富士山の登山ルート・モデルコース!おすすめルートと特長を比較

富士山の登山ルート・モデルコース!おすすめルートと特長を比較

富士山の山頂へのルートは、吉田、須走、富士宮、御殿場ルートの主に4つです。

ルートによって、高度差や距離、コースタイムなど特徴が異なります。日本最高峰の富士山の登頂を成功させるには、各ルートの特徴を把握し、自分に合ったルート選びをすることが大切です。無理のないプランニングがカギになります。

そこで、今回、富士山の登山ルートの選び方・特徴を解説します。自分に合ったルート選びのポイントをはじめ、各ルートの特徴の説明(登山時間・距離・難易度など)、おすすめのモデルコースなどをまとめています。

富士登山のルート選びのポイント

まず、吉田、須走、富士宮、御殿場ルートの説明をする前に、自分に合ったルート選びのポイントを紹介していきます。登山ルートを選ぶ前に、4大ルートの違いは何なのか、ぞれぞれのルートの特徴を知っておきましょう。

初めての富士登山は、吉田口・富士宮の2ルート

初めての富士登山に向いたルートといえば、アクセスもよく山小屋が4ルート中で最も多い吉田ルートがおすすめ。山小屋は、宿泊先としてだけでなく、緊急避難所としての役割も果たす心強い存在です。

同じくアクセスが良く、富士山の最高点・剣ヶ峰への最短路である富士宮ルートも初めて向きです。両ルートとも最盛期に医師が常駐する救護所を備えているので、もしもの時の安心。

吉田ルートは、鉄道では富士急行線・中央本線、車では中央自動車道利用で都心からのアクセスがよく、関東圏を中心とした登山道が多い。一方、東海道本線や東名高速道路側に位置する富士宮ルートは、東海地方や関西圏からアプローチしやすいです。

混雑緩和なら須走ルート。下部の緑も楽しめます。

須走ルートは、五合目から六合目付近まで樹林や低灌木の緑を楽しめ、かつ富士山ならではのスピーディで爽快な下山道、砂走りを楽しめます。

富士登山の面白味がバランスよく盛り込まれた好ルートですが、吉田・富士宮の2ルートと比較すると登山起点の標高が300〜400m低いです。つまり、登りが1時間ほど長くなります。長距離を歩く体力と計画ができれば、吉田ルートに合流するまでは比較的空いているので、初めての富士登山ルートとしてもおすすめです。

初めての富士登山であれば吉田、富士宮に須走を加えた3ルートから選択するのが無難です。

中級・健脚なら御殿場ルート。再訪向きのじっくり登山

登下降の高度差や距離、コースタイムが他3ルートと比べて長いのが御殿場ルートです。

山小屋の数も少ないので、悪天候時や体調不良時を考えると、富士登山に慣れていない人には難しいルートになります。

しかし、山頂に立った時の充足感と富士山の大きさを実感できるのが御殿場ルートの魅力。富士登山ならではの醍醐味といえる大砂走り下山道の存在が御殿場ルートの価値を高めます。登りの苦労に反し、足への衝撃も少なくスピーディな下山ができ、下山の所要時間は他ルートとさほど変わりません。将来的には登ってみたい魅力的なルート。

しかし、五合目上の大石茶屋を発つと、次の営業小屋は七合目四勺までありません。休憩・宿泊を期待できる山小屋までは、休憩込みで6〜7時間ほどかかります。足に不安があれば、山麓や新五合目上の大石茶屋などに前泊して早発ちするといい。

下山道としてベストチョイスは御殿場・大砂走り

御殿場ルートに魅力を感じつつも日程や体力に不安がある人は、下山だけを御殿場ルートにとり、大砂走りを味わうのもおすすめです。

下り着いた御殿場口新五合目からは、富士宮口五合目へのバス路線上にある水ヶ塚公園行きのバス便があります。水ヶ塚公園はマイカー規制時のシャトルバスやタクシーの乗り換え駐車場でもあり、マイカー利用の場合には、富士宮ルートとの相性が良いです。

