歩行を安定させ、疲れを軽減してくれるトレッキングポール。
ひざや腰の負担を減らし、転落や滑落のリスクを減らしてくれるため、トレッキングや登山にはとても役立つ山道具。
しかし、トレッキングポールを使用した後、きちんとお手入れ・メンテナンスを人はほとんどいないのではないだろうか。ポールのケアは、分解して乾燥させるのが基本となります。使い終わった後に、ポール内部の水分をそのままにしておくと、腐食してネジ部分がさびてしまいます。寿命が短くなってしまいます。
そこで、今回、トレッキングポールのお手入れ・メンテナンス方法を解説。お手入れの基本をはじめ、回転ロック式・レバーロック式の構造の違い、正しい保管方法、買い替えどき、お手入れに必要な道具などをまとめて紹介します。
トレッキングポールのお手入れの基本
使い終わった後、バスケットや先端部分についた土をきれいに落としている人はよく見ますが、分解して乾燥させている人はほとんどいません。でも、そこが最大のポイントになります。
ポール内部に入った水分をどれだけきちんと取るかで、ポールの寿命はまったく変わってきます。たとえば、濡れたポールを縮めると、ポールに付いた水分がそのまま内部に残ります。しばらく使わずに置くと、いくらアルマイト加工が施されたものでも腐食してしまいますし、場合によってカム部分のネジもさびてしまい、ロック機構が働かなくなってしまいます。
トレッキングポールって分解しちゃいけないと思っている人がほとんどだろうが、じつはどんどん分解してきちんと中までメンテナンスしなくてはいけません。分解してポールを回してみてジョイントプラグが太くなったり細くなったりすることを自分の目で見れば、回転ロック式のポールがどのような機構と仕組みでロックされ、解除されるのか、またポールがロックされない場合の対応もおのずとわかってきます。
トレッキングポールのお手入れポイント
- ポールがロックされる機構と仕組みを知る
- 分解してポール内に入った水分を乾燥させる
- 横から力がかかって曲がらないようにする
トレッキングポールの構造の違いとは?レバーロック式と回転ロック式
トレッキングポールには回転ロック式とレバーロック式の2種類があります。レバーロック式は機構が見えるが、回転ロック式は機構が内部にあるため分解しないと仕組みがわかりません。ロックされる仕組みを知らなければ、メンテナンスのしようもないので、まずはその構造を知っておきましょう。
タイプの違い
レバーロック式のポールと回転ロック式の2種類があります。
回転ロック式ポールの構造・仕組み
回転ロックポールは内部のジョイントプラグとカムによってロックがされます。
カムが上がるとジョイントプラグが開き、径が太くなることによってポール内に抵抗がかかり、ロックされる仕組みです。
レバーロック式ポールの構造・仕組み
レバーの開閉によってロックがかかる仕組み。動作は簡単だがレバーパーツが損すると修理が難しいです。
トレッキングポール使用後のお手入れ 分解とクリーニング
山行後、ポールを拭いてから縮めるという人はまだいいほうですが、すぐ縮めてしまう人が多いのではないだろうか。濡れたままの状態でポールを縮めるとインナーポールやセンターポールに付着した水分が外側のポール内部に残ります。これを防ぐためには分解して乾燥させるのがベストです。
ポールを引き抜く
ロックを開放状態にしてから、ポールを分解する。ジョイントプラグ部分が引っかかるが一気に引き抜くのがコツ
回転ロック式はカムを分解
さらにロック部分を分解する。ジョイントプラグを外すと中にカムがあるが、このカムが上下することでロックされます。
カムの芯をクリーニング
カムの芯になっているネジにホコリやゴミが付いていないか、さびていないかをチェックし、クリーニングします。
折りたたみ式のお手入れ コードのケアが重要
コンパクトさで人気の折りたたみ式のトレッキングポール。メンテナンスの中心はポール各部をつないでいるコード。折り曲げによって切れることはあまりないが、きちんと拭き、傷などのチェックを怠らないことが重要です。また使用後は折りたたんでポール内部を乾燥させることも大切。
ロックされない
カムが下まで下がった状態(解放状態)で無理にポールを回すとカムが固着し、いくら回してもくるくる回るだけでロックされなくなることがある。そんなときはポールを抜き、ジョイントプラグを押さえたまま、ロック方向にポールを回す。カムが上がり、ロックされるようになる。
置き場所には注意を
立てかける場所がない場合、岩の上やイスの上にポールを置いてしまうことはありがち。しかし、そんなときに限って上に腰かけたり、バックパックを置いたりしてしまうもの。縦方向に非常に強いポールも、横方向の荷重には弱い。曲がったポールは伸縮もできなくなる。
トレッキングポールの買い換えどき
自分でメンテナンスできる限界は、残念ながら存在します。また、いくらこまめにメンテナンスを続けていても、耐用限界はいつの日がやってきます。ギアのメーカー修理に出すべき時や、買い替えどきについて説明します。
ポール内部の腐食
濡れたまま放置すると、ポール本体やロックパーツのネジ部分が完全に腐食してしまう。アルミ内部まで腐食が進行してしまうと、ロックが働かなくだけでなく、ポール本体の強度も低下してしまう。たとえ磨いたとしても使用を控え、買い換えたほうが無難。
トレッキングポールの正しい保管方法
いくらメンテンスがきちんとしていても、保管方法が悪ければ、せっかくした手入れがいつのまにか台なしになってしまうこともあり得ます。使用時はケースに入れて、使用後は分解して乾燥させることが適切な保管方法になります。
ケースに入る
山への行き帰り、バックパックにトレッキングポールをむき出しにして差し込み、何食わぬ顔で電車に乗っている人を見かけることがあるが、突起物を目の前でちらつかせるのは危険としか言いようがない。せめてケースに入れる気配りがほしい。保管時にはグリップ部分の紫外線劣化を防ぐのにも効果がある。
分解して保管する
メンテナンスのところでも書いたが、ポールは分解してもまったく構わない。それよりも使い終わったら、分解し拭きあげてから、ポールの内部に湿気をこもらせないように分解した状態のまま保管するのが望ましい。また、ホコリやゴミから保護する意味で、ケースに入れておくのがベストです。
トレッキングポールのお手入れに必要な道具
通常、必要になるのは乾いたタオルや手ぬぐいなどの布類だけ。それで各部の汚れを取り、水分をきっちり拭き取ることがケアの基本となる。真鍮ブラシはカム部分のゴミや汚れ、錆びを落とすのに使用する。
お手入れに必要な道具
- 真鍮ブラシ
- 乾燥した布
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。