雪や氷、ときによっては岩の上を歩くアイゼン。
ハードに使うものだけに、下山後のケアは確実に行いたい。
しかし、さび防止やプラスチックの劣化チェック、そして、つめ先端部の研ぎ方など、お手入れ・メンテナンス方法を正しく把握している人も多くないはず...
アイゼンは、場合によっては命にかかわる山道具なので、雪山に登る前のチェック、下山後のお手入れ方法は、きちんと身につけておきたい。
そこで、今回、アイゼンのお手入れ・メンテナンス方法を解説します。ここでは、アイゼンのお手入れ・メンテナンスの基本、登る前にチェックしておきたい箇所、下山後のお手入れ方法、つめ先端部の研ぎ方、よく傷みやすい箇所、正しい保管方法、お手入れに必要な道具などをめとめています。
アイゼンのお手入れ・メンテナンスの基本
アイゼンは雪や氷だけでなく、雪まじりの岩稜部を歩いたりします。使うに従ってツメの先が削れ、丸くなってくるので、メンテナンスはここが中心になります。
しかし、やみくもにヤスリで研げばいいというワケではありません。正しい方法で研がなければ逆に耐久性を低下させる結果にもなります。具体的にはツメは側面を研ぐもので、平らな面を研いではいけません。平らな面を研ぐとツメ薄くなってしまうためです。
さらに、ピッケルと同様、アイゼンも素材に合わせた手入れ・メンテナンスが重要です。
昔のアイゼンは金属パーツと革ベルトでできていましたから、素材をあまり気にせず注油を行なっていましたが、最近のアイゼンはプラスチックパーツも増えてきました。浸透性の高い機械油はプラスチックパーツの劣化を早めてしまいます。注油していいところと注油してはいけないところがあり、プラスチックと金属が複合で使われているようなところには浸透性の高い機械油ではなくて、シリコンオイルのような油を使わなくてはいけません。
アイゼンのお手入れ・メンテナンスで重要なポイント
- 使い終わったら、水洗いして泥などの汚れを落とす
- 爪の先が丸まってきたら、やすりで研ぐ
- ツメは適した方法で研ぐ。誤った研ぎは逆効果
- 仕上げは、さび止めスプレーで防錆処理
- 素材に適したケアオイルを使用する
登る前にアイゼンのチェック・お手入れしておきたい箇所
交換パーツはあらかじめ用意しておく
アンチスノープレートやベルトは気がつくと痛んでいることが多い。痛んでいるのを知っていて使用するのはかなり不安です。オプションで用意されているので、痛みに気がついてから発注するのではなく、あらかじめきちんと用意しておこう。
靴に合わせてサイズを調整
アイゼン本体のサイズを登山靴に合わせたあと、バンドを巻いて長さを調整します。靴底とアイゼンがフィットするよう、少しキツめが良い。
グローブを着けて装着の練習
冬山ではグローブを着けたままアイゼンの着脱を行うが、これがなかなか難しい。自宅で装着練習をして、慣れておくことが大切になります。
下山後のアイゼンのお手入れ・メンテナンス方法
水分を拭き取り、ゴミを落とす
すべての道具と同じように肝心なものは水分や汚れを落とすこと。アイゼンは金属パーツが多いので、さびも出やすいです。使用後は乾いた布で水分を完全に拭き取ること。
さびが浮き始めていたら金属ブラシやスチールウールで早めにさび落としをして機械用オイルを塗布します。
まず水洗いして汚れを落とす
汚れが付いているとさびやひび割れもわかりづらい。使い終わったら、まずは水洗いして、付着した泥汚れを落とす。特に爪の部分は念入りに。部品の隙間に泥が詰まっている場合はブラシを使うといい。
ていねいにさびを落とす
さびを発見したら広がらないうちに手入れをする。そのままにしておくとさびが金属内部に浸透し、強度低下につながります。
ジョイント部分は念入りに
ジョイント部分はゴミや汚れが入り込みやすい部分。とくに念入りにクリーニングを行いましょう。
つめ先端部の研ぎ
雪や氷のフィールドでは比較的摩耗が少ないが、岩まじりの場所を歩くとツメが丸くなることは避けられない。現場でのメンテナンスは無理としても、帰ってからはすぐにメンテナンスを行うようにしたい。摩耗した部分からさびが発生することが多いし、ツメの効きにも大きく影響します。
丸まってしまったツメ
摩耗して先端が丸くなってしまったツメ。当然、刺さりも悪い
ツメを研ぐ
金属ヤスリをつかって、できるだけ元の角度と同じように研ぐ
反対側も同様に
逆側も同様に研ぐ。熱による硬度低下を起こすので電動工具は不可
研ぎ上がり
しっかり研ぎ上がった。シリコンオイルでさび止めをして完成
注油は適切に
現在のアイゼンは金属パーツとプラスチックパーツが微妙に入り乱れて使われています。
そのため、素材に適したオイルを使わないと逆効果になってしまいます。金属パーツだけなら機械用オイルで済むのだが、プラスチックパーツに機械用オイルが付くと浸透して劣化を早め、ヒビ割れを起こすこともあります。
アイゼンの傷みやすい箇所
頻繁に曲げを行なったり、金属部分にこすれたりする部分のプラスチックパーツやゴムパーツ、ナイロンパーツは摩耗や劣化がとくに激しいです。
特にベルトの擦れる部分は摩耗しやすいので、使用後はこまかくチェックを行ない、すり減っていると気がついたら即、予備パーツと交換する。あと、登山靴の先端にかける部分は曲げのためにヒビが入りやすい。裏表をこまめにチェックしましょう。
もし個人でのメンテナンスが不可能ならメーカーリペアに出すことが肝心です。
アイゼンの補修方法
自分でできる簡単な補修
金属部分がさびてしまった
ステンレスやアルミはさびにくいが、クロモリはさびやすい。軽いものならば、水洗いのときに布でこすれば落ちる。こすっても落ちなければ、紙やすりで表面を薄く削る。
爪の先端が丸まってきた
爪の先が丸まってきたら、やすりで尖らせる。研ぐときはやすりを先端に向けて一方方向に動かす。電動やすりは金属が熱くなるため、おすすめできません。
さび落としや研磨の後にさび止めを
さび落としたり、研磨したあとは、仕上げにさび止めスプレーの塗布を忘れずに
メーカーに相談すべき補修
プラスチックパーツが破損した場合、個人では直せません。バンドを通すプラスチックパーツや、かかとのビンディングシステムが壊れたら、メーカーに修正を出しましょう。
アイゼンの正しい保管方法
アイゼンのケアが終わったら、専用ケースに収納して保管しましょう。アイゼンの爪は鋭く尖っているため、そのまま収納すると、ほかの道具を傷つけてしまいます。必ず専用のケースに入れて保管することが大切です。
アイゼンのお手入れ・メンテナンスに必要な道具
スチールウールとブラシはさびや汚れを落とすために使用。機械用オイルは金属パーツのさび止めと固着防止に、シリコンオイルはプラスチックパーツおよび金属とプラスチックの複合部分に使用します。ドライバーはアンチスノープレートの交換に使用。ヤスリはツメの摩耗を研ぎ出すメンテナンスに使用します。
- 棒ヤスリ・紙やすり
- 機械用オイル
- シリコンオイル
- スチールウール
- ブラシ
- ドライバー
- タオルなど
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。