潔になりやすい。布や綿棒を使って、奥まできちんと掃除しておきましょう。
頑固なニオイや汚れが付いてしまったときのお手入れ
ハイドレーションバッグに入れるのが真水だけならば使用後のお手入れはほとんど乾燥のみで済むのだが、トレイルランニングなどで電解質補充のためにアイソトニック飲料などの水以外のものを入れた場合には、使用後すぐの真水での徹底した洗浄が不可欠になります。ニオイや汚れが付いてしまった場合には漂白剤や重曹を使った汚れ落としやニオイ取りが必要です。
薄めた漂白剤でニオイと汚れを落とす
1Lの真水に対して2〜3滴の塩素系漂白剤を加えてリザーバーを満水にする。漂白剤の入れすぎは素材の劣化を早めるので注意。
重曹を使って汚れを落とす
汚れ落としだけならば、重曹も効果的。1Lの真水に対して小さじ1杯程度の重曹を加える。ぬるま湯のほうが溶けやすい。
チューブの中まで注水する
チューブの中まで水を行き渡らせ漂白剤は30分くらい、重曹は15分くらいおき、その後真水で洗浄を繰り返す
やっちゃいけないお手入れとは
ハイドレーションバッグは防水バッグなので、口を閉めた状態では自然乾燥してはいけません。乾燥が不十分な場合や、とくに水以外のものが残っていた場合にはカビが非常に生えやすい。アイソトニック飲料を入れたハイドレーションバッグを洗浄しないでそのままにしておくことは腐敗や悪臭の原因になり、してはいけない行為のトップと言えます。
運搬や保管状態についても考慮しなくてはいけない点がいくつかあります。
折りたたまない
いくら柔らかい素材でできているかといって、きつく折り曲げたりすると接合面の剥離の原因となるので注意。
直射日光の当たる場所に置かない
直射日光の当たる場所に保管すると、色が緑に変わっているだけでなく、チューブの硬化が進んでしまう。
大型ハイドレーションバッグの洗浄と乾燥
大型のハイドレーションバッグは開口部が大きく設計されているものが多く、それによってリザーバー内部の洗浄は比較的しやすくなっています。しかし、汚れてしまったチューブ内部をきれいに掃除するには専用のブラシも必要になり、手間もかかるのでメンテナンスの難易度は高いと言えます。
水以外のものを入れた場合のメンテナンスは、何をおいても使用後すぐの真水での洗浄。このフィールドメンテナンスをきっちりやっておけば帰宅してからのメンテナンスはさほど大変ではなくなる。
水以外のものを入れてフィールドメンテナンスがされていない、もしくは不十分だった場合に起きることはリザーバーおよびチューブ内のカビ、腐敗、ベタつき、悪臭など。とくに一度ついてしまった悪臭は水ではなかなか落としにくいです。これの対処は、塩素系漂白剤を薄めた液でニオイを落とすしかありませんが、これもその代わりに少なからずカルキ臭が付いてしまいます。レモン汁やクエン酸溶液、ウーロン茶などを入れてニオイを取るという方法もあるが、これもニオイを取るというよりもゴマかすといったほうがいい手法でしかありません。
つまり、やはり一番いいのはフィールドメンテナンスをした上で持ち帰り、家でのアフターケアをきちんとする。また、チューブ内部の汚れがどうしても取れないという場合には、オプションで用意されているチューブと交換するという方法もあるが、これは最終手段といえる。
また、大型のハイドレーションバッグは運搬や保管時に場所を取りたくないという理由から、折りたたんでおく人が少なくないが、折り癖がついてしまうと素材劣化や表裏の接合面剥離の原因となるので、折りたたまずに平らに伸ばした状態で保管するように心がけたい。細かい気配り製品の寿命を伸ばします。
リザーバー内部の汚れを落とす
専用ブラシを使って、リザーバー内部をくまなく洗う。奥の隅や、狭くなっている接合部はとくに念入りに
チューブパーツを外す
L字パーツなどリザーバーとの接合部分に使われているパーツを取り外し、内部を細かく掃除する
ゆるくなったチューブは切りつめる
抜き差しを繰り返したために、チューブの接合部がゆるくなっているようならば、その部分を切り詰める
バイトバルブの取り外す
シャットオフバルブからバイトバルブを外す。シャットオフバルブ内も布や綿棒などで細かく掃除する
バイトバルブを分解する
バイトバルブは2つのパーツに分解できる。劣化しているようならば新品のバイトバルブと交換する
バイトバルブ内部の掃除
バイトバルブの中をていねいに掃除する。口にくわえる部分なのでここは最も清潔にしておきたい箇所のひとつ
チューブ内部の掃除
チューブは長いワイヤーのついた専用のブラシを使って掃除する。掃除の後はくりかえし水洗いする
リザーバーにスペーサーを入れる
