安全に山登りをするためには登山計画を立てることがとても大切です。
ただ、ひと口に登山計画と言っても、どのような山に登りたいか、どんな風に山歩きをしたいかで、その内容は大きく異なってきます。
たとえば、新緑や紅葉を楽しむ樹林帯歩きと迫力ある展望を楽しむ岩稜帯歩きでは、必要な準備も装備もだいぶ違います。きちんと登りたい山の情報を集めて、どのような山歩きをしたいのかを具体的にシミュレーションすることが重要になります。
収集した情報や地図を見ながら、時期、コースタイムや危険箇所、天気や気温、登山口までのアクセスなど、山行全体を考えて、登る山やコースを1つ1つ決めていきます。
ここでは、登りたい山の情報収集の方法をはじめ、地図の購入、コース選択の決め方、登山口のアクセス方法、登山計画書の作り方・提出方法まで、登山計画の基本的なスキルを、初めて登山計画を立てる方でも分かりやすく解説していきます。
それでは、安全で楽しい登山にするために、どのような山歩きがしたいか、イメージを整理して計画を立てていきましょう。
登山の計画の立て方!登山計画のスキルを身につける
さて、登山の計画を立てようと思ったら、最初に登りたい山を選びましょう。
次に「山と高原地図」といった登山地図を購入して、本格的に山行計画を立てていきます。自分のレベルに合わせて、コースタイムや危険箇所を考えて登山コースを選択。そして、登山口までのアクセス方法を確認します。
最後に登山計画書を作成・提出し、いざ登山に出発です。
(1)登りたい山を決める
例えば、高尾山、富士山、八ヶ岳、槍ヶ岳に登りたいと思ったら、まずガイドブックやインターネットを利用して情報収集をしていきましょう。インターネットで「富士山 登山」といったキーワードで調べてみると、個人の山行記録や写真などがたくさん出てきます。
自分がイメージしている山歩きに近いかどうか参考にしてみてください。
また、山にはそれぞれ難易度があります。簡単そうな山、登山者が多いコース、アクセスしやすいなどを考えて、登りたい山を選択していくと良いでしょう。
(2)地図(山と高原地図)を購入する
登りたい山が決まったら、その山の登山地図を購入しましょう。昭文社が発行している「山と高原地図」の登山地図を選べば問題ないです。50年以上も続くロングセラーで、登山・ハイキングの際は定番地図です。
登山地図は、地図読みの知識がなくても、とても読みやすく、コース、コースタイム、水場、山小屋、見所など分かり、正確な山行計画が立てられます。
他の記事に、登山地図の入手方法について詳しくまとめてありますので、参考にしてみてください。
(3)自分のレベルに合ったコースを選択する
地図が手に入ったら、登山コースを選んでいきます。コースを選ぶ最大のポイントは、「安全性」です。人気のあるコースか、コースタイムは問題ないか、危険箇所がないか、コース上に水場や山小屋があるか、などを確認して選んでいきます。
例えば、登山者が多いコースを選んでおけば、もし何かあっても他の登山者に異常を知らせることもできます。
(4)コースタイムから、登山開始・下山予定の時刻を計算する
コースが決まったら、コースタイムを足して全体の行動時間を計算します。もし、登山地図に「1:30」といった表示があれば、休憩なしでその区間は「1時間30分」かかります。
もし、初めての登山であれば、山と高原地図のコースタイムより、1.25〜1.5倍ほどかけて、行動中の休憩(1時間間隔に10分)と昼食(1時間)などを足したおおよその時間を計算します。
夏と冬によって日没時刻は異なりますが、おおよそ「15時」までには下山ができるように、登山開始の時刻を設定していきます。
(5)登山口までのアクセス方法を決定する
登山コースが決まり、登山開始・下山予定の時刻も把握したら、そこまでのどのように行くかを考えましょう。せっかく登りたい山・コースが決まっても、登山口まで行く手段がないとたどり着けないので、計画を変更しなければいけません。
登山口までのアクセス方法は2通りあります。電車・バス・タクシーといった公共交通機関を利用したパターンと、車(マイカー)を利用したパターンです。
登山開始・下山予定時刻に交通機関を利用できるか、車を利用するなら登山口周辺に駐車場があるか、など事前に調べておきます。
(6)最後に登山計画書(登山届)をつくる
最後に登山計画書を作成します。登山計画書は、登山コースやメンバーなどが記載された計画書のことで、登山者が万が一事故にあってしまった場合に、第三者が確実に足取りを追えるので、捜索活動が容易になります。
また、登山計画書を作成することで、登山計画の再チェックをすることもできます。
登りたい山を決め方!ガイドブックやインターネットで情報収集する
登山の計画において、事前の情報収集がとても重要です。
ガイドブックやインターネット、または山を管轄する行政区の観光窓口への問い合わせからも山の最新情報を調べて、登りたい山をイメージしていきましょう。 おすすめの季節、コース情報、コースの特徴・見どころ、アクセス情報など、山に関する沢山の情報が出てくると思います。
しかし、ガイドブックやインターネットの情報量が多いので、これから登山を始める人にとっては、なかなか選びにくいと思います。
なので、登山初心者の人は、自分の住んでいる場所に近い「低山」や「日帰りできる山」などを中心とした情報を集めたガイドブックを購入してみるのがおすすめです。 または、インターネットを利用する場合、「日帰り登山 おすすめ」や「低山 おすすめ」みたいなキーワードで調べてみると、個人のブログや写真などが沢山でてくるので参考してみてください。
登山初心者が山選びに大切なポイント
- 標高差が600m以内の山を選ぶ
- 歩行時間が5時間前後の山を選ぶ
- 人気の高い山を選ぶ
- アクセスのしやすさ
