ULと言っても、軽量にすればいいというものではない。何を持ち、何を持たざるか、どうパッキングするかが重要だ。
バックパックをUL化すると言っても、ただ軽量にすればいいものではありません。何を持ち、何を持たざるか、どうパッキングするかが重要になります。
ハイキング、トレッキング、登山と、それぞれの目的によって持ち物は異なります。ただ、いずれにせよパッキングの仕方によって、ザックの背負いやすさや、体に感じる重量感は大きく変わってくる。超軽量ザックの登場で、荷物自体の重さはかなり軽量化されるが、パッキングを失敗するとそれも台無しになってしまう。中に入れるアイテムを厳選した上で小分けにし、スタッフザックに入れ、うまくバランスを考えながらパックングしよう。
ここでは、バックパックをウルトラライトにする方法を紹介していきます。バックパックの選び方、背負う荷物を軽量化するためのコツ、ULバックパックの特徴、バランス良く背負う方法、パッキング方法などを詳しく説明していきます。
背負う重量でバックパックの容量を選ぶ
バックパックを軽量化するための最大のポイントは素材の軽量化と構造の簡略化です。背負う荷物を軽くすると同時に、バックパックのシンプルさを追求します。
そこでまず、ハイキングでは何キロ背負うのかを考えてみましょう。
以前、テント泊をしていた登山者やハイカーは、バックパックの総重量が20kgを超えるのは普通でした。また、装備が増える冬の長期山行では、40kg近い重量を経験することもあったでしょう。
こうした重い荷物を背負う場合、荷重は背面だけでなく、腰でも支えるのが効果的です。そこでフレームやサスペンションが進化し、パッドが充実した2.5〜3kg程度の堅牢な大型バックパックが多くの登山者やハイカーの支持を得ました。
しかし最近では、道具の軽量化が加速度的に進みました。軽量化を意識しなくても2〜3泊までのテント山行なら、バックパックの総重量を15kg程度に抑えることは難しくはなくなりました。
そして、ウルトラライトな登山やハイキングでは、ベースウェイト5kgに水&食料4kgで、バックパックの総重量は10kg以下になります。このような軽い荷物なら、1kg以下のシンプルなバックパックでも十分に対応できます。
パックウェイト | バックパック重量 | カテゴリー |
---|---|---|
20〜30kg | 2.5〜3kg | トラディショナル |
15kg | 1.5〜2kg | ライトウェイト |
10kg | 1kg以下 | ウルトラライト |
バックパックの重量は、背負う総重量の10〜15%を目安に
バックパックの重量は、背負う総重量の10〜15%を目安にするのが良い。バックパックと荷物のバランスからいっても、荷重がかかるバックパックの構造からいっても、これが適当だと言えます。
もし、10kg弱しか背負わないのにバックパックが2.5kgもあれば、バランスが悪いです。また、20kgを超える重量を背負うなら、サスペンションやパッドが充実した2.5kgのバックパックを重いとは一概には言えません。
バックパックの最適荷重
バックパックの軽量モデルには、しばしば最適荷重という表示が見られます。これはバックパックが耐えられる限界重量ではなく、バックパックと背負う総重量との適切なバランスを示しています。そして、最適荷重より重い荷物を背負ったからといって、使えなかったり壊れたりするわけではありません。
バックパックの荷物を軽量化させるためには
バックパックは、ウルトラライトな登山・ハイキングを象徴するギアといっても過言ではありません。雨蓋、フレーム、背面パッドを省いたモデルが多く、生地も極薄。パッキングしないと自立せず、ペラペラでクシャクシャ。無駄を削ぎ落としたシンプルなパックです。
ただ、バックパックの重量は、背負う重量の10〜15%程度が適切です。フレームや背面パッドのないウルトラライトバックパックでは、同時に背負う荷物も軽量化させることがとても重量になります。
スリーピングマットをフレーム&背面パッドの代わりにする
フレームや背面パッドのないULバックパックを、そのまま使ってもとくに問題ありません。ただ、より背負い心地をよくし、行動中のブレをなくすのであれば、スリーピングマットを活用すると良いです。
