高山や寒い季節の登山には欠かせない保温着であるダウンウェア。
基本的に行動中に着るものではなく、汚れや傷がつきやすいウェアではありませんが、羽毛は、日頃のお手入れや保管方法によって、保温性が変わってきます。
内部の羽毛に汗や汚れが付着すると、ダウン本来のロフトを損ない、保温性が低下していく可能性があります。それを防ぐためには適切なお手入れが欠かせません。
そこで、今回、ダウンウェアの本来のパフォーマンスを下げないお手入れ・メンテナンス方法を解説します。お手入れの基本をはじめ、洗浄手順や正しい方法、ダウンと化繊の違い、自分でできる補修、保管方法、お手入れに必要な道具などをまとめて紹介していきます。
ダウンウェアのお手入れの基本 温かさを長持ちさせる秘訣は羽毛ロフトの維持にあり
ダウンジャケットは基本的には行動中に着るものではありません。
丸洗いが必要なほど汗をかいて、脂分が内部に染み込むということは少なく、比較的傷みにくいウェアです。
表面が汚れてテカテカになったようなダウンジャケットでも羽毛がつぶれさえしなければ性能は変わらない。とくに良質のダウンの製品を買っておけば、メンテに気をつかわなくても、いつまでも温かさを保ってくれます。
だから、ダウンジャケットの日ごろの手入れは、着ないときの保管方法に気をつかうことのほうがよほど大事になります。
着ている時間がよほど長いとか、とくに汚れてしまいやすい環境で着用するという場合は、内部の羽毛に汗や汚れが染み込み、ダウン本来のロフトを損なう可能性もあるので、必要最低限の範囲で丸洗いしてもいい。ただしダウン製品の丸洗いは比較的難しく、失敗するとかって性能を落としてしまうこともあるので、洗濯方法には注意が必要です。
ダウンウェアのお手入れポイント
- ロフトを保つよう保管には注意
- 濡らした場合は早めの乾燥を心がける
- 基本的には洗わない
羽毛が飛び出したら、抜かずに裏側から引き戻す
アウトドアメーカー製のダウンジャケットは、一般のものより目の詰まったダウンプループ性能の高い生地を用いていることが多い。だから、生地が薄いわりにに羽毛の「抜け」は格段に少ないはず。とくに高品質のものほどそうで、羽毛が出てくることを気にする必要はほとんどないといっていい。万一飛び出していたら抜かずに引き戻す。
早めに発見して処置する
羽毛は縫い目から抜け出してくる場合がほとんど。生地を突き通して抜け出してくることはほとんどありません。
飛び出した羽毛は内側から引く
羽毛が抜け出てきた場合、抜かずに内側から引っ張って戻します。やってみるとなかなか難しく、コツがいる。
ジッパーがかんでしまったら焦らずに丁寧にはずす
アウトドア用ダウンジャケットは薄い生地を使っているものが多いので、ジッパーが生地をかんでしまいやすい。かみ込み防止に各社さまざまな工夫をこらしてはいるが、それでもあまり雑に開け閉めをすると不意にかんでしまうことがあります。
生地が薄いぶん、いったんかんでしまうと外すのがなかなかやっかいで、無理して外そうとすると生地を破いてしまうおそれもある。ジッパーの開け閉めはできるだけていねいに行いましょう。
滑りの悪くなったファスナーには専門潤滑スプレーを塗布
長年使いこんでくると、ファスナーが微妙に摩耗したり細かいゴミが付着して、ファスナーの滑りが悪くなってしまうことがあります。そのままにしておくと生地のかみ込みの原因になるし、無理に動かすとファスナーが破損してしまうこともある。なにより着ること自体がストレスになる。
そうなった場合、潤滑剤をファスナー部分に薄く塗っておくといい。これだけでファスナーの動きが劇的に軽くなるので、定期的にケアしておくのがオススメ。
ダウンウェアの洗濯手順と正しい方法
ダウンジャケットの洗濯手順と正しい方法を説明していきます。
基本は手洗い。メーカーやモデルによって洗濯機を使用してもよいものがあるが、それがすべてではありません。洗濯前に表示タグを確認することが重要になります。