近年、人気の高いプリンスルート

初めての富士登山なら、同じルートを登り下りしたほうが、計画を立てやすく道を誤る不安も少ないが、2度目、3度目ならルートを組み合わせると景観の変化を楽しめます。

そのひとつが、御殿場ルートの短縮路として人気の高いプリンスルートになります。

富士宮口五合目を起点に六合目から宝永第一火口〜宝永山馬の背を越えて御殿場ルートへと横断、同ルートをたどるというもの。登山者がさほど多くなく、宝永火口越えや大砂走り下山など、変化に富んだルートのため、近年はこれをたどる登山者も多くなっています。

ちなみに、2008年夏に当時の皇太子殿下が登られたことから、プリンスルート呼ばれています。

御来光を楽しむためのルート選び

富士登山は、山上で迎える日の出、御来光を楽しむ人は多いです。御来光の時間に合わせて、ヘッドランプの灯りを頼りに、夜間や夜明け前の登山が行われているのも富士山ならではの風景です。

山頂部であれば各ルートの頂上付近で御来光が拝めるが、登山ルート上となると東面に位置するルートが良い。

吉田ルートの場合、六合目以上であればどの位置でも可能。真東に位置する須走ルートは、五合目から六合目付近を覆う樹林から低灌木帯を抜ければどこからでも御来光が仰げる。

同じく東寄りに位置する御殿場ルートも、標高1440mの新五合目付近から開放的な火山荒原が広がり、御来光には恵まれています。ただし八合目から山頂間のルートは、大きな窪み状をたどることになるので、御来光ポイントとは言えません。

南面に位置する富士宮ルートは、御来光はやや不利になります。時期によって異なるが、御来光の楽しみは新七合目付近から九合目五勺くらいまで。山頂直下は東側の山稜に遮られてしまいます。富士宮口山頂であれば、駒ヶ岳付近が御来光ポイントです。

マイカー登山とマイカー規制

各ルートの登山口となる五合目、新五合目に無料駐車場が完備されています。

だが、近年の富士登山シーズン中の五合目周辺の観光客の増加と登山者の集中による渋滞緩和、そして自然環境の保全を目的に、マイカー規制が強化されています。現在、吉田(富士スバルライン五合目)、富士宮、須走の3登山口は、ほぼ開山期間に準じて規制が実施されています。

対象となる道路は、吉田ルートが富士スバルライン、富士宮ルートが富士山スカイライン、須走ルートがふじあざみラインで、いずれも五合目まで規制されます。規制期間は例年、7月10日前後〜9月10日前後の約2ヶ月となっている。

唯一、マイカー規制が実施されないのが御殿場口。登山道が他ルートよりも空いており、またマイカー規制きらってないのか、近年、登山者数が増加の傾向にあります。

マイカー規制というと、山麓駐車場でのシャトルバス乗換えはじめ、面倒で窮屈な決まり事の印象が強いが、五合目付近の駐車場渋滞や駐車場探しのロスがないばかりか、意外に山行計画の自由度も高い。

吉田ルートの特長

最も登山者の多い人気ルート。アクセスが便利で山小屋も充実しています。

富士登山者の60%近くが利用する人気ルート。河口湖駅から富士スバルライン五合目(富士山五合目バス停)へのバス便も多く、新宿から五合目への直通バスの運行もあり、交通アクセスのよさが群を抜いている。山小屋の数も4大ルート中では最多で、収容力の大きい山小屋も多いが、それでも夏休み期間の週末やお盆を中心に山小屋は混雑し、登山道は渋滞する。

ルートは、富士スバルライン五合目から河口湖口登山道を行き、六合目で馬返からの吉田口登山道に入る。さらに本八合目で須走ルートと合流して頂上を目指すもの。下山に際しては、八合目で須走ルートと分かれ、吉田ルート下山道へ。八合目の分岐では、必ず道標を確認しよう。

吉田ルート 富士スバルライン五合目〜剣ヶ峰
標高差1471m
距離約17.6km
登り時間7時間
下り時間4時間20分
混み具合★★★
登山者数15万845人
コースタイム富士スバルライン五合目→(50分)→六合目→(1時間)→七合目→(1時間40分)→八合目→(1時間20分)→本八合目→(1時間20分)→吉田口・須走口山頂→(40分)→下山道八合目→(1時間20分)→下山道七合目→(45分)→六合目→(50分)→富士スバルライン五合目

