今年こそ、日本の最高峰にして、世界文化遺産の富士山に登ろうと思っている方も多いと思います。目標を立てたら、さっそく富士登山の準備と計画を始めましょう。
ただ、普段、登山やハイキングをしたことがない初心者にとって、登山前にやることや必要な装備など、何から準備や計画していいのか分からないと思います。
中には、山小屋に宿泊せずに夜通しで登山し山頂でご来光を拝む弾丸登山や、日帰り登山など、無理をして登山をする人が多いです。高山病や低体温症などの危険も高まります。
まずは、富士山の登山シーズンやルート、登山行程など、登頂するための基礎知識を身に付けて、自分の体調に合わせ、無理なく登頂を目指しましょう。
目次
富士山に登る前の基礎知識
毎夏、約25万人が富士山に登ります。大勢の登山者が頂上を目指します。富士山頂上のご来光などの風景は、日本の夏の風物詩としてすっかり定着しています。
でも、富士山はよく知っていても、いざ登ろうかと思うと、なにかと未知数が多く、不安もあります。雑誌やネットでは登頂した人の情報や経験が溢れていますがさまざまです。
歩けば必ず登頂できる方法はありませんが、ラクして登る知識やコツやあります。そこで、最初に富士登山に登る前に身に付けた方が良い超基本的な知識を説明していきます。
富士山の標高は3,776m
富士山の標高は3,776mです。富士山頂の剣ヶ峰に設置された三角点は3775.5m、その少し北側にある岩が3776.2m。どちらも四捨五入すれば3,776mとなります。
ちなみに2位は北岳3,193m、3位は奥穂高岳、間ノ岳で、ともに3,190m。2位との差は583m。富士山は日本一、それも群を抜いて高い山です。
コース標高差は1,471m
富士山の主要登山道のひとつ。吉田ルートのスタート地点となる富士スバルライン五合目は、標高2,305m。富士山頂との標高差は1,471m。富士登山では、この標高差を歩いて登り・下りをします。日頃、運動をしない人にとって、富士登山は思っている以上に過酷です。
コースタイムは11時間35分
吉田ルートのコースタイムは、登り6時間25分、お鉢めぐり(山頂一周)1時間20分、下り3時間50分、合計11時間35分になります。コースタイムとは歩行時間のみなので、休憩を含めると、実際の行動時間は14時間前後になります。
最低気温2.4℃ 最高気温9.3℃
富士山頂の7〜8月の平均気温は、最低2.4℃、最高9.3℃です。これは東京や大阪の都市部の真冬並の気温です。山の気温は、標高が1,000m上がるごとに約6℃低下します。風があると、体感温度はさらに下がるので、氷点下並に感じます。
富士登山の期間 いつからいつまで
富士登山の期間は、一般的に7月1日の山開きから8月下旬までとされています。9月以降は気温も下がってきますので、初心者にとっては厳しい時期になります。
また、山開きを迎えても7月中旬頃までは残雪があることもあり、登山ルートによっては通行止めになっていることもあります。
7月中旬の梅雨明けから8月下旬までが天候も比較的安定していることが多く、この時期がベストシーズンと言えます。8月下旬までの間は、ほとんどの山小屋が営業をしているので多くの登山客で賑わいます。山小屋では、宿泊はもちろん、飲料や軽食の購入も可能です。
7月の終わり頃から週末は混雑し、特に8月上旬から中旬、お盆の時期は平日も混雑することが多く、登山ルートによっては、登山客が列をなすことも見受けられます。
富士山頂への4大ルート 吉田ルートが人気
交通機関で行ける五合目から富士山頂をめざす登山道は4つあります。
吉田ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートが4大登頂ルートになります。登山口となった山麓の地名を冠し、吉田口、須走口といった名でも呼ばれてきた登山道です。
各ルートは、スタート地点となる五合目の標高をはじめ、五合目から頂上までの標高差と往復の距離に差があります。また、登山中に見る風景にも特徴があります。同じ富士山でも、ルートによって富士登山のイメージが変わってきます。
ここでは各ルートの特徴をざっくり紹介していきます。
コース距離 | 17.4km |
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標高差 | 1471m |
コースタイム | 合計:11時間35分 ・登り:6時間25分 ・下り:3時間50分 ・お鉢巡り:1時間20分 |
1シーズンの登山者数 | 約15万4000人 (1日当たり:平日2000人 休日約3200人) |
ルートの特徴 | ・江戸時代から最も歩かれている登山道 ・主に首都圏からのアクセスが便利 ・宿泊・休憩の拠点となる山小屋が多い ・七合目と八合目に救護所がある ・下りは、登りとは別の下山道を利用 |
