富士登山のボディを作るトレーニング方法 練習登山でおすすめの山も紹介

富士登山のボディを作るトレーニング方法 練習登山でおすすめの山も紹介

富士登山で、実際にどれぐらいの体力が必要か

富士山は、特別な技術や圧倒的な体力がなくても登ることができるが、長時間歩き続け3000m以上の山を目指すのは、決してラクでも簡単ではありません。では、実際にどれぐらいの体力が必要なのか、どんな筋力を鍛えれば、無理なくバテずに登れるのか。

富士登山では、7kgぐらいの荷物を背負い、低酸素の高山を2日間でおよそ標高差1500mを登って下ります。運動の負荷としては、スローペースのジョギング程度。

ただ、2日間で合計10時間以上も歩き続けます。いくらスローペースとジョギングといっても、10時間以上も登れば、確実にフルマラソンと同じぐらいの体力が必要になります。

フルマラソンと聞くと、体力に自信のない登山初心者は、きついと感じるかもしれませんが、登山は行動中に休憩や小休憩、山小屋での仮眠が出来ます。消費したカロリーも山小屋の食事や行動食などで補うことができます。

富士登山では、体力を回復しながら行動ができるし、登る前にトレーニングをして準備しておけば、誰でも登頂を目指せます。

まずトレーニングする前に 登山で重要な筋力やトレーニングの基本

富士登山は荷物を背負って長時間歩き続けます。五合目から登った場合、山頂までの標高差は約1300mで、小屋泊まりの場合、荷物の重さは約7kgになります。

誰でも登れると思われがちだが、富士登山は決して簡単でもラクではありません。登山に必要となる筋力や全身持久力を身につけ、快適に富士登山を楽しむためにも、事前のトレーニングは必要になります。

筋力・体力アップはもちろんだが、富士山に登るモチベーションも高められます。

登山で主に使われる筋肉は、毎日少しずつ鍛えていきましょう。ポイントは、生活のなかに無理なく取り入れることです。

たとえば三度の食事のとき、席に着く前にスクワットを10回行う。風呂上がりにブランクを行ない、夜寝る前に深呼吸ストレッチなど、日常で必ず行う行動と併せてトレーニングするのがおすすめ。

筋力トレーニングは回数を多くこなすより、回数が少なくてもよいので正しい姿勢、手順で行うことが重要です。毎日やっているうちに、ラクにできるようになってきたと思ったら回数を増やしていきましょう。

登山で重要な役割をする筋肉
筋肉の名称説明
腹筋(腹横筋)体の深部にあり、両脇に沿っているのが腹横筋。背筋とともに姿勢の維持に重要。
腸腰筋(ちょうようきん)体幹と太ももをつなぐ股関節周辺の筋肉。脚を上げる動作で使われる。
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)太ももの表側の筋肉。登山の主力となる筋肉で、上りでも下りでも使う。
下腿三頭筋(かたいさんとうきん)ふくらはぎの筋肉。段差のある斜面や急斜面を登るときに使われる。
僧帽筋(そうぼうきん)首から背中の表側の筋肉。肩の筋肉を持ち上げる役目を果たす。
背筋背中の筋肉の総称。腹筋とともに姿勢の維持に重要な動きをする。
大臀筋(だいでんきん)お尻の表側にある大きな筋肉。お尻につく筋肉のなかで最も大きい。
ハムストリングスお尻からひざの裏側に伸びる、太ももの裏側の筋肉。

富士登山のボディを作るトレーニング方法

呼吸筋トレーニング|呼吸で使う筋肉を伸ばし、酸素の摂取量アップ

標高の高い富士山では、酸素を効率的に取り込むことが重要です。ザックを背負って歩き続けると、呼吸時に使われる胸郭などの筋肉が疲労で硬くなりやすい。呼吸筋のストレッチを続けることにより、胸郭が広がりやすくなり、登山でもしっかり酸素を取り込み歩き続けることができます。

深く大きく呼吸をしながら、あばらやおなかの動きを意識しましょう。風呂上がりや寝る前、朝起きたとき、いつ行ってもよい。

胸式呼吸

胸郭を広げることで肺に空気を送る呼吸法。ひざを立てて仰向けに寝そべり、みぞおちの横のあばらに手を当てる。ゆっくりと大きく呼吸をし、呼吸によってあばらが動くことを意識する。

