登山用ゲイターの種類・選び方 無雪期・積雪期の用途で使い分ける

登山用ゲイターの種類・選び方 無雪期・積雪期の用途で使い分ける

登山靴の上部に巻きつけて使用する山道具がゲイター

雨や雪の侵入を防ぎ、小石が内部に入り込むこともなく、山では有用なアイテム。

しかし用途によってタイプが数種あり、機能的な使い分けをしないと、ゲイターの性能が効果的に発揮されません。

そこで、今回、登山用ゲイターの種類・選び方を紹介します。登山用ゲイターの役割をはじめ、種類、選び方のポイント、丈の長さによる特徴、正しい装着方法などを解説しています。

登山をサポートするゲイターの魅力とは

ゲイターとは、登山中ズボンと靴の上にかけるカバーです。

ゲイターには足の裾から靴にかけてカバーするショートタイプのものと膝下から靴にかけてカバーするロングタイプがあります。ショートタイプのものは、軽いハイキングや夏の登山に使用され、ロングタイプは冬の登山や雪山に使用されます。

ゲイターがあれば、険しい地形や厳しい天候に見舞われても、快適に歩くことができます。

夏山では、雨、露、小石、枝、泥などから足を保護し、冬山では雪の侵入や寒さに悩まされることがありません。異物の侵入や汚れからの保護し、常に足元を快適にしてくれます。

登山用ゲイターの役割とは

  • 雨や雪が靴の中に入り、体温を低下させるのを防ぐ
  • 泥濘でズボンの裾が汚れるのを防ぐ
  • 特に下山中に小石などが靴の中に入るのを防ぐ

登山用ゲイターの種類 用途で選ぶ3つのタイプ

ゲイターを選ぶ際、山の状況や目的によってセレクトする必要があります。

登山用ゲイターの主目的は「雨」と「雪」の水分のの侵入防止です。他にも歩行中に小石や下草が登山靴の内部に入ることを防ぐ働きもあり、多目的に使えます。 だが、重要なのは、雨と雪への対応であり、ゲイターの各部の工夫も、無雪期の雨が中心か、積雪期の雪が中心かで異なってきます。

雨は、基本的には上から降ってくるものであり、体の表面を流れて生地伝いに浸透しやすいです。

それに対して、雪は、雨と同様に上から降ってくるものではあるが、寒冷な雪山では個体として表面に付着しても解けはせず、浸透してくることは少ないです。しかし地面に積もった雪は、雪面を足で踏み抜いたり、歩行中に巻き上げたりして、登山靴の内部に入り込みます。

つまり、上から降り注ぐ雨を防ぐ目的か、下に積もる雪を防ぐ目的かで、ゲイターのタイプは大別されます。その違いを理解し、自分の目的に合うゲイターのタイプを選ぶことが、快適な山行につながっていきます。

無雪期向けのゲイタータイプ

無雪期向けのゲイターは降雨時に取り出して着用するものなので、携行性が高い薄手で軽量なものが有用です。

暴風雨ともなると上下左右から降り注ぐ雨から足元を守るには、積雪期よりも防水性が高いゲイターが必要になります。着脱に面ファスナーよりも、水が侵入しにくい一般的なファスナーを使ったものが多く、さらにフラップで2重になっていたり、止水性のファスナーを採用しているモデルも多い。無雪期は積雪期よりも丈夫さは必要ではないために素材は薄手で、携行性のよさや軽量性を重視している。

積雪期向けのゲイタータイプ

積雪期向けは常に着用して行動することが前提であり、アイゼンやスノーシューを登山靴に装着することもあるため、重量よりも強度が重視されます。

寒冷な時期の雪は、体温が伝わりにくい足元ではあまり解けない。そのため着脱に使うパーツにはそれほど止水性を重視せず、雨ならば水が浸透してきてしまう面ファスナーも多様されます。これはただ張り合わせるだけなので雪が固着しても外しやすく、グローブをした手でもラクに扱えます。素材はアイゼン類が引っかかっても破れにくく、凍りついた雪や氷にも耐えうる強靭なものが使われる、各パーツも強度が高い。

トレイルランニング向けのゲイタータイプ

トレイルランニング人気の定着とともに、専用ゲイターの種類も増えている。スポーツとしての性質上、防水性には目をつむり、小石などの異物がシューズ内へ侵入するのを防ぐことが主目的。その代わり軽量。シチュエーションによって山歩きにも応用可能です。