洗剤はどんなものでも、多かれ少なかれ、羽毛が本来持っている脂分を抜いてしまう。羽毛の脂分は、ふわっとしたロフトを保つために大切なものなので、できるだけ脂分に影響しない洗剤を使う必要があります。
一般家庭用の中性洗剤ではなく、専門洗剤を使った方がいいのはそれが理由です。ちなみに柔軟剤なども使わないほうがいい。羽毛に柔軟剤成分がついてしまうとロフトが回復しなくなるおそれがある。撥水性の高い表地の場合は、すすぎや脱水はとくに念入りに行なう。
乾燥の仕方も、うまく仕上げるための核心のひとつ。大原則は吊さないこと。ものによっては、乾燥機で乾かした方がふっくら仕上がることもある。これは乾燥機の大きさやパワーにもよるので、乾燥機を使う場合はこまめに状態を見ながら慎重に行いましょう。
洗濯表示を確認
まずは洗濯表示を確認。ものによって推奨される洗濯方法が異なるため。表示記号の見方は生産国によって異なる。
ジッパーは閉めてから
洗濯する前に、しっぱーはすべて閉めておく。ドローコード類も、ぶらぶらしないように長さを調節しておくと洗濯しやすい。
洗剤を用意する
50Lくらいの大きなたらいにぬるま湯を張り、ダウン専用洗剤をよく溶かす。ぬるま湯の温度は、使用する洗剤に表示されている推奨温度にしたがって決める。
軽く押し洗いする
ダウンウェア全体が洗剤に浸かるようにして、軽く押し洗いする。汚れが浮き上がってくるのを見計らい、さらに手でやさしく押し洗いをしていく。
強くこするのは厳禁
強く揉んだり、両手でゴシゴシとこするような洗い方は厳禁。これをすると、ウェア内部の羽毛が絡み合ってしまい、ロフトが低下してしまうことがある。
汚れはブラシを
表地にこびりついたような汚れがある場合は、やわらかいブラシなどをツアkって、その部分だけを軽くこすって落とす。生地を傷めることがあるので、これもやさしく軽く。
すすぎは根気強く
洗い終わったらすすぎ。洗剤が残らないように十分すすぐ必要があるが、1回や2回では不十分。洗剤が抜け切るまで何度も行う。ここは重要なところなので根気よく。
脱水もていねいに
すすぎが終わったら脱水。絶対に絞らず、軽く押し出す感じで行う。脱水前の重たくなった状態で無造作に持ち上げると生地を傷めたり羽毛が片寄る原因になるので注意
乾燥機へ
可能なかぎり脱水したのち、洗濯ネットに入れ、乾燥機の低温モードである程度乾燥させる。乾燥機がない場合は干すしかないが、非常に時間がかかる。
平干しがマスト
風通しのよい場所で平干し。日向に干す場合は上から布をかける。ハンガーなどに吊って干すと、羽毛が片寄りやすいので厳禁。完全乾燥まで1週間近くかかる場合もある。
ダウンインサレーションの使用後のお手入れ
それほど汚れていない場合
乾燥させたあと、袖口などの汚れを水拭きする
普通に着ているだけでも、羽毛はかなりの湿気を吸っている。そのため、山から帰ってきたら、まずは広げて乾燥させる。襟まわりや袖口の表面が汚れていたら、軽く濡らした布で拭く。 襟まわりや袖口は、汗や皮脂で表面が汚れやすい。濡らした布で拭き取る。
汚れた部分を専用洗剤で部分洗いする
汚れが中の羽毛に浸み込んで恐れがあるときも、なるべく丸洗いは避けて、汚れた部分だけ洗う。ぬるま湯にダウン専用洗剤を溶かし、汚れた部分だけ浸けて、押し洗いする。 30度程度のぬるま湯にダウン専用洗剤を溶かし、押し洗いする。
陰干ししたあと、撥水スプレーにかける
ていねいにすすいだあと、日陰に平干しして乾燥させる。完全に乾くまで数日かかる。乾いたら、撥水スプレーをかけて表生地の撥水性を高めておく。
全体的に汚れている場合
タライに水を張り、専用洗剤で押し洗いする
30度程度のぬるま湯にダウン専用洗剤を溶かす。ジャケットをタライに浸け、軽く押すように洗う。もみ洗いは羽毛がちぎれるのでNG。
押しながら洗剤をすすぎ、水を切る
洗い終わったら、きれいなぬるま湯に浸けて、押すようにすすぐ。羽毛に洗剤成分が残らないよう。すすぎは3〜4回繰り返す。
日陰で平干しして、充分に乾燥させる
押しながら脱水して、羽毛に浸み込んだ水分が抜けたら、日陰で平干しする。完全に乾燥させるには数日かかる。
