ロープワーク基本 登山・キャンプで使うロープの構造・各部名称・結びなど

ロープワーク基本 登山・キャンプで使うロープの構造・各部名称・結びなど

ロープワークは、登山やキャンプでなにかと役立つ技術です。
テントを設営するとき、荷台に荷物を固定するとき、便利なロープワークを知っておくことで、より安全で快適なアウトドア生活をおくることができます。

ただ、そんな便利なロープワークの代表的な結び方を覚える前に、ここではロープワークの基本を紹介していきます。ロープの構造、素材、各部名称、用途に応じた結び、ロープを扱う際の注意点、メンテナンス・保管方法などをまとめています。
ときに1本のロープに命を託すことがあるロープワークは、ちょっとした不注意で大きなアクシデントにつながります。ロープワークの基礎知識を覚えることで、より安全にロープを扱えるようなります。

登山やキャンプに使用するロープとは

登山やキャンプに用いられているのは、主にナイロン製の編みロープです。強度が高く、伸縮性・柔軟性があり磨耗しにくい。伸縮性があり用途に応じた太さ・長さのものを用意します。

  • 8mm以上のロープ
    命綱として積極的にロープを使用するなら、8mm以上の太さのものを用います。
  • 6mmのロープ
    6mm経のロープも補助ロープになりますが、大きな荷重がかかると切れる危険があります。
  • 3mm〜4mmのロープ
    細引きとして最も応用範囲が広いのは3mm経程度のものです。4mm経だと少し太い。

ロープの太さと長さの目安

登山やキャンプに使用するロープは、用途によって太さも長さもさまざまあります。よく知られているのは、命綱として用いられる「クライミングロープ」です。一般的にはクライミングのために製造された太さ8mm以上 × 長さ40m以上のものを指します。
また、太さ6〜8mm × 長さ20mほどのロープは「補助ロープ」などと呼ばれ、主に一般登山やハイキングで危険箇所を通過するときに使用します。このほか、太さ1.5mm程度の細いロープ全般のことを「細引き」と呼びます。
太さや長さに具体的な定義はないので、解釈も人によって異なります。登山の雑誌や本などの装備リストに、必携装備として必ず細引きがリストアップされていますが、それは次のように工夫次第でさまざまな用途に応用できるためです。

細引きロープの用途例

  • テントやターブの張り綱
  • 靴ひもの予傭
  • 物干用のロープ
  • ツエルト設営時の張り綱
  • ザックヘの荷物の固定
  • 小物のネックストラップ

こうした用途を考え、一般登山では太さ3mm x 長さ5m程度の細引きを何本か携行しているとなにかと役に立ちます。張り綱として使用するのが前提なら、太さ3〜4mm × 長さ10mぐらいはあったほうがいい。
コンバスやナイフなどの小物類には、事前にロープを結びつけておいて首から下げられるようにし ておくと便利です。

登山に使用するロープの構造

アウトドアで使用するロープは、「三縒りロープ」と「編みロープ」のふたつの構造に大別されます。

三縒りロープ

三縒りロープは、3本のストランドを縒り合わせて1本のロープにしたもの。ストランドというのは糸を縒り合わせたもので、その糸も繊維を縒り合わせて作られています。ストランドを縒る方向と糸を縒る方向が逆になっているのは、ロープの縒りが解けてこないようにするとともに、ロープ自体に強度を持たせるためです。
三縒りロープはストランドを縒り方向によって「Z縒りロープ」と「S縒りロープ」に分けられるが、現在使われているほとんどのロープはz縒りロープです。

編みロープ

ストランドや糸を編み込んで1本のロープにしたものを編みロープと呼びます。編みロープには色々な構造のものがありますが、編んだ外皮で編んだ芯を覆っている「丸編みロープ」タイプが一般的です。
このほか、Z縒りストランド2本とS縒りストランド2本を交互に編み上げた「角編みロープ」、芯のない「中空編みロープ」などがあります。