具体的には、マットを筒状にしてバックパックに挿入して、フレーム&背面パッドの代わりにします。しかも、ペラペラのパックが自立するので荷物の出し入れもしやすくなります。
腰荷重が必要なければウエストベルトはなくてもいい
バックパックの重心は上部にあったほうが重さを感じにくい。ショルダーハーネスを絞って背中の上部で背負うイメージです。
重い荷物を担ぐ際には、荷重を分散させる上でウエストベルトが重要になってきますが、ULの場合はそうではありません。軽量がゆえに腰荷重の必要性がありません。だから、ULバックパックにはウエストベルトがないモデルが多くのです。
荷物が軽いのであれば頑丈なものでなくてもいい
一般的なバックパックは1kg以上のものが多いが、ULバックパックは1kg以下。それは、フレームや背面パッドをはじめ、さまざまなものを省いているためです。荷物を軽くすることで、素材や構造を簡素化できるのです。必要以上に頑丈なバックパックである必要はありません。
ULにおけるベースウェイト(水・食料・燃料などの消費材を省いた重量)の目安は4.5kg。水・食料や燃料を入れても10kgを超えないことが多いため、問題なく背負うことができます。
ウルトラライトバックパックの特徴
以前の大型化や複雑化したバックパックと比べ、ULバックパックは山での生活の仕方から見直すことで道具を簡略・軽量化し、ペラペラなパックにそれらを詰めて超長距離を短期間で歩き通してしまう。
では、その重量バックパックとULバックパックは何が違うのでしょうか。ここではULバックパックの特徴を見ていきましょう。
背負う重量とバックパック自体の重量比
ウルトラライトバックパックは、背負う総重量とバックパック重量の関係が、快適に運べる指標になってきます。
「トラディショナル」「ライトウェイト」スタイルではおおむね総重量の10〜15%程度がバックパック重量だが、「ウルトラライト」では総重量10kg以下でバックパック重量の割合が10%程度以下というのが目安になります。
ライトウェイト以上では、フレーム入りのバックパックが必要となるが、ULではフレームなしのペラペラなバックパックで済みます。ULバックパックでは、フレームやそれを体に縛り付ける仕組み、体との境界を快適に保つ仕組みなどがないため、背負い方や歩き方などが異なってきます。
外観の違い
キスリング型のザックのように横長ではなく、ULバックパックは縦長です。フレームパックと比べてみると、ULバックパックには頑丈な背骨にたとえられるようなフレームはありません、あるいはあったとしても補助的なもので絶対的な剛性感は弱いです。
雨蓋はなく、ロールトップ式が多いです。背面や側面のポケットはメッシュで構成されていることが多く、金属製の登攀用具などガチャものをそのまま入れるには適しません。ヒップベルトがない、あるいはあっても細くて頼りなく、バックパックの揺れ留め程度の機能です。
また、快適そうな厚いクッションありません、調整箇所は少ないです。そのため、ストラップの数も少ない。生地は薄手であり、岩場を引きずるなど手荒な扱いをすると穴を開ける可能性がある。
高機能なバックパックに比べて、ULバックパックはシンプルな作りだが、そんなペラペラなパックでも用が足りてしまうのが、ウルトラライトハイキングのスタイルです。
背面パッド・ショルダーハーネス・ヒップベルトの構造
バックパックは、ショルダーハーネス、ヒップベルト、背面パッドだけで構成されています。腰に荷重をかけないタイプのバックパックでは、ショルダーハーネスと背面だけで、肩と前傾の姿勢の背中で担ぐことになります。腰への荷重をかけることを意図したバックパックならフレームとヒップベルトがそれに加わります。
ほとんどのウルトラライトバックパックでは、おおげさなアルミフレームや背面パッドは、省略されています。そのおかげで、バックパックの重心は非常に身体に近づき、歩行時のバックパックの振れも軽減されます。
こうしたフレームレスのバックパックをしようするハイカーが好むのは、スリーピングマットを筒状にしたバックパックに挿入し、フレームの代わりとする方法です。これによりフレームのないペラペラのバックパックも形をなして自立し、パッキングしやすくなります。