吉田ルートまでの交通・アクセス

交通公共機関の場合

富士スバルライン五合目までは、五合目直通バス、高速バス、登山バス(路線バス)を利用する各種方法があります。

  • 新宿西口から富士山五合目直通の中央高速バス(新宿駅西口から約2時間40分)
  • 新宿駅・東京駅他各地から山中湖・河口湖行き高速バスで河口湖駅下車・駅より登山バス(川口駅から約50分)
  • 名古屋からの直通高速バス「リゾートエクスプレス」で河口湖駅下車、駅より登山バス
  • JR中央線大月駅経由富士急行線河口湖駅下車、駅より登山バス(河口湖駅から約50分)

マイカーの場合

高速道路の中央自動車道河口湖IC、また東富士五湖道路富士吉田ICから「富士スバルライン」(有料)を利用し、新五合目まで行くことができます。

ただし、マイカーの入山規制期間があります(毎年期間が異なる)。

なお、マイカーの入山規制期間中は、東富士五湖道路富士吉田IC付近に設営される山梨県立北麓駐車場に駐車し、そこから富士スバルライン五合目行きのシャトルバスに乗り換えることになります。(駐車場及びシャトルバルは有料)

須走ルートの特長

富士山を真東から登るルート。樹林帯と砂走り下山を楽しめます。

富士山頂に向かって、ほぼ真東から登るルートで、東口、東表口と呼ばれた。登山口の須走口五合目の標高は1970m。吉田、富士宮の各ルートに比べ300〜400mほど低いものの、距離では富士宮ルートについで二番目に短い。森林限界が2700m圏の本六合日付近と高いために、下部は樹林から低灌木帯を抜けていく。砂礫地ばかりでなく、樹林帯の植物も楽しめる。

各合目ごとに山小屋が立つので、行程を組みやすい。吉田ルート合流の本八合目から山頂の間は、混雑を覚悟しなければならない。下山には七合目から砂走り道を有する。御殿場ルートの大砂走りに比べると、露岩混じりの砂走りだが、足にやさしくスピーディな下山が可能。

須走ルート 須走口五合目〜剣ヶ峰
標高差1806m
距離約16km
登り時間6時間
下り時間3時間25分
混み具合★★☆
登山者数2万6696人
コースタイム須走口五合目→(1時間)→新六合目→(30分)→本六合目→(1時間)→七合目→(30分)→本七合目→(30分)→八合目→(20分)→本八合目→(50分)→九合目→(30分)→須走口・吉田口山頂→(40分)→八合目→(30分)→七合目→(50分)→砂払五合目→(40分)→須走口五合目

須走ルートまでの交通・アクセス

公共交通機関の場合

須走口五合目まで、JR御殿場線御殿場駅等から登山バス(路線バス)を利用。
JR御殿場駅下車、駅より登山バス(御殿場駅から約1時間)

小田急線御殿場駅下車、登山バス(新松田駅から約1時間30分)

マイカーの場合

須走口五合目駐車場までは、高速道路東富士五湖道路の須走IC、または東名自動車道御殿場ICから国道138号を経て「ふじあざみライン」(無料)を利用。

ただし、マイカーの入山規制期間中は、「道の駅すばしり」奥の須走多目的広場臨時駐車に駐車し、そこから須走口五合目行きのシャトルバス、またはタクシーに乗り換えることになります(駐車場及びシャトルバス、タクシーは有料)

富士宮ルートの特長

五合目は4大ルート中最高所一直線の登高。眼下に駿河湾が望めます。

吉田ルートについで登山者を集める。登山起点となる五合目の標高は2380mで、吉田ルートの五合目に比べて80mほど高い。登り着いた山頂火口縁から剣ヶ峰までは所要約20分と至近距離にあり、富士山頂までの最短路となる。東海道新幹線や東名高速道路からからのアクセスのよさから、東海や関西方面からの登山者に人気がある。

五合目から右斜めに登り始める登山道は、六合目から太平洋を背にして直線的に高度を上げていく。山小屋は各合目ごとにあるので、登山のリズムは作りやすい。4大ルート中、唯一、下山専用道をもたないので、往路を戻ることになる。道迷いは防げるが、交互通行により渋滞も発生しがち。時差登山で渋滞を避ける行程も考えたい。