登山で使用するロープの素材

ロープの素材には、天然繊維と化学繊維の2タイプがあります。

天然繊維系のロープ

マニラ麻やヤシの実の繊維などから作られる天然繊維ロープは、素材によっての違いはありますが、一般的に熱や摩擦や紫外線に強く、滑りにくいのが特徴です。
今日、日常生活やアウトドアシーンで圧倒的に主流となっているのは化学繊維ロープです。ただし、環境問題への関心の高まりから天然繊維ロープも再評価されつつあります。商品のラインナップに天然繊維ロープを加えるホームセンターやDIYショップも増えてきています。

店舗詳細
ロープの種類材質特徴
マニラ・ロープマニラ麻天然繊維のロープのなかではヘンプ・ロープに次いで強度が高く、耐蝕性にも優れている。軽量で水に浮く。
ヘンプ・ロープ大麻の一種の茎の繊維天然繊維のロープのなかでも最も強度が高く、多目的な用途に使われている。が、ぬれに弱く、腐りやすい。
タール・ロープ白麻白麻にタール油を染み込ませて乾燥させたロープ。耐水性が高く、ぬれても良い場所で使われるが、硬い。
カイヤー・ロープヤシの実の殻の繊維非常に軽くて水に浮き、伸縮性も非常に大きい。ただし、強度は天然繊維のロープのなかで最も弱い
カイザル・ロープサイザル麻強度はマニラ・ロープよりやや劣る程度で、多目的な使用に向く。廉価だが耐久性は低い。
木綿ロープ木綿(コットン)柔軟性と伸縮性があって使いやすく、価格も安い。ただし、耐久性は低い。主に装飾用に使われている。

化学繊維のロープ

ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルなどでできた化学繊維ロープは、天然繊維ロープと比べると強度も耐久性も高く、軽量かつしなやかで滑りやすいという特徴があります。 また、化学繊維ロープには、伸び率が大きな「ダイナミックロープ」と、伸び率の小さな「スタティックロープ」がある。

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ロープの種類特徴
ナイロン・ロープ化学繊維系のロープのなかでも最も強度が高く、さまざまなアウトドアスポーツに用いられている。柔軟性があり、摩耗しにくい。また、伸縮性が大きく衝撃を吸収するので、クライミング・ロープにも使われている。水には浮かない
ポリエステル・ロープ三縒りロープと編みロープがある。強度はナイロン・ロープと同じぐらいで、摩擦に強い。水に濡れると強度は高まり、伸縮性は低くなる。水には浮かない。
ポリプロピレン・ロープ多目的に使用されている廉価なロープ。ナイロン・ロープと比べると強度はやや低い。軽くて水に浮き、滑りやすく伸びやすい。摩擦や紫外線には弱い。
ポリエチレン・ロープ強度はポリプロピレン・ロープよりやや落ちるが、軽くて水に浮き、濡れても硬くならない。また、熱や低温に弱く、滑りやすい。
ビニロン・ロープアウトドアから日常生活まで、いろいろな場面で使われている。軽くて紫外線に強いが、熱に弱く滑りやすい。強度はポリエチレン・ロープより低い。

登山で使用するロープの各部名称

1本のロープの各部にはそれぞれ呼び名があります。呼び方を人から教えてもらうとき、逆にだれかに結び方を教えるときに知っていると便利なので、覚えておきましょう。

索端(エンド)1本のロープの両端
元(スタンディング・パート)1本のロープの両端以外の部分
曲がり・曲げ(バイト)ロープを二つ折りにしたときにできる湾曲部
クロッシング・ターンロープが交差して輪が閉じているもの
ループロープが曲がってできた交差していない輪のこと。日本語では、輪が閉じていなくても、輪状になった形はすべて輪(ループ)と呼ぶケースが多い。
端・動端・手結びを作っていくときに動かすロープの先端

用途に適した結び

私たちは日常生活やアウトドアのさまざまな場面で結びを用いています。その目的はだいたい次に挙げる5つ分けることができます。

そして、それぞれの用途に用いられる結びは数え切れないほどあり、そのなかからどの結びを用いるかはそのときの状況によって違ってきます。
それぞれの結びのメリット、デメリットを頭にインプットし、直面した状況に最も適した結びを用いるということが大事になります。よく用いられる結びは、せいぜい20種類あるかないか。すべての結びを覚えなくても、おのずと用途に適した結びを使いこなせるようになります。