コース距離 | 16.1km |
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標高差 | 1806m |
コースタイム | 合計:12時間 ・登り:7時間 ・下り:3時間40分 ・お鉢巡り:1時間20分 |
1シーズンの登山者数 | 約2万2000人 (1日当たり:平日約290人 休日約580人) |
ルートの特徴 | ・七合目近くまで樹木が見られ、緑が豊か ・往復の距離は、富士宮ルートに次いで短い ・下山道に砂走り、景観の変化に富む ・東面に登るので、ご来光をよく望める ・要所に山小屋があり、行程も組みやすい |
コース距離 | 20.8km |
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標高差 | 2336m |
コースタイム | 合計:14時間5分 ・登り:8時間15分 ・下り:4時間30分 ・お鉢巡り:1時間20分 |
1シーズンの登山者数 | 約1万6000人 (1日当たり:平日約260人 休日約480人) |
ルートの特徴 | ・距離・標高差ともに群を抜くロングルート ・登山経験者向き、混雑することが少ない ・登山口近くと七合目の中間・上部に山小屋 ・下山道に大砂走り、豪快さを味わえる ・規制がなく登山口までマイカーでいける |
コース距離 | 12.2km |
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標高差 | 1386m |
コースタイム | 合計:10時間55分 ・登り:5時間45分 ・下り:3時間50分 ・お鉢巡り:1時間20分 |
1シーズンの登山者数 | 約6万1000人 (1日当たり:平日約840人 休日約1700人) |
ルートの特徴 | ・標高約2,400mから登る最短ルート ・傾斜が強いが、爽快なロケーション ・合目ごとに山小屋、行程を計画しやすい ・登り下りが同じで、道に迷う心配が少ない ・東海道新幹線利用のアクセスが便利 |
富士登山の行程 1泊2日がおすすめ
日程とルートを選んだら、次はどんなスケジュールで登るか、行程を検討しよう。
富士登山の行程は、山小屋を利用した1泊2日が標準です。以前は、事前に休憩をとらず、五合目から徹夜で登り、ご来光を拝んで下山する弾丸登山も行われていました。現在、自粛するよう呼びかけられ、おすすめしません。
富士山は一気に登ると、息苦しさや吐き気といった高山病の症状が現れやすい。疲労によって、転倒などの危険も高まります。山小屋に泊まり、ゆっくり登ることで高山病を予防し、無事に登頂、下山をめざしましょう。
山小屋を利用した1泊2日の行程は、ご来光のタイミングによってスケジュールは大きく3通りあります。日程とルートを考えつつ、どの行程が向いているか、比較検討してみましょう。
1泊2日頂上で御来光コース(平日向き)
1日目の正午前に五合目に到着。休憩をとり、午後からゆっくりと七合目〜八合目付近まで登って山小屋に宿泊。翌日深夜に山小屋を出発して、未明に登頂。頂上で御来光を望み、お鉢めぐりをして、午前中に下山する。ただし、頂上手前は夜明け前に非常に混雑しやすく、安全を考えれば、平日向きの行程といえる。
体力度 | ★★☆ |
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ゆとり | ★☆☆ |
行程 | 山小屋のある七合目か八合目 → 山小屋で仮眠をとる → 翌朝(未明)に登頂、ご来光を拝む → お鉢めぐり → 下山 |
1泊2日山小屋で御来光(週末向き)
1泊2日の行程でも、頂上で御来光を望むには、山小屋での滞在は休憩・仮眠程度。また週末は、頂上手前で行列ができるほど混雑することがある。そこで、宿泊した山小屋でしっかり睡眠をとり、山小屋の前で御来光を望んでから頂上をめざす。御来光後は、頂上手前の行列も次第に解消され、混雑のストレスなく登れる。
体力度 | ★★☆ |
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ゆとり | ★★★ |
行程 | 山小屋のある七合目か八合目 →山小屋で睡眠をとる →翌朝、山小屋前でご来光を拝む →頂上へ →下山 |
富士登山の無理のない準備と計画
富士登山の成功には、登山前にやることや必要な装備などプランニングが欠かせません。
まず最初は体力づくりから始めたい。普段まったく体を動かさない人は、当日はもちろん、下山後の疲労や筋肉痛もかなりハードです。なるべく体力づくりをしておきたい。