富士宮ルート 富士宮五合目〜剣ヶ峰
標高差1396m
距離約11.1km
登り時間4時間40分
下り時間3時間20分
混み具合★★★
登山者数7万319人
コースタイム富士宮口五合目→(20分)→六合目→(1時間)→新七合目→(50分)→七合目→(40分)→八合目→(30分)→九合目→(1時間)→富士宮口山頂→(30分)→九合目→(15分)→八合目→(20分)→七合目→(25分)→新七合目→(25分)→六合目→(10分)→富士宮口五合目

富士宮ルートまでの交通・アクセス

公共交通機関の場合

富士宮口五合目まで、東海道新幹線三島駅、新富士駅から登山バス(路線バス)を利用。
東海道新幹線新富士駅下車、駅より登山バス(新富士から約2時間15分)
東海新幹線三島駅下車、駅より登山バス(三島駅から約2時間5分)
東海道新幹線静岡県下車、駅より登山バス(静岡県から約2時間10分)
JR身延戦富士宮駅で下車、駅より登山バス(富士宮駅から約1時間20分。新富士駅、静岡駅発のバスも経由するため、本数が多い)

マイカーの場合

東名高速道路御殿場IC、裾野ICから富士山スカイライン、または東名高速道路富士IC、新東名高速道路新富士ICから西富士道路、国道139号、富士山スカイラインを利用し、新五合目まで行くことができます。

ただし、マイカーの入山規制があります(毎年期間が異なる)。なお、マイカーの入山規制期間中は、水ヶ塚公園駐車場に駐車し、そこから富士宮口五合目行きのシャトルバスまたはタクシーに乗り換えることになります(駐車場及びシャトルバス、タクシーは有料)

御殿場ルートの特長

標高差、距離ともに最長。充実感満点のロングルートです。

標高差、距離ともに国内屈指のスケールを誇るロングルート。山小屋の数が少なく、新五合目上の大石茶屋(1520m)を出発すると、標高3000mラインを超えた七合4勺まで営業小屋がない。4大ルート中では最も登山者数が少ないが、それだけに落ち着いた富士登山を楽しめる。唯一、マイカー規制がない登山口でもあるためか、近年、登山者数が増加傾向にある。

御殿場ルートにあって最大の魅力といえば、大砂走りの下山。宝永の大噴火によって覆われた最大な砂礫のスロープは、一歩で2〜3m程も下れるほどで、足へのショックも少なく、スピーディかつ豪快な下山行程。他ルートを登った後、下山を御殿場ルートにとる登山者も増えている。

御殿場ルート 御殿場口新五合目〜剣ヶ峰
標高差2336m
距離約20.7km
登り時間7時間10分
下り時間4時間15分
混み具合★☆☆
登山者数1万1792人
コースタイム御殿場口新五合目→(1時間20分)→新五合五勺→(1時間40分)→新六合目→(35分)→六合目→(35分)→七合目→(1時間)→七合九勺→(1時間40分)→御殿場口山頂→(50分)→七合九勺→(25分)→七合目→(1時間)→新五合五勺→(45分)→御殿場口新五合目

御殿場ルートまでの交通・アクセス

公共交通機関の場合

御殿場口新五合目までは、JR御殿場線御殿場駅からの登山バス(路線バス)を利用。
JR御殿場駅下車、駅より登山バス(御殿場駅から約1時間)
小田急線新松田駅下車、駅より登山バス

マイカーの場合

御殿場口新五合目まで、御殿場市街または富士宮・裾野方面から「富士山スカイライン」(無料)を利用。また、他のルートのようにマイカーの入山規制は実施していません。

富士登山の5つのモデルプラン

富士山頂を目指す登山者は、年齢性別、山歩きの経験の有無など千差万別だが、山頂への最短路である富士宮ルートでさえ剣ヶ峰までの標高差は約1400m。富士山入門者向きといわれる吉田ルートでは、標高差1500m余もあります。

その行程の半分は標高3000m以上での登下降となり、体力面はもちろん、高度の影響や厳しい気象条件を考え合わせると、富士登山は健脚行程です。それだけに、より安全で快適な富士登山を楽しむためには、プランニングが重要になってきます。