コブを作る

結び目でコブを作ることによって、ロープを穴などに通したときのストッパーとして利用します。
また、ロープを握りやすくする。ロープを投げるときのオモリとする、一時的なロープ端末のほつれどめとする、などの用途もあります。

輪を作る

ロープの途中や末端に輪を作り、その輪に物体を引っ掛けたりつなぎとめたりします。輪の大きさが固定される結びと変えられる結びの2種類があります。

他のものに結びつける

ロープを他のものに結び付けて、その物体を固定したりロープをピンと張ったりします。アウトドアでは特に多用します。

ロープとロープを結ぶ

2本のロープの末端と末端をつなぎ合わせて、1本の長いロープとして使用します。釣りやキャンプではおなじみの用途です。

物体を縛り合わせる

物体に掛けた1本のロープの端と端を結んで固定します。例えば、箱を梱包するとき、靴ひもを結ぶとき、丸太を縛り合わせるときなどに用います。

登山で使用するロープのほつれどめ

アウトドアでは、状況に応じてロープを適当な長さに切って使用することがあります。その際、ロープを切ったままにしておくと、すぐに切り口がほつれてきて使いにくくなってしまいます。そこで行わなければなならないのが、切り口のほつれを防止するための処理です。

キャンプ、登山などでよく使われているナイロン製ロープの場合は、切り口をライターの火でであぶって溶かし、指先で固めておきましょう。このとき、溶けたナイロンでやけどをしないように要注意です。細いロープならば、末端に粘着テープを巻きつけてハサミで切るか、熱によって収縮するほつれどめ用チューブを用いてもいい。太いロープは、ロープを切ってから切り口に粘着テープを巻きつけておく。

縒りロープのほつれどめには、スプライス(縒りをほぐして編み込んでいく方法)やホイッピング(末端に糸を巻きつけてとめる方法)と呼ばれるテクニックが用いられていました。
ただ、手間のかかる専門的な方法なのでけっして万人向けとはいえません。粘着テープを巻きつけておくのが最もシンプルで確実な方法です。

このほか、切り口の部分に2液混合のエポキシ系接着剤を塗り込んで固めておく方法、一時的なほつれどめとしてコブを作るための結びを結んでおく方法などもあります。

登山で使用するロープを扱う際の注意点

アウトドアでのロープワークでは、ときに1本のロープに命を託すことがあります。小さなミスやちょっとした不注意が大きなアクシデントにつながってしまうこともあるので、野外で扱うときには十分に注意が必要になります。

ロープを点検する

ロープは消耗品であり、使っているうちにだんだんと劣化してきます。使用する前に必ずロープのチェックを行い、表面が擦り切れていたりケバ立ちが激しくなっているロープは新しいものと取り替えましょう。
もちろん、傷ついて切れそうになっているロープは絶対に使用してはいけません。また、ロープにはキンクというよじれが生じることがあります。キンクを起こしている箇所は、強度が低下していて小さな荷重でも切れてしまうことがあるので、ロープを端から手繰り直してキンクは特に新品のクライミングロープに生じやすいため、購入後には2、3度手繰り直す必要があります。

ロープを直接地面の上には置かない

地面の上に直接ロープを置くと、ごく小さな石がロープの中に入り込んで、内部の細い繊維を切断してしまうことがあります。ロープの劣化の要因となるぬれや汚れを防止する意味でも、ロープを地面に置くときには直接置かずに、ナイロンやビニール製のシートなどを広げてその上に置くようにしよう。

ロープを踏まない

踏みつけることによって、ロープが痛んでしまいます。また、靴底に付いていた小石がロープの繊維の中に入り込むと、そのロープに荷重をかけたときに内部の繊維が切れてしまう危険もあります。ロープはうっかり踏みつけないようにしよう。

ロープを濡らさない

濡れて水を吸ったロープは滑りやすく扱いにくいです。同時に、濡れもロープを劣化させる要因となります。雨天のときなどは仕方ないにしても、たとえ防水加工が施してあってもロープはむやみにぬらさないように。