腹式呼吸

ひざを立てて仰向けに寝そべり、おなかに手を当てる。息を吸いながらおなかをふくらませ、息を吐きながらおなかをぺちゃんこにへこませる。ときどきみぞおちの横に手を触れ、胸郭が動いていないことをチェック。おなかがふくらむときは横隔膜、へこませるときは腹横筋を使っている。

トレーニングの目安
項目説明
頻度お風呂上がりにすぐ、あるいは夜寝る前に。寝そべるスペースがあればどこでもできる。
回数・時間1日30秒
注意点
  • ・体の力を抜く
  • ・両手を伸ばして頭の上に
  • ・肩甲骨あたりにクッションを置く

フルプランク|体幹強化で歩行時の姿勢を安定

フルプランクは、体幹を鍛えるのに有効なトレーニング。体がぶれずに安定して歩けると脚への負担が少なくなり、転・滑落の予防にもつながります。

前腕を床につけて行うプランクが一般的だが、運動習慣のない人には難しいので、腕を伸ばした状態で手を床につくフルプランクから始めましょう。足のつま先を立て、頭からかかとまでが一直線になるようにキープ。目線は下にして頭を上げないようにします。

正しい姿勢で行うとかなりきついです。腹筋と背筋がバランスよく鍛えられ、体幹強化につながります。

トレーニングの目安
項目説明
頻度週3回
回数・時間1分。正しい姿勢でまずは5秒。無理なくできるようになったら時間を延ばしていく。目標は1分。
注意点
  • ・頭をあげないように
  • ・強くに握らない。てのひらを下にして開いてもよい
  • ・頭からかかとまでまっすぐ一直線
  • ・前腕を床について、ひじが90度になるよう曲げる

スクワット|登山で酷使する下肢を鍛える

スクワットは、特に下山時に使われる、ももの表側の筋肉(大腿四頭筋)を強化するトレーニングです。膝痛の軽減にもつながるのでぜひ行ないたいメニューです。

ポイントは前かがみにならないことと、ひざを曲げたときにひざが前に出すぎないようにすること。足裏全体で地面に踏み、お尻を落としていく。曲げ伸ばしの動作はゆっくり行なうほうが筋力アップに効果があります。ひざは深く曲げる必要はなく、つま先が上がってしまわない位置まで曲げられれば大丈夫です。目安は90度程度。

トレーニングの目安
項目説明
頻度週3回
回数・時間朝昼晩、決まったタイミングに行なう習慣をつけるとよい。まずは10回、目標は30回×3セット
注意点
  • ・手は腰に添える
  • ・脚は肩幅程度に開く
  • ・膝が90度
  • ・お尻を真下へ下ろしていくイメージ
  • ・ひざは爪先より前に出ないように
  • ・ひざの向きとつま先が同じ方向に

持久力トレーニング|ウォーキングに負荷をプラス

ウォーキングは無理なく日常に取り入れられる持久力トレーニングのひとつです。

とはいえ、登山とは運動としての負荷が大きく異なるので、そのままではトレーニングとして充分とは言えません。ウォーキングコースのなかに歩道橋や駅の階段、坂道の上り下りを取り入れるとよい。さらに荷物を詰めたザックを背負ったり、足首にウエイトをつけたりすることで負荷を増やすことができます。

さらに、登山のトレーニングとしてはジョギングや階段昇降などが効果的だが、運動習慣のない登山初心者であればウォーキングから始めよう。

目安は週1回、最低でも60分歩き続けるようにしたい。適切な強度の運動を一定時間続けることで、全身持久力の鍵となる心肺機能を強化できます。

ウォーキング(速歩き)

ウォーキングは登山に必要な歩く力をアップさせるのに最適。背筋を伸ばし、呼吸筋を意識しながら、信号以外では立ち止まらずに2時間連続で歩き続けるように、ペースはやや進め、息が弾んでほんの少しきついと感じる程度で。

ジョギング

ジョギングは登山のトレーニングとして非常に適した有酸素運動。ペースはゆっくり、そのかわり信号以外では立ち止まらずに、一定のペースを守って30分走り続よう。走り終えたときにややきついと感じる程度のペースで良い。