身体の体力や登山経験などに加え、登山計画には以下の要素を考慮していきたい。

  • 登山自体に費やせる時間
    日帰りか2日行程か
  • 自宅からの登山口への交通
    登山開始が何時になるのか
  • 夜間登山の可否と御来光へのこだわり
    御来光をどこで迎えるか

山小屋泊・1泊2日|頂上で御来光を迎えるベーシックプラン

行程・1日目:登山口昼発
・2日目:山小屋深夜発
体力★★
高山病リスク
睡眠やや少
夜間登山あり
御来光の場所山頂

高山病のリスクも考慮しつつ、最低限の日程で、かつ御来光は山頂で迎えたいという登山者が利用する。比較的ポピュラーな1泊2日のプラン。

初日の午前中に五合目へ到着し、昼前後から登山を開始。七合目から八合目付近の山小屋で宿泊の後、山頂での御来光時間に合わせて、未明に山頂を目指す。お鉢巡りの後に下山に移っても、昼前後には五合目に帰着できる。

宿泊先の設定は、五合目を出発する時間と、翌未明の山小屋〜山頂間の残り行程とのバランスを考えて決定しよう。初日の五合目発は昼前後といわず、早ければ早いほど行程に余裕ができ、より多くの睡眠時間を確保できる。

このプランの利点は、首都圏や近隣の各県からであれば、行き帰りの交通を含め2日で山行が完結するコンパクトさにある。富士登山のバスツアーでも、この行程を採用するものが多い。雲が湧きにくく大気の透明度も高い早朝にお鉢巡りが可能なことも魅力。

難点は、山頂への登りがヘッドランプ頼りの夜間登山となること。気温は低く、足元は不安定で、昼間の登高に比べると疲れやすい。特に週末は山頂直下の渋滞も想定されるので、山歩きに不慣れな人、山頂での御来光にこだわらない人であれば、日中登山の1泊2日をすすめたい。

山小屋泊・1泊2日|初心者向き。十分な睡眠を確保して日中登山

行程・1日目:登山口昼発
・2日目:山小屋朝発
体力★★
高山病リスク小〜中
睡眠十分
夜間登山なし
御来光の場所山小屋前(またはルート上)

吉田ルート六合目以上をはじめ、東面に位置する富士登山道であれば、ルート上ばかりでなく、山小屋の前からであってもご来光が楽しめる。山頂でのご来光にこだわらないのであれば、夜間登山の寒さや煩雑さを避け、十分な睡眠で疲労回復を図った後、山頂への最終工程は日の出後の日中登山がおすすめ。

1日目の工程は、昼前後に五合目から登山を開始し、七合目から八合目あたりの山小屋泊。翌朝は、山頂でのご来光時間に合わせて深夜に出発する登山者を尻目に、しっかりと睡眠をとる。ご来光を山小屋の前で仰ぎ、朝食をすませた後、しだいに暖かさを増す朝日を背を受けて山頂を目指す。天候が許せばお鉢巡りで山頂を一周し、昼くらいに下山を開始。無理せずゆっくり下っても、16時くらいには五合目に戻り着くことができるだろう。

雲が湧きにくい早朝の時間帯に展望やお鉢巡りを楽しみたいのであれば、、2日目の朝は、日の出の1時間ほど前に山小屋を出発し、ルート上でご来光を迎えるのもあり。この時間帯であれば、山頂直下の渋滞もある程度は緩和されている。

なお、山小屋到着時の宿泊手続きの際、日の出後の出発を告げることにより、深夜発組とは別に、ゆっくり睡眠がとれる場所に布団をとってくれる山小屋も多い。

山小屋泊・2泊3日|ゆったり3日工程で山頂ご来光登山

行程・1日目:登山口昼発
・2日目:山小屋朝発
・3日目:山小屋朝発
体力
高山病リスク小〜中
睡眠十分
夜間登山なし
御来光の場所山小屋前、山頂

睡眠も十分にとることができ、1日の行動時間も無理のない範囲で抑えながら山頂に迫る3日工程のプラン。

夜間登山を避け、余裕のある工程で登りたい人、山頂でのご来光にこだわりながらも、高山病のリスクも減らして登頂したい人に向き。山頂泊による高度の影響には注意が必要だが、ゆっくり時間をかけて登ることにより、身体が高度に順応しやすい。

