登山服・ベースレイヤーのお手入れ!ウールの洗濯方法や保管方法を解説

登山服・ベースレイヤーのお手入れ!ウールの洗濯方法や保管方法を解説

登山服の中でベースレイヤー(肌着)は、汗を吸収、乾燥させる役割をもち、体調管理に直結する最重要ウェアの一つです。

そんなベースレイヤーは、ウールや化繊といったさまざまな素材が使用されています。そのため、下山後のお手入れに関して、素材に合った洗濯や保管方法が求められます。
ただ、混紡になっているものなど一部のアイテムで注意が必要なものがありますが、基本は裏返しにしてネットへ。洗濯機洗いができます。

ここでは、今回、ベースレイヤーのお手入れ方法の基本を解説していきます。使用前にチェックするポイント、洗濯や保管方法、自分でできる簡単な補修、買い替えどき、お手入れに必要な道具などをまとめています。

登山ウェア 使用前にチェックするポイント

新品の場合は実際に着てみる

ウェアを買ったら、山へ行く前に一度着てみることが大切です。
袖の動かし具合や、ボディ部のフィット感など、ショップで購入した時と同じように確認します。実際に使うときはレイヤーリング(重ね着)して着るので、それも試しておいた方がよい。

ファスナーに不具合がないか

頻繁に可動させるファスナーはトラブルが起きやすい。ここが壊れてしまうと「保温」という大切な機能が果たせないものもあります。滑らかにスライドするか、タブが壊れていないか、などをチェックします。

縫い目がほつれていないか

ちょっとした縫い目のほつれでも、そこに力がかかると生地が破れたり縫い目が切れて穴が開いたりします。ほつれが止まらないような場合はメーカーやショップに相談する。
ウェア裏側の縫い目も確認しておきましょう。

穴が開いていないか

焚き火の火の粉や、ファスナーの噛み込みなど、気がつかないうちに生地に開いていることも。そこから水が入ったり、保温性が低下してしまう。
袖や胴部分だけでなく、フードやポケット内部などもチェックします。

コードロックやボタンに不具合がないか

外気の侵入を防ぐコードロックやボタンなどの不具合は、保温性を損なう原因となってしまう。壊れていないか、なくなっていないか念のため確かめる。

新品でも撥水スプレーはかけておく(アウター、インサレーション)

たいていのアウター類には撥水機能が最初から備わっているが、撥水剤をかけすぎて機能が低下することはないので、できれば使用前に一度撥水スプレーをかけておこう。
撥水効果はもちろんのこと、汚れをつきにくくする効果もある。

ベースレイヤーのお手入れの基本

登山で使用した後のベースレイヤーは、基本のお手入れ方法以外にも、メンテナンス法や裏技があります。ここでは、知っておきたい、ためしておきたいお手入れ法をいくつか紹介します。

Tシャツ・アンダーウェアは、ニオイが気になる

山用のTシャツやアンダーウェアなどに採用されている速乾性の化学繊維はどうしても臭いが発生しやすい傾向があります。最近では、抗菌防臭効果の高い化学繊維素材の製品も発売されているので、そういった新品をチョイスするのもいい。
また、メリノウール素材のアンダーウェアは天然の消臭効果をもつため、試してみる価値があります。だが、それらの製品でも、汗汚れのまま放っておくと臭いが染みついてしまうので、下山後はできるだけ早く洗濯することが鉄則。

ウールウェアは、裏返してネットへ

ウールウェアの洗濯は、裏返してネットへ。基本は洗濯機洗いができます。
山用のウールウェアは基本的に頑丈にできているため、一般衣類と同じように扱っても問題ないが、長持ちさせるための洗い方は確認しておきましょう。

ニット帽はやさしく手洗い

ビーニーなどのニット帽は、汗はもちろん、日焼け止めクリームやフォンデーションなどで意外なほどに汚れている。むしろウェアよりも頻繁に洗濯が必要。素材的にはウールやアクリル、フリースなどが多いが、こちらは手洗いがおすすめ。洗濯機を使わないだけで、洗濯機の注意点は基本的ウェアと同じだ。ゴシゴシするのではなく、ていねいに押し洗いをする。

ベースレイヤーの正しい洗濯方法

山用のウールウェアはふつうに洗濯機で洗濯してしまっても問題ありません。
しかし、ソックスなど伸縮性をもたせたウェアはナイロンなどとの混紡になっているものが多く、洗濯機での脱水時にウールとナイロンが引かれあうことでウール側が破断し、繊維傷んでしまいます。これを防ぐには洗濯ネットに入れて洗うのが一番。さらにソックスやシャツごとにわけて入れるといい。

ベースレイヤーの洗濯方法ポイント

  • 裏返して洗うのが基本
  • ソックスもネット洗いがおすすめ
  • 柔軟剤は使わない方が無難

まずは洗濯タグをチェック

洗濯タグを確認して、洗濯機でも洗えるものかどうか、使える洗剤や水温、乾燥機の使用の可否などをチェックする。

裏返す・ジッパーを閉じる

肌と触れるウェアやソックスの内側は皮脂汚れが付着しているので裏返す。ジッパーは歯が繊維を傷めるので閉じておく。

洗濯ネットに入れる

できるだけアイテムごとにネットに入れる。とくにソックスやジッパーのあるウェアは別々に入れるようにしよう。

洗濯機は弱水流で

洗剤水はあらかじめしっかりと混ぜておく。水流は弱で、脱水も短め。柔軟剤はウール本来の機能を損なうので使わない。

大きめのハンガーで陰干し

大きめのハンガーにかけ、できるだけ陰干しをする。タンブラー乾燥は洗濯タグの表示に従って、できる場合もある。

ベースレイヤーなど 登山ウェアの正しい保管方法

ウェアはさまざまな素材のものがあり、素材にあった保管法が求められます。ここでは各ウェアの保管方法と注意点を紹介します。

きれいに洗ってしまうことが、基本中の基本

皮脂や汗、泥汚れなど、さまざまな汚れにさらされるアウトドアウェア。季節がめぐり衣替えの時期になったら、シーズン中に着たものはキレイに洗濯し、完全に乾燥、必要なものは撥水処理をさせてから収納するのが基本。
たとえ短時間の着用であっても、襟首や袖口の皮脂汚れは、放置しておくとウェアを変色させたり、機能を損なう可能性もある。どれぐらい着たかわからないものも、洗ってから収納するのが無難。