登山とウォーキング・ジョギングの違い
富士登山ウォーキングジョギング
傾斜ありなしなし
行動時間1日7時間×2日1日60〜120分1日30分
荷物の重さ約7kgなしなし
トレーニングの目安
項目説明
頻度週1〜2回
回数・時間
  • ・ウォーキングの場合:60〜120分
  • ・ジョギングの場合:30分
注意点頻度はこだわらず、できるときに行なう。荷物は3〜5kgから始め、目標は富士登山で背負う7kg。

生活の中に取り入れられるトレーニング

階段昇降

階段昇降は山歩きに近いトレーニング。駅やオフィスビルではエスカレーターやエレベーターを使わずに歩いてみよう。あるいは2〜3階手前で降りて階段を使うなども。

一駅歩く

電車で一駅分、あるいはバスの1区間分を歩いてみたり、自転車で移動するところを歩いてみたり。普段、歩き慣れている人なら速歩きを取り入れて歩いてみても。

電車で座らない

電車の揺れに対応することでバランス感覚を養ったり、体幹を鍛えることができます。疲れていて長時間立ち続けるのがつらいときは、目的地手前の駅から一駅だけでも。

富士登山に最も効果的なトレーニング「練習登山のススメ」

毎日のトレーニングと並行して行いたいのが、実際に山を歩く練習登山です。未舗装で傾斜のある登山道を安定して歩く技術は、普段の生活のなかではなかなか身につきません。実際に山を歩くことで自分の体力を知ることができ、登山に慣れることができます。

無理なく快適に歩くための歩き方や、衣服の調整、水分補給などを考えるきっかけにもなります。練習登山は、富士登山に最も効果のあるトレーニングです。

登山経験のない人なら、最低でも2回は練習登山をしておくと安心。低山ハイキングを趣味にしている人も、練習のポイントを押さえて山を歩いてみましょう。

練習登山のポイント

歩くペースを知る

富士登山では、ゆっくり、休まずに歩き続けることが体力を温存し快適に歩くポイントとなり、高山病予防にも有効。息切れせず、仲間と笑顔で会話しながら歩ける、自分のペースを知り、練習登山ではそのペースで歩き続けることを意識しよう。通常の1.2〜1.5倍程度のゆっくりペースで歩くようにしよう。

食料・水分補給を覚える

行動食や水分を適切に体の中に取り入れることが登山では重要。エネルギーや水分の不足はバテや体調不良の原因となる。休憩ごとにこまめに水分や行動食をとる習慣を練習登山で身につけよう。自分に適した食べやすい行動食は何か、いろいろ試してみてもいい。

足の運び方を身につける

ペース配分と同様に重要なのが、小刻みに足を運ぶこと。大股で歩き、段差を大きく踏み込んで乗り越えるより、小股でチビチビと歩くほうが疲れにくい。疲れて注意力が散漫になりがちな下りでは、ひざや腰に負担をかけないよう、しなやかに足を下ろすことを意識。

5〜7kgの荷物の重さに慣れる

通常の日帰り登山では3kg程度の荷物だが、富士登山と同程度の荷物を背負って歩いてみることで重さに慣れます。体にどのくらい負荷がかかるのか、疲れないためのペース配分など、事前に知ることができます。

富士登山の練習にオススメな山

山を歩くことに慣れる「標高差500mの山」

まずは歩行時間3〜4時間程度の低山を歩いて、快適に山を歩くための基本を身につけよう。登山靴を履く、バックパックを背負って歩くなど、登山道具を使い慣れることもポイント。

  • 筑波山(茨城県)標高877m
  • 丹沢・大山(神奈川県)標高1252m
  • 金剛山(大阪府・奈良県)標高1125m

長く歩いて自信をつける「標高差1000mの山」

富士登山では1日の歩行時間が5時間以上になる。標高差のある、歩行時間の長い日帰り登山で、ゆっくり長く歩き続ける技術を身につけよう。自分でペース配分をして登頂できれば自信にもつながる。

  • 大岳山(東京都)標高1267m
  • 塔ノ岳(神奈川県)標高1497m
  • 伊吹山(滋賀県)標高1377m

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てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。