濡れたままの状態で羽毛をいじるとちぎれえつぃまうので要注意。
ダウンをほぐして撥水スプレーをかける
完全に乾いたら、玉状になった羽毛をもんでほぐす。仕上げに撥水スプレーを全体にまんべんなくかけて、裏生地に撥水処理を施す。
化繊綿インサレーションの使用後のお手入れ
ファスナーを閉め、汚れ部分に洗剤を染み込ませる
襟元や袖口などは肌が触れて、脂分で汚れが付きやすい。このような汚れのひどいとこりには洗剤の原液を直接染み込ませておく。
洗濯ネットに入れ、洗濯機で洗う
ファスナーやボタンを閉めてから、裏返した状態でゆったりと洗濯ネットに入れ、洗濯機で洗濯・すすぎ・脱水をする。
フリースは毛玉ができないようにケアする
繊維は擦れることによって毛玉ができてしまう。気になるくらい大きくなってしまったら、むしり取るのではなく、はさみで切り取ろう。
陰干しで乾燥させる。
ハンガーにかけたら、ほかのウエア同様、生地の劣化を早める直射日光は避け、風通しのよい日陰で完全に乾燥するまで干す。
ダウンウェアのメンテナンス 自分でできる簡単な補修
穴が空いた場合はリペアシートで早めの補修を
アウトドア用のダウンジャケットは軽量化のために薄い生地を使っているものが多い。鋭い枝や岩角などに引っかけると、カギ裂き状に破れてしまうことがある。そのままにしておくとすぐに羽毛が抜け出てしまうので、ガムテープなど手持ちのものでふさいでおく。
帰宅後にあらためて補修。縫うのではなくリペアシートを用いる。
開いてしまった穴のまわりのほつれを整え、布で表面の汚れを取り去る。市販のリペアシートをやや大きめに丸く切り取り、穴を塞ぐように貼ったら、しっかり圧着する。
透明タイプのほかに、生地の色に合わせたリペアシートも出ています。
ただ、リペアシートもあくまで応急処置になります。
近年のリペアシートは粘着力もアップし丈夫になっていますが、破損箇所がひどい場合はなるべく修理に出すようにしましょう。
部分的に汚れた場合
襟や袖口などは素肌に触れて皮脂汚れなどが目立ってきてしまう。そうした部分的な汚れの場合は、部分的な洗浄ですませます。表地の狭い範囲の汚れならば、その箇所だけ部分洗いするという方法もあります。
部分洗いのやり方は、固く絞った布に洗剤を含ませ、表地を拭き取るようにして汚れを落としていく。この場合も、洗剤はダウン専用のものを使用します。汚れが落ちたら、洗剤が残らないようによく拭いておきましょう。
ダウンウェアの正しい保管方法 着ないときはふっくら保管
羽毛をつぶさずにロフトを保つことが、ダウンジャケットのケアの最重要。そのためには普段の保管の仕方が大切になります。袋に押し込んだり、たたんで重ねたりすると羽毛がつぶれてしまうため、できるだけ「ゆったり」「ふっくら」保管するのがコツ。山から帰ったら、できるだけ早くスタッフバッグから出しておく習慣をつけよう。
普段はハンガーかけて保管する
普段は太めのハンガーに吊るしておくのが一番。長期保管時は、通気性がいい大きめの袋に入れておきます。
折りたたむのはNG
折りたたんで保管するのはよくある間違い。付属のスタッフバッグに詰めっぱなしにしておくのもよくない。
ダウンウェアのお手入れに必要な道具
ダウンウェアの洗浄に重要なのは、干し用ネットと洗剤、洗いおけ。ダウンは吊るして干すことが厳禁なので、広げて平干しできるものが必要になります。洗剤はダウン用と表示された専門品を使います。たっぷりの水ですすぐ必要があるので、洗いおけの大きさも重要になります。
また、保管・修繕には、ハンガーはできるだけ太いものを使ったほうが、ダウン内の羽毛に局所的ストレスを与えずに済みます。リペアシートは各種あるが、写真は強力な粘着力と抜群の伸縮性で近ごろ話題のティアエイド。透明なので色を選ばず使えます。
お手入れに必要な道具
- 洗いおけ
- ぬるま湯
- 専門洗剤
- 専門撥水剤
- ブラシ
- 干し用ネット
- 洗濯ネット
- 太いハンガー
- リペアシート
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。