ロープの安全使用基準を守る

安全使用基準というのはロープが耐えられる負荷のことで、ロープの材質や太さ、使用条件などによってそれぞれ違ってきます。安全にロープを使用するためには、安全使用基準を守ること。そして、あくまで目安と考え、ロープに大きな負担をかけるような使用は避けることです。
特に注意したいのがロープへの急激な荷重です。安全使用基準値内での使用であっても、急激な荷重がかかるとロープが切れてしまうこともあります。また、外見を痛んでいないように見えてもショックで内部の繊維が切れていたりもするので、ロープにはなるべく急激な荷重をかけないようにしたい。

熱源のそばでロープを使用しない

化学繊維ロープは熱に弱く、火を近づけたりするとすぐに切れてしまいます。登山やキャンプのときには、ストーブやランタンなどの熱源のそばでロープを使用しないこと。
どうしてもやむをえない場合は、カラビナを数枚連結させるなどして、なるべく熱源からロープを遠ざけるような工夫をしよう。

ロープの熱摩擦に要注意

体の一部に接しているロープが引っぱられて勢いよく流れたりすると、ロープによる熱摩擦でやけどを負ってしまいます。そのような危険がある場合には、グローブを着けるなど、なるべく肌の露出の少ない服を着用するなどの予防策をしたい。
また、ロープを使用するときには自分自身で注意するだけでなく、ほかの人にロープが擦れる危険がないか周囲に気を配ることも忘れずに。

鋭利なものにロープを当てない

岩角など鋭利なものにロープの一部が当たっているときに負荷をかけると、その箇所からロープはいとも簡単に切れてしまいます。このような状況下では、絶対にロープを使用しないこと。
どうしても使用しなければならいないときは、鋭利なものにロープが直接当たらないように、タオルなどを当ててロープを保護するようにしよう。

ロープのメンテナンスと保管方法

野外で使用したロープはそのままにしておかず、きちんとメンテナンスを行いましょう。
手入れがしっかりされたロープは長持ちするし、次回も安心して使うことができます。逆に使いっぱなしのロープは劣化が早く、使用中に切れてしまうというリスクも高くなります。

まず、使用後のロープは、傷んでいる箇所がないかどうかをチェックして、劣化の著しいロープはただちに廃棄して新しいロープを補充しよう。端がほつれてきているロープについては、あらためてしっかりとほつれどめを施しておく。
劣化の少ない、まだ使えるロープは、固く絞ったぬれぞうきんで汚れをきれいに拭き取ってから、陰干しして乾かしたのちに束ねて保管します。もしロープの汚れがひどいときには、バケツやタライや風呂などにぬるま湯を張り、少量の中性洗剤を入れ、汚れを軽くこすり落とすようにして洗うといい。
洗濯機、脱水機、乾燥機の使用は厳禁。洗った後はよくすすいで水を切り、陰干しをして乾かす。特にナイロン製のロープは紫外線に弱いため、直射日光の下で乾かすのはご法度。必ず陰干しをすることです。

ロープの保管場所は、直射日光が当たらない、なるべく風通しのいいところがベスト。短いロープはまとめて大きめのスタッフバックに、太くて長いロープはクライミング用のロープバッグなどに入れて保管するといいです。
なお、薬品類、アルコール、車のバッテリー液やオイルなどがロープに付着すると、化学変化が起きてロープが傷むので、誤って酒をこぼしたり、車のトランク内などにロープを放置したりしないように注意しよう。

目的に合ったロープを選ぶには専門店で

アウトドアで使うロープを購入するときには、使用目的に合った材質、太さ、長さのものを選ぶことが重要です。さもないと、使用中にロープが切れたりロープの長さ足りなくなったりして、危険な状況に陥ってしまうことになります。

目的に合ったロープを選ぶためにはそれぞれのアウトドアの専門ショップで購入することをおすすめします。特に、命を託すようなシーンで使うロープは、間違っても近くのホームセンターなどで購入しないことです。

登山やキャンプで使用するロープは、登山専門店やアウトドアショップで購入します。これらの店ではさまざまな太さのロープでをメーター売りしているので、必要な太さのロープを必要な長さだけ購入するといい。クライミングなどで命綱として使用するロープは、その用途のために製造された専用のものを買いましょう。

最近は、インターネット上で展開されているロープの通販販売サイトも多いです。最寄りにショップがない場合は、通販サイトを検索して利用するのも手です。

プロフィール画像

てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。