1日目。五合目からの登山開始が昼頃とすると、ウォーミングアップも兼ねて七〜八合目くらいまで登って1泊。しっかり睡眠をとった2日目は、山小屋の朝食をすませてから出発。日中いっぱいを使って山頂に立ち、山頂の山小屋泊。翌朝、山頂でご来光を迎えた後にお鉢をめぐり、下山する。山頂泊による高山病のリスクを減らしたければ、山頂に止まらずに登り工程でもう一泊するか、2日目に山頂を踏んだ後、下山途上の本八合目などで1泊を加えてもいい。

2日目の宿泊を下山道と連絡する本八合目や八合目五勺などの山小屋に設定すれば、不要な荷を預けて山頂に向かい、帰路に立ち寄って回収することも可能。天候や体調、登高ベースにより、登頂日を2日目にするか3日目にするかを調整することもできる。しかし、山中に長居をするので、悪天候につかまるリスクもある。登山期間中の天候推移にも十分に注意したい。

前夜泊・日帰り|五〜六合目前泊、時差登山で混雑回避

行程・1日目:登山口午後発
・2日目:山小屋未明発
体力★★★
高山病リスクやや大
睡眠十分
夜間登山あり
御来光の場所ルート上

登山自体は日帰りの日程だが、身体の負担を減らして山頂に立つために、前日の夕方に登山口である富士スバルライン五合目や、吉田口登山道五合目〜六合目付近の山小屋で前泊するプラン。

翌未明に山小屋を出発して頂上を往復する。八合目付近でご来光を迎えた後、大気も澄んで日差しも暖かい朝方に胸突き八丁の登りをこなして山頂へ。お鉢をめぐって12時ごろ下山にかかれば、16時前後には五合目に下り着くことが可能。

登山前日の十分な睡眠と休養の確保だけでなく、標高2300m超での前泊は無理なく高度に身体を慣らすことができる。登山工程で、登山者が少なめの時間帯に通過できるのもこのプランの大きな利点。

山頂でのご来光時間に合わせて夜通し登り続ける、いわゆる弾丸登山に比べれば高山病のリスクは低い。しかし、登山が日帰り工程であることに変わりはなく、山頂往復の長い歩行時間を考えると、体力的なきつさは否めない。荷物の軽量化や無理のないペース配分、疲れ切る前の休憩、水分や食料のまめな補給が重要になる。

このプランに山頂での1泊を加えれば、山頂でのご来光登山が可能。その場合、五〜六合目の前泊地を明るくなってから出発。日中ゆっくりと登り、山頂の山小屋泊。翌朝、ご来光〜お鉢巡りの後に下山する。

日帰り・弾丸登山|山頂でのご来光に合わせて夜通し登山

行程・1日目:登山口夜発
体力★★★
高山病リスク
睡眠なし
夜間登山あり
御来光の場所山頂

夕方や夜に登山口(五合目)に到着後、山頂でのご来光時間に合わせて夜を徹して登り続け、山頂でご来光を迎えたのちに、そのまま下山してくるもの。

たとえば、8月1日であれば日の出は4時40分頃。その30分前に山頂に着くためには、五合目の登山開始を前夜の20時前後に設定することになる。

ヘッドランプの灯りを頼りに、ときに夜の寒さに震え、ひたすら単調な夜間登高を続ける。吉田ルートでいえば、剣ヶ峰の標高差1500m弱を連続行動で往復することになり、体力的にきつく高山病のリスクも高い。夜間登山の眠さと疲労の蓄積に高度の影響が加わり、体調不調や判断力の低下を引き起こしやすく、ケガや事故、高山病による救助要請につながるケースも多々ある。

前日に十分な休息をとらずに夜通しで山頂を往復するこの登山スタイルは、俗に弾丸登山と呼ばれ、近年、特に自粛が呼びかけられている。富士登山者全体の30%以上が、この弾丸登山スタイルだという推計もされているが、山歩き初心者や初めての富士登山者にはすすめられない。

日程の都合で夜間登山による日帰り工程しか組めなければ、前日はゆったり過ごして体力の温存につとめよう。体調や天候によっては、山頂を諦めて下山する心構えも重要。

プロフィール画像

てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。