また他の記事にも、登山初心者が山選びをするコツを詳しくまとめてあります。こちらの記事も合わせて確認してみてください。
登山コースを決め方!地図を読んで自分のレベルに合ったコースを選ぶ
登りたい山が決まったら、登山コースを決めていきます。
行きたい山を選び、そこが自分のレベルに合っているか。コースタイムや危険箇所などの確認。天候のチェック。天気や気温に合わせた服装、装備。そして、トラブルやイレギュラーの対処など、以下の5ステップに沿って山行計画を立てていきます。
地図を見ながら、山行全体の考えていきたい。時期や山域、山行に合わせた服装や装備を考え、持ち運ぶ飲食類の量を割り出していく。そして、いざというときに備えて、エスケープルート、ビバーク候補地も検討しておく。
あらかじめ下準備をしっかり整えることが、不備なく安全に登山を行う第一歩となります。
ステップ1 レベルを確認する
山の難易度と自分の体力や技術を、ガイドブックなどを参考に照らし合わせ、無理がないかチェックする。自分のレベルより少し難易度の高いコースを選び、ステップアップしていくのがよい。
ステップ2 地図を確認する
実際に登山地図を広げてみる。登山ルート、コースタイム、トイレ・水場、ルート上の危険箇所など、さまざまな情報を拾って、スケジュールを組んでいく。ここで、登山口までの公共交通機関、駐車場の有無、ケーブルカー利用の場合は発着時間なども確認しておきたい。
ステップ3 天候をチェック
山域の天気や気温を、ネットを利用して確認。気象庁の過去の観測データも参考になる。どんな服装で、どんな装備を用意すればよいかがわかる。
ステップ4 画像を検索する
コース上にあるさまざまなポイントの画像をネットで検索し、山行イメージをふくらませる。特に、危険箇所はじっくりチェックしておきたい。
ステップ5 いざという時に備える
不足の事態に陥ったときに慌てないよう、対策を整えておく。ビバーク用のツエルト、体調不良に対処する常備薬やケガの際の応急処理セットなどの携行をしておく。また、山岳保険も積極的に活用しよう!
登山口までのアクセス方法を決める!最初は電車がおすすめ
登山コースが決まったら、次はその登山口までのアクセス方法を調べます。登山口と下山口が異なる場合、それぞれの交通手段も調べておきましょう。
公共交通機関(電車・バス・タクシー)の場合
定番は、電車やバスやタクシーといった公共交通機関を利用したアクセス方法です。 現在住んでいる駅から登山口近くの駅までの電車を調べます。Yahoo!路線情報やGoogleマップを利用すれば、簡単にアクセス方法や運行状況を調べることができます。 また、近くの駅から登山口までの距離がある場合、「登山バス」や「タクシー」を利用する必要があります。登山バスは休日や季節ダイヤがあるため、利用する際は注意が必要になります。登山客の少ない時期やバス本数が少ない場合もあるため、事前にインターネットや運行会社に問い合わせて確認しておくと安心です。 また、登山口までバスがない時にはタクシーを利用しましょう。こちらもバス同様に、事前にインターネットやタクシー会社に問い合わせて、乗車場所や登山口までの料金・送迎方法を確認しておきましょう。
車(マイカー)の場合
車(マイカー)で登山口に行く場合、駐車場の確認が重要です。事前に駐車場の場所や台数の確認しておきましょう。駐車場が一杯になると車を停めることができなくなるので、路肩に停められる駐車場や予備の駐車場がないか、インターネットなどで検索して駐車場の状況を調べておく方が良いです。
最後に登山計画書(登山届)を作り方・提出先
登山計画書(登山届)は必ず提出しましょう。
登山計画書の作成は、自分たちがどう行動するかを明確にするためですが、登山計画書の提出は、自分のたちの行動内容を外部に知らせるためのものになります。
登山計画書の作り方!どのように書けばいいのか
遭難が発生した場合、捜索や救助の重要な手がかりになる登山計画書です。そのため、最低限の情報として、以下8つは記入しておきたい。
ネット上に、さまざま登山計画書を配布しているので、ダウンロードして使用できます。
1 団体名
特にない場合は記入しなくていい
2 目的の山域・山名
「北アルプス・奥穂高岳」など、山域名と山名を記入する
3 入山日・下山日
下山日は予備日はカウントして書く。行程が数日に及ぶ場合は、予備日を設けたい。
4 計画書提出先の名称と電話番号
登山計画書を誰に渡しているかを知らせる。緊急連絡先の氏名、電話番号、住所を記入。
5 共同装備
遭難した際、捜索側に、雨風をしのぐツエルトやテント、暖をとるストーブや燃料を持っているかがわかるようにする。デジタル簡易無線や衛生電話があれば、備考欄に記入する
6 ルートマップ
地形図の該当範囲をコピーして貼り付けるとよい。概念図を手書きしてもよい。
7 日程
日付ごとに、出発地点、分岐、目的地を時刻とともに時系列で記す。どのコースを歩くかを知らせることが重要なので、それぞれの時刻はあくまでも予定でよい。
8 参加者
氏名、生年月日、血液型、性別、年齢、住所、電話番号、緊急連絡先の氏名と電話番号を記入。チーフリーダー(CL)、サブリーダー(SL)を決めておき、役割の欄に記入する。
登山計画書の提出先!どこに出せばいいのか
- 緊急連絡先(友人、同僚でもOK)
- 所轄の県警担当部署、または登山口の提出場所
緊急連絡が遠方の実家などの場合、身近な友人や同僚に下山管理係をお願いし、登山計画書を渡してもOK。下山した際、緊急連絡先に一報を入れておこう。
他にも、インターネット利用して提出できる便利なシステムもあるので、利用してみてください。
- てくてくの人登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。