また、外部の衝撃からバックパック内の装備を守ります。挿入するスリーピングマットの厚さ・長さによってはバックパック内が狭くなることもありますが、長さ90〜120cmの半身用サイズなら大きな問題はありません。
パックライナーで荷物を防水する
キスリング・ザックでは、キャンパス生地に防水加工をすることと、雨蓋をつけることで防水処理をしていました。濡らしたくないものは、さらに防水袋に入れてました。
フレームパックでは、バックカバーが使われることが多く、絶対に濡らしたくないものは防水袋に入れる必要があります。バックパックもカバーも防水性が完全ではありません。
ULバックパックでも、ザック自体に防水性はなく、事情は変わりません。ただ、ULハイキングでは、それ以外の機能を持たないザックカバーを持つハイカーは少ない。
ULバックパックはシンプルの1気室の構造のため、バックパック内部に防水袋をライナーとして差し入れて防水区画をつくってしまうことが多く、それ以外の部分は濡れても構わないようなパッキングをします。
防水袋の利点は、たとえ歩渉で転んで水没しても短時間なら防水効果が期待できることです。また、防水袋はテント内で寝ていときに使わない装備を詰めて外に転がしておけばよく、狭いシェルターを広く使うことができるし、雨でもその中身を濡れから保護できます。
ウルトラライトバックパックのバランス良く背負う方法
人が荷重を支えるとき最もバランスがよいのは、直立し真上から荷重がかかっている状態です。
荷物を背負うとき身体をやや前傾させるのは、荷重の重心を身体の重心の真上にもってこようとする自然な動きです。また、荷物を担ぐときは身体に密着させるほどバランスがよくなります。そのため、荷物を身体から離して持つより、腕の前で抱える方がラクになります。
そして、荷物を背負うときは、荷物の位置が高いほどバランスはよくなります。
バックパックの重心を、身体に近く、身体の上方にすることが、バランスよく背負うための基本になります。
重心が上がりすぎると急峻な地形ではバランスを崩したり、バックパックが木に引っかかることもあるため、実際には背面上部にバックパックの重心を感じるように背負うことが重要です。
ショルダーベルトを引き絞り、バックパックの位置を背面上部すれば、重心が上がり、背面にバックパックが密着し、バランスがよくなる感覚が体験できるはずです。
このときチェストストラップを引き締めすぎないよう注意。鎖骨に干渉したり、ショルダーベルトの外側が浮いてしまったりします。チェストストラップは、ショルダーベルトが肩から外れることを予防し、フィット感を高めるためのものです。
そして、荷重を腰で支えるときにも重要なのは、ベルトよりもバックパックの底の位置。ここを腰のくぼみに乗せる担ぐと良いです。ウエストベルトは、バックパックをその位置からずらさないためのものと割り切ってよいです。
荷物を軽くし、背負うときに背面上部を意識することで、ハイカーはバックパックをバランスよく背負うことが簡単にできるのです。
ウルトラライトバックパックのパッキング方法
重たいものは背中上方するのは基本だが、ここでは背中の崩壊を防ぐため凹凸や隙間のないパッキングを心がけたい。そのためにはパッキングを小分けしすぎないことが大切です。
几帳面な人は、個々のものをいくつものスタッフサックに入れて分類するが、防水面では1つの防水ライナーを利用すれば良いです。
スタッフサックにも重さがあり、個々に包むと無駄な重量が発生してしまいます。何より荷物へのアクセスに時間がかかってしまう。
マットで骨格を作る
マット類で骨格を作ります。スタッフサックから出した状態のシェルターの幕体をバックパックの底に放り込んで全体をならす。防水ライナーを入れ、スリーピングバッグを放り込みます。羽毛なら念のため防水スタッフサックに入れるが、化繊ならそのままのことが多い。
重量配分を意識して荷物を詰める
次は、重量配分を意識して装備を詰めるが、おおむねスタッフサックは重ね着させません。防寒着などあれば隙間に押し込む。その後、防水区画を閉じ、その上に巾着状の大きめのスタッフサックを載せて、行動時以外に使いそうな、あるいは緊急用のこまごまとしたものを入れる。その時点で機能のまとまりが必要な持ち出し袋として、小さなスタッフサックを使うことはあります。
