筑波山は茨城県の名峰として有名であり、観光スポットとしても人気の山ですね。
標高は低いとは言えないけれど、ケーブルカーとロープウェイがあるから色んな楽しみ方があるよね。
日本百名山にも入ってるんでしょう?
はい。日本百名山で最も標高の低い山で、登山初心者も挑みやすい山といえますね。
本記事では、筑波山とはどんな山なのかを解説していきます。
ぜひ、お役立てください。
筑波山とは
筑波山は古くから山岳信仰の対象であり、「西の富士、東の筑波」と称されてきた関東地方の名山です。
本記事では筑波山を、
- 地理的特徴
- 歴史と文化
- 生態系
の観点から解説していきます。
筑波山の地理的特徴
筑波山は独立峰ではなく、男体山と女体山から成る双耳峰です。
万葉集にも登場しており、雅称は「紫峰(しほう)」、「筑波嶺(つくばね)」。
- 双耳峰とは
- 標高がほぼ同じで二つの耳のように隣り合って並ぶ山を指す。
鹿島槍ヶ岳、谷川岳、筑波山、ニセコアンヌプリなど、全国に存在する。
位置情報
所在地 | 茨城県つくば市筑波 |
標高 | 877m(男体山頂871m、女体山頂877m) |
経度緯度 | 北緯36度13分31秒 東経140度6分24秒 |
山域 | 八溝山・筑波山 |
阿武隈山地の最南端に位置し、水郷筑波国定公園の一部となっています。
地形
八溝山地から関東平野に向かって突き出したように存在し、複雑な起伏や深い谷、急な崖もなく単純な形の山です。
そのため、遠方からでも近くからでも同じように全貌を見ることができます。
地質
筑波山の構造は、標高400~500mを境に上部を斑レイ岩、下部は花崗岩で成り立っています。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
筑波山の斑レイ岩
- 斑レイ岩とは
- 地下深くでマグマが長時間かけて冷え固まった深成岩のひとつ。顕微鏡で観察するとモザイク状の精巧な結晶(等粒状組織)が見られ、硬度が高い。
筑波山の斑レイ岩はひとかたまりの岩体ですが、女体山山頂あたりは白色、山麓は黒色と、場所で色味が異なります。
理由は岩体形成の過程で、
- 比重が大きく黒色の鉱物はマグマだまりの下部に密集
- 比重が小さく白色の鉱物はマグマだまりの上部に残存
したためと考えられています。
筑波山の奇岩や登山道に存在する岩石のほとんどは斑レイ岩です。
斑レイ岩
引用元:倉敷市自然史博物館
筑波山の花崗岩
- 花崗岩とは
- 斑レイ岩と同じく深成岩のひとつで、「御影石」という石材として産出されている岩石。
地下奥深くで数十万年から数百万年かけて冷え固まり、組織のきめが粗い。
分布域は国土の約12%を占め、日本全国に存在する。
筑波山の花崗岩は巨大な斑レイ岩を放射状に囲むように分布しています。
貫入は斑レイ岩よりも新しく、約6000万年前ごろであると考えられています。
斑レイ岩より脆く浸食されやすいため、花崗岩は斑レイ岩より低い山体を形成しています。
筑波山の北側にある真壁は全国的に有名な花崗岩の産地です。
花崗岩
引用元:倉敷市自然史博物館
筑波山の歴史と文化
筑波山は全体が山岳信仰の対象として古くから崇められてきた歴史があります。
江戸時代には徳川家の庇護下に置かれ、とても大切にされてきました。
万葉集で多く詠まれた名山
万葉集には筑波山を詠んだ長歌・短歌が25首存在します。
具体的内容は、たのしい万葉集:筑波山(つくばさん)を詠んだ歌(外部リンク)をご覧ください。
筑波山周辺には多くの歌碑も点在しています。
筑波山神社
筑波男大神(つくばおのおおかみ)としてイザナギノミコト、筑波女大神(つくばめのおおかみ)としてイザナミノミコトをそれぞれ西峰、東峰の山頂に祀り、中腹の拝殿で双峰を仰ぎ拝まれてきました。
ガマの油
山麓の永井村に住んでいた兵助が江戸で商売をして評判になったとされる、ガマの油。
修験者の格好をした売り子が日本刀で和紙を切っていきながら、
「一枚が二枚、二枚が四枚・・・」
と口上するガマの油売りは落語の演目として登場しています。
筑波山の生態系
筑波山は、ほぼ全域が水郷筑波国定公園に指定されています。
山頂部は冷温帯植物のブナ、山麓は暖温帯の常緑広葉樹林が生い茂っており、中腹には紅白色づく梅が約100本植えられています。
筑波山の植物
関東平野から急に立ち上がる筑波山は標高による気温差が激しく、標高100mにつき0.5℃変化します。
ゆえに山麓から山頂にかけては植物の明確な垂直分布を見ることができます。
おおよその海抜(m) | 主な植物 |
---|---|
800~877 | ブナ、ムシカリ、リョウブ、ニッコウナツグミ、トウゴクミツバツツジ、ウツギ、カエデ、キブシ |
600~700 | モミ、シデ、ミズキ、ネジキ、ヌルデ、シキミ、ツクバネソウ、ナルコユリ、ヒトリシズカ、フタリシズカ、ニリンソウ |
400~500 | スギ、ヒノキ、カヤ、カシ、タブノキ、スジダイ、ムクノキ、ナラ、ネムノキ、イヌツゲ |
200~300 | アカマツ、クスノキ、クヌギ、カシワ、フクレミカン、ヤマザクラ、ツクバカゴメヅル |
筑波山の動物や昆虫
哺乳類は24種類記録されており、ニホンリスやニッコウムササビなどの希少種も生息しています。
鳥類
鳥類は128種類記録されており、季節や標高によって観察対象が変化します。
- 初夏にはオオルリ、キビタキなど夏鳥の繁殖
- 晩秋にはアカハラ、ルリビタキなど冬鳥の飛来
- 山頂付近にはイワヒバリ、カヤクグリなど高山性鳥類が越冬
昆虫
- ミカン栽培されている中腹ではアゲハチョウの仲間
- 雑木林では天然記念物のオオムラサキ、ミヤマクワガタなど
- 登山道や草原ではバッタ、カマキリ、オニヤンマ
- 山頂付近ではアサヒマダラ、エゾゼミ
を観察することができます。
まとめ
筑波山とはどんな山なのか、地理・歴史と文化・生態系の3つの観点から解説してきました。
それぞれについてまとめると以下の通りです。
- 関東平野に食い込むように存在し、上部は斑レイ岩、下部は花崗岩から成る単純な地形
- 山岳信仰の対象として栄え、「ガマの油売り」は今日も伝承されている
- 地理的特徴を理由に自生する植物は垂直分布を成し、豊かな生態系が息づく
本記事が筑波山における知識の深化に役立てられれば幸いです。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。