登山用ゲイターの選び方 異物侵入の防御力と安全性が重要

ゲイターは、シンプルな形状でもいくつもの機能を備えているため、山中で効果を発揮する素材やパーツが重要になります。

ゲイターは着脱が面倒な装備です。トレッキング登山靴のソールの下にストラップやコードをまわし、ファスナーを引き上げてからフックを登山靴のヒモにかける。作業すればそれほど複雑なものではないが、各部をしっかりとフィットさせなければゲイターの性能は発揮されないため、入念に調整する必要があります。

フィット感を得やすいのは、面ファスナーを使ったものです。一般的にベルクロなどの名称で知られる着脱の仕組みである。ただ両面を貼り付けるだけで締め付け感を調整できるので、どんな登山靴や足の形状でも過不足なく合わせられる。

ただし、面ファスナーは完全に密着するわけではなく、隙間から水が浸透してきます。そのため、無雪期の雨にはそれほど強くなく、積雪期のほうが向いています。

一方、一般的なファスナーは両サイドの歯を合わせる場所が固定されているため、面ファスナーのように自在に調整はできません。ゴムなどの伸縮性の素材を用い、要所をフィットさせるように工夫はされているが、本当に適切なフィット感を得るには、購入時から正しいサイズを選ばねばならない。だが、面ファスナーよりも水が浸透してくる量は少なく、とくに止水性ファスナーや水が遮断するフラップを併用したものは雨に強くなっています。

しかし、フィット感が高いということは、内部と外部の通気が少なくなるということでもある。湿気がたまれば、登山靴の内部のコンディションは悪化していく。その問題に対応するため、多くのゲイターにはゴアテックスをはじめとする透湿防水性素材が使われる。

着脱のしやすさ

基本、山岳用ゲイターの着脱システムは一般的ファスナーと面ファスナーの2種類に分けられます。無雪期用に多いのがファスナーで、止水タイプの採用やフラップとの併用などによって防水性が高いです。対して、積雪期用は面ファスナーがメインとなり、グローブをしていても着脱が用意で、フィット感も高い。ファスナーよりも少々重くてかさばり、水も浸透しやすいが、雪が解けて液体になりにくい寒冷な山では充分対応できます。

ゲイター上部・中央部でのフィット感

快適な着用感を得るには、ゲイターを適度にフィットさせる必要があります。そのため、ゲイターの上部や中央部には伸縮性のドローコードやストラップが付きます。自分の脚部の太さや着用しているパンツに合わせ、調整して使用したいです。

防水性や伸縮性を備えた素材

ゲイターの主目的が雨や雪の侵入を防ぎ、登山靴の内部をドライに保つことにあるだけに、素材の防水性は重要な機能になります。

表面に付着するだけの凍りついた雪であればまだしも、じんわり染み込んでくる液体の雨には、とくに大切です。同時に内部の湿気を逃すために透湿性や通気性も忘れてはいけません。また、ゲイターは行動中にもっとも動く脚に巻きつけるものであるため、積雪期用はアイゼンに触れる恐れがあり、擦れにも強い強靭な素材が求められます。伸縮性の素材を使用し、フィット感を高めたモデルもあります。

登山靴に対する滑り止め

大半のゲイターには登山靴のソールにまわして固定するストラップが付属します。だが、それだけではずり上がることもあります。特に、伸縮性のゴムを使ったモデルは注意が必要で、一部のゲイターには滑り止めが付いているタイプもあります。

要所に施された補強

ゲイターを着用して歩いていると、どうしても足の内側や後部が登山靴やアイゼンとすれ、次第に傷んできます。ハードな使用が想定される積雪期用を中心に、それらの箇所を保護する素材を部分的に配置したタイプも多数開発されている。

登山用ゲイターの丈の長さ 登山靴の相性とフィット感も大切に

ゲイターを快適に使うには、丈の長さやフィット感が大切です。登山靴との相性も考え、ディテールもチェックしたい。

春から秋にかけての無雪期用に使うゲイターの主目的は、雨への対応です。小石などの侵入を防止する役目もあるとはいえ、降雨時以外は使わないことが多く、バックパック内部にしまっておく時間が長い。そのため、コンパクトに収集できるものが便利。

ゲイターの丈にはロング、セミロング、ショートなどが揃い、用途によって選べます。防水性を重視するなら脚を覆う面積が広いロングだが、収納時はかさばる。その点、登山靴だけを覆うショートタイプは防水性では劣るが、折りたためば非常に小さくなります。

しかし、ショートタイプは合わせるレインパンツの丈が短いと脚が外部に露出してしまう恐れもあり、どちらを選ぶかは人それぞれです。

必要に合わせて選ぶ丈の長さ

ゲイターには、いくつかの丈の長さのバリエーションがあります。とくに雨対策を主にした無雪期用には、ロング、セミロング、ショートなどが用意されています。長いものほど防水性は高いが、携行性の問題もあり、どの長さを選ぶかはパンツやレインウェア、登山靴とのコンビネーションや使う人の好みや考え方で異なってきます。