よく使う道具は前面ポケットに
最後に、バックパックの口をくるくる巻いて閉じます。状況によって使いそうな雨具や滑り止めなどは前面のメッシュポケットに入れておく。こいつらは落としさえしなければ濡れても構わないものだから防水区画には入れない。水はペットボトルに入れて横にポケットに差しておきます。
あと、木の枝に引っかけて、紛失したり体のバランスを崩したりすと危険なので、見た目スッキリ、あまりいろんなものをぶら下げたりしない方が良い。凹凸なしのパッキングを心がけましょう。
登山・ハイキングをウルトラライトにするバックパック
オガワンド OWN
重量 | 約530g |
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容量 | 25〜50L |
値段 | 32,400円(税込) |
約500gと軽量でありながら、自由な位置にフックをつけ外しできるシステムによりサイズを25〜50Lまで無段階に調整可能という今までにないタイプのザック。また様々な用途に対応するカスタマイズ性を持ち、背負う人に合わせて細かく調節できたり、多彩なオプションを利用できたりと、ユーザーの好みに合わせて使うことができる自由度の高さも魅力。さらに、違うショルダーハーネスに交換することで、ボディを共用することも可能です。
ゴッサマーギア ゴリラ40 ウルトラライトバックパック
重量 | 約660g |
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容量 | 46L |
値段 | 34,560(税込) |
生地の軽さと強度が魅力の140dnlダイニーマグリッドストップナイロンを採用。細身で薄いフォルムとアルミフレームのカーブにより、バランス良く背負いやすい。そのためロングハイキング志向のハイカーにも対応。
「ゴッサマーギア ゴリラ40 ウルトラライトバックパック」の詳細・購入ページへ
OMM ファントム25CL
重量 | 25L |
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容量 | 565g |
カラー | ブラック |
値段 | ¥28,500 |
同ブランドならではの背負って走れるバックパック。独自のショルダーハーネスは、肺を圧迫することなく肩に荷重がかかりすぎない設計。背中にフィットしてブレないため、長時間背負いってもストレスなく快適に行動しつづけられる。また、ボトルが取り出しやすいデザインのサドルポケット、荷物の出し入れが容易なメッシュのフロントポケットなどは、長距離、長時間のハイキングにも有効です。
トレイムバム バマー
重量 | 30L |
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容量 | 303g |
カラー | フォレスト、他2色 |
値段 | ¥16,000 |
ULハイキングらしいバックパックが少なくなったという言葉をきっかけに作られた、これぞULというバックパック。余計な装飾をせず、シンプルゆえの軽さを追求。かといって快適性を疎かにしているわけではない。とくにショルダーハーネスは、幅広め&硬めに設定。柔らかいと一見心地好さそうだが、荷重がかかると食い込みもつながる。それを考慮したうえでの設計です。
山と道 スリー
重量 | 40L(M) |
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容量 | 541g |
カラー | ネイビー、他5色 |
値段 | ¥27,500 |
フレームレスでありながら背負い心地に秀でたULパック。全体のパターンやショルダーハーネスの角度、硬さの最適解を導き出すことで、その快適性を実現させている。本体上部の開閉方式が止水ファスナーであることも特徴的。荷物の出し入れがしやすい、雨蓋がないことによるデメリットも解消されている。軽さだけでなく、使い勝手をとことん考えて作られているバックパックです。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。