木ベラなどある程度の幅のあるものをリザーバー内部に立てて入れ、内部にすき間を作ったまま固定する
しっかり乾燥させる
洗濯ハンガーなどに吊るして乾燥させる。リザーバーは開口部を上にして水分を完全に蒸発させる
ハイドレーションのオプションを効果的に使う
そうそう劣化するものでもないハイドレーションバッグだが、可動部分があるパーツや開け閉めを頻繁に行なうパーツは交換が必要になってくるものもあります。バイトバルブなどは口にくわえて噛むので劣化も早いし、もし人に貸す場合には交換しておきたいパーツ。価格も安価なので絶えず用意しておくべきもののひとつ。
プラティパス バイトバルブ
口にくわえやすい構造と、数あるバイトバルブの中で最大の流量を誇る。分解して洗浄することが可能
プラティパス バイトバルブカバー
バイトバル専用の保護カバー。ホコリや汚れから守り、低温では凍結を防ぐ断熱カバーとしても重宝する
プラティパス クリーニングキット
プラティパスのハイドレーションシステムの洗浄に役立つチューブブラシとリザーバーブラシのセット
プラティパス シャットオフバルブ
プラティパスのホースに取り付けて使用するオンオフのバルブ。バルブの回転で開け閉めて水漏れを防ぐ
プラティパス BIG ZIP用ドリンキングチューブ
ビッグジップSL、ビッグジップLP専用のチューブキット。紛失や汚れが気になるときの交換用
プラティパス ドリンキングチューブキット
プラティパスのウォーターキャリーに取り付けてハイドレーションシステムに変えるためのキット
プラティパス プッシュプルキャップ
すべてのプラティパスにセットでき、ねじ込み式に開けなくてもキャップを引き上げるだけで開閉が可能
プラティパス クロージャーキャンプ(2個セット)
高い密閉性を誇り、各種プラティパスのバックパック内での不意の水漏れを防ぐオプションキャップ
ハイドレーションの買い換えどき
自分でメンテナンスできる限界は、残念ながら存在します。また、いくらこまめにメンテナンスを続けていても、耐用限界はいつの日がやってきます。メーカー修理に出すべき時や、買い替えどきについて説明します。
経年劣化
柔らかい素材でできているハイドレーションバッグも使っているうちに経年劣化で硬化してくる。バッグパックの中で押されると、思った以上の圧力がかかるもの。買った時はこんなに硬くなかったのに感じたら、裂ける前に買い換えた方が無難
接合面のはがれ
経年劣化にも関係するが、接合面をもむような動きを受けたり、繰り返しのきつい折り曲げを受けたりすると、接合面が剥がれることもある。これがバックパックの中で起きたら…。こうなると修理も不可能なので買い換えが必要になる。
紫外線劣化
紫外線で劣化すると、色が緑色になってしまい、スナップベルトやバイトバルブ、チューブ本体の硬化も進んでしまう。長期使用によって起こるだが、これはオプションパーツとの交換で対応できます。
ハイドレーションの正しい保管方法
いくらメンテンスがきちんとしていても、保管方法が悪ければ、せっかくした手入れがいつのまにか台なしになってしまうこともあり得ます。完全に乾燥させて、平らにした状態で保管するのがベスト。
完全に乾燥させてから
保管する前にはリザーバーおよびチューブ内部を完全に乾燥させておくことが大切。水分が残っているとカビや加水分解の原因となる。乾燥させるときはいいが、そのまま直射日光の当たる場所に保管するのは紫外線劣化を招くので、乾燥したらホコリやゴミの侵入をふせぐために口を閉め、風通しのいい場所に保管すること。
折りたたまない
ソフトタイプで携帯に便利だからといって、丸めたり折りたたんだりして保管、運搬している人も多いのではないだろうか。じつはこれ、接合面の剥離を起こす原因となる。とくに同じ場所をきつく折り曲げると折りクセが付いて劣化を早めてしまう。使用時と同じように伸ばして平らにした状態で保管、運搬することが望ましい。
ハイドレーションのお手入れに必要な道具
リザーバー内部やチューブ内部を掃除するにはオプションで用意されている専用のブラシを使うのがオススメ。漂白剤や重曹は汚れ落としとニオイ取りのための道具。木べらはリザーバーを広げたまま乾燥させるためのスペーサーとして使用する。太い針金と布は口の狭いハイドレーションバッグやウォータキャリーの内部を拭くときに、巻きつけて使用する。
お手入れに必要な道具
- 漂白剤
- 乾燥した布
- 重曹
- 洗濯ハンガー
- ブラシ
- ワイヤー付きブラシ
- 太めの針金
- 木ベラ
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。