山小屋や交通機関は基本的に予約が必要になります。日程が決まったらすぐに予約をとりましょう。もし登山経験がなければ、ツアー利用も検討してもいいです。
また、富士登山は、体調不良やケガなどのリスクが登山では高くなります。事前に、同行者全員でよく話して、登山計画書を作成しておきたい。最近では、Webで作成して提出できるサービスもあります。
期間 | メニュー | 説明 |
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〜3ヶ月前 | 体力づくり | 富士登山に必要不可欠なものは体力。毎日コツコツとトレーニングして、登頂を目指しましょう。 |
〜1ヶ月前 | 装備を購入する | 登山用品店に行って、必要な装備を店員さんに相談しながら選んでみよう。特にバックパックや登山靴などは必ず試着してから購入したい |
コースの計画を立てる | どのルートで、どの小屋に泊まるのか、何時に出発するのかなど、具体的に計画を立ててみよう。 | |
山小屋を予約する | コースと日程が決まったら、山小屋に電話やHPから予約をしよう。山小屋のキャンセル規定も確認すること。 | |
練習登山に行く | 余裕があれば、近場の山へ練習登山に行ってみよう。このとき、標高2000m程度の山へ行くと、富士山での高所順応も少しスムーズ | |
〜1週間前 | 登山計画書を用意する | 確認のためにも、最低限の情報をまとめた計画書を用意し、同行者とも共有しよう。必要な情報は、行程(コース、宿泊する山小屋、下山時刻)、自分と同行者の氏名、緊急連絡先、血液型、生年月日、山小屋の連絡先。計画書はコンパスなどWebで作成して提出することができる。 |
荷造りをする | 1週間前に一度荷造りをしてみることで、買い足しが必要な装備があっても慌てずにすむ。 | |
天気予報の確認 | 1週間前に台風が近づいているなど、明らかに悪ければ予定の延期をこの時点で検討。山小屋へのキャンセルなどの手配も行う。 | |
〜前日 | 最終確認 | 装備や移動手段、天気予報のチェックをしたら、早く寝て明日へ備える。お酒は控えよう。お米などの炭水化物をとってエネルギーを充填するのもいい。 |
富士登山に必要な装備・持ち物は、以下記事に詳しくまとめています。必要な装備・服装などが分からない人はこちら記事もチェックしてみてください。
高山のリスク 高山病と低体温症の予防・対処法
富士山で誰もが心配するのは高山病です。そして、もうひとつ、気をつけてほしいリスクは低体温症です。登る前に、予防・対処方法を知って安全に楽しく登りましょう。
高山病について
標高が上がると、気圧が下がり、空気が薄くなる。高山病は、体内の酸素が減ることで生じる頭痛などの不調。富士山では常に注意が必要になります。
高山病にならないためのポイントは、五合目で2時間程度過ごし高度順応することです。
吉田口は五合目で標高2300m以上。2時間ほど過ごして体を高所に慣らそう。救護所では体内の酸素量を確認できる。また、眠ると呼吸が浅くなるので、山小屋に着いて即昼寝はNGです。
高山病の症状
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 生あくび
高山病の予防・対処法
- ゆっくりに登る
いきなり高度を上げてしまうと、症状が出やすい。ゆっくり登って、体を高所に慣らす。おしゃべりしながら歩くことも、呼吸を促す。 - 水分をとる
酸素を体にめぐらせているのは血液です。水分不足になると、血液が悪くなってしまう。小まめにな水分補給を心がけよう。 - 深く呼吸をする 意識して呼吸をし、酸素を取り込もう。口をすぼめて、3秒かけて長く息を吐くことで、自然にたくさん酸素を取り込める。
- 生あくび
低体温症について
体温が低下することで起きる低体温症。初期症状は体の震えなどだが、重症化すると命の危険もある。気温が低く、風が強い富士山では注意が必要です。
低体温症にならないためのポイントは、雨と風に警戒することです。
ご来光を待つ間は動かないので体が冷えていきます。7〜8月の富士山山頂は約2〜9度で、独立峰のため風も強い。ダウンのほかに、風を防ぐレインウェアも身につけましょう。
低体温症の症状
- 体が震える
- 眠くなる
- 意識がもうろうとする
低体温症の予防・対処法
- 体を冷やさない
基本は体を冷やさないこと。雨や汗で濡れた服は体温を奪うので、乾いたものに着替え、休憩中はダウンなどで防寒しよう。 - 行動食を食べる
おにぎりなど、すぐにエネルギーになる糖質を口にすることで、体を中から温める。温かい飲み物は脱水も防止できる。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。