登山靴とのフィット感の調整

水分を効果的に防御し、登山靴の内部をドライに保つには、ゲイターが登山靴の上で浮かないようにフィットさせるひつようがあります。無雪期用には伸縮性が高くてフィット感を得やすいゴムが多く使われ、積雪期用は強度が高いストラップが中心です。いずれにせよ、大きすぎたり小さすぎたりすると調整しきれないので、適したサイズを選びたい。

靴ひもの汚れ防止と保護

現在の山岳用登山靴の内部には袋状の透湿防水素材が使われ、靴ひもの部分から水分が侵入してくることは少ない。だが靴ひもの汚れが気になる人や古いタイプの登山靴を使用している人は、前方にまでひさし状のカバーがついているタイプを選ぶとよい。また、ヤブの多い山を歩く際に着用すると、靴ひもが引っかかる心配を軽減できます。

コードの強度とパーツ交換

登山靴のソール裏にまわし、ゲイターを固定するコードは傷みやすい。とくにゴム製はすぐに切れてしまいます。一部の高強度のストラップを採用したモデルには完全に接着されて交換不能なものがありますが、多くのモデルは簡単に新しいパーツに付け替えられます。丈夫なコードでも切断は免れないので、傷みが目立ったら早めに交換しておきたいです。

登山用ゲイターの正しい装着方法と効果的な使用

単純に巻きつけるだけでは、ゲイターの性能は発揮されないので、実用的で理にかなった着用方法を身につけておきましょう。

ゲイターは必ずしも山中で不可欠な装備とはいえません。

しかし、悪天候時の雨、寒冷期の雪はもちろんのこと、好天時でもガレ場では小石や砂、ヤブの中では小枝や土の侵入を防いでくれる便利な存在です。海外では素足で歩く際に下草で肌を痛めないように装着することもあり、さまざまな場面での活躍が期待できます。

だが、いつも装着しておくべきものではありません。常に脚に巻いて山を歩く人もいますが、不要な場面で使用を続けると汗によって内部に蒸れがたまったり、湿った登山靴が乾燥しにくくなったりします。ゲイターの着用がむしろ登山靴の内部の不快感の原因にもなるので、必要時以外は巻かないほうがコンディションが向上し、見た目もスマートです。

着用の際に気をつけたいのは、登山靴に合うサイズを選んだうえで、コード類の微調整を行なってきちんとフィットさせることだ。雨や雪がどの方向から侵入してくるかを合理的に考え、レインパンツや登山靴とのコンビネーションを考えます。ゲイターは傷みやすい装備でもあるが、小さな破れならば裏面にダクトテープなどを張れば、急場はしのげます。

ゲイターの装着方法 パンツの内側・外側か

レインパンツの外側にゲイターを巻きつけている登山者は多いです。雪面を踏み抜く恐れが高く、蹴り上げた雪が登山靴の内部に入りがちな積雪期の装着方法を真似たものになります。人によってはレインパンツが泥で汚れるのを嫌ったり、裾のたるみが気になるためでもあろうが、効果的に雨へ対応する方法ではありません。水が上から下へ流れてゲイター内に侵入することを考えると、無雪期は内側に着用するのをおすすめします。

登山靴とゲイターのフィット感を調整する

ふくらはぎや足首といった柔らかい上部に比べ、下部の硬い登山靴はゲイターとのフィット感を調整しにくい。

しかし、確実に合わせないと異物が入る原因になります。中でも雪上を歩行中は隙間から押し上げられた雪が、登山靴の内部に入り込みががちなので、きつすぎず、緩すぎもしないフィット感に微調整を行いたいです。

登山靴のソール下のコードを調整し、適度なフィット感に。隙間が少なくなり、ほとんど雪が入ってこないように調整します。アイゼンなどが引っかかる心配も少なくなります。

登山靴に対して大きすぎるゲイターは、フックを靴ひもにかけることすらできず、大きく隙間が開く。機能が発揮されないので、1サイズ下に買い換えるべきです。

前方のフックを靴ひもに必ずかける

ゲイターの装着時にもっとも多い間違いは、前後を反対に取り付けてしまうこと。ゲイターのファスナーや面ファスナーはモデルによってフロント、バック、サイドとさまざまな面に付いているが、フックは必ず前についているので、目印になります。

靴ひもにかけないとフィット感が激減するので注意したい。前方のフックが靴ひもから外れている状態になっていると、ゲイターがずり上がります。こうなるとコードの長さがしっかり調整してあっても無駄になってしまいます。

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てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。