風通しの悪い部屋のクローゼットには湿気とりを入れてカビ防止に

風通しの悪い部屋のクローゼット内は湿気となりやすい。可能ならばときどきウェアを出して虫干ししたいところだが、忙しいとなかなかそこまで手が回らない。
しかし、着ようと思って取り出したウェアがカビだらけだったなんてことにならないようにクローゼットには湿気とりを入れておきたい。

ダウンウェアなどのロフトのあるものはゆったり保管が保温性維持の秘訣

ダウンや化繊インシュレーションといったロフト(空気をためこんで暖かさを保つ空間)のあるウェアは、保温性を維持するために、いかにロフトをつぶさないように保管するかが大切。製品に付属しているスタッフバッグは山行時に小さく収納するときだけに使うものなので、山から帰ったらスタッフバッグからすぐに出し、できるだけ大きなハンガーにかけて、ゆったりしたクローゼットなどに吊るした状態で収納します。そうすることでロフトが復元し、いつまでも暖かさをキープしてくれる。

ダウンに付属するスタッフバッグは行動時に小さく収納するためのもの。収納袋に入れたまま保管すると、羽毛がヘタってしまい保温性能が落ちてしまうので、保管方法としてはNGです。

ファスナーのあるジャケット類の長期保管は大きめのハンガーに吊るして保管する

シェルジャケットには、軽量化のためフラップを省略した止水ジッパーを採用するモデルが多いです。このようなウェアを折りたたんだままタンスにしまっては、ジッパーに折り目がついてしまい、その部分から止水性能が落ち始めることがあります。止水タイプではない通常のジッパーでも折り目付近のジッパーのかみ合わせが悪くなるなどのトラブルの原因にもなる。
理想はハンガー保管だが、ジッパーのあるジャケットやパンツはできるだけ折りたたまず、折り目がつかないように注意しよう。

アンダーウェアなどは丸めてたたんで、引き出しに収納

アンダーウェアや薄手のフリース、機能性タイツなどをタンスに収納する場合は、平らに折りたたんで重ねて入れるのではなく、丸めて縦に並べて収納することがおすすめ。
さらに種類やウエイトごとに並べておけば、必要なウェアをすぐに取り出せ、着用のローテーションができるので、タンスの奥底に埋もれてしまい存在を忘れてしまうようなことも防げます。

ウールなどの天然素材のものの長期保管は防虫剤を入れておくと安心

ウェア保管で忘れがちなのが防虫剤。
ウール素材のアンダーウェアを着てみると、変なところに穴が空いていたという経験をした人も少なくないだろうか。ウール素材のウェアは虫がつきやすいので、防虫剤を一緒に入れてたたみ、なるべく風通しのよい場所で保管するのが望ましい。
天然素材のものをタンスの奥に長期保管するときは、かならず防虫剤を入れておこう。もし可能ならば、ときどき保管場所の空気を入れ替えれば完璧。

ベースレイヤーが故障した際、自分でできる簡単な補修

生地に穴が開いてしまった

バーナーやライターの火、焚き火の火の粉などが原因で生地に小さな穴が開いてしまったら、なるべく早く針や糸で縫い合わせて、穴がさらに大きくなるのを防ぐのが大切。
縫い合わせると多少シワが寄ってしまうことは覚悟しておこう。

> リペアシートはあくまで応急処置 > 近年のリペアシートは粘着力もアップし、丈夫になっているが、あくまでも応急処置と考え、なるべく修理に出すようにする。

登山ウェアの買い替えどき

いろんなフィールドをともに歩いたお気に入りの山ウェアたち。いろいろメンテナンスをしてきても、いつかは寿命がやってきます。各アイテムごとの買い替え時の目安ある。

寿命を迎えたといわれるウェアには2種類あります。
ひとつは物理的に壊れてしまっているタイプ。もうひとつは、皮脂汚れなどでテカテカ、補修テープだらけで見た目にもボロボロになっているが、保温性や防水性はまだまだいけるというタイプ。

前者の方は、もう買い替えをするしかないが、後者のほうは持ち主がいいのであれば、いつまでも使い続けることができます。このように、買い替え時というのはある種人それぞれな部分ではあるのだが、多くのウェアに関連してくるものがジッパーの破損。
とくにアウターシェルにとっては外気を遮断する要ともいえるパーツなので、ここが壊れた場合は買い替えを考えたほうがいいでしょう。

同じくアウターシェルで言えば、表地の撥水性回復しない場合です。防水透湿素材の代表格であるゴアテックスのメンブレン自体は、ほぼ半永久的に防水透湿性能を維持するのだが、メンブレンにラミネートされる表地の撥水性能には寿命があります。表地の水滴が水玉になって弾け落ちないと、ウェア内部からの水蒸気が抜けにくくなり、その結果、防水性も透湿性も落ちてしまったような感覚になります。

このような視点からウェアの寿命というものを見ていくと、おのずと買い換え時もわかってきます。山ウェアは外界から身を守るという重要な道具的側面もあるので、適切な買い換え時を判断する目は安全な山行を続けるうえでも必要になってくる。

ウェア全般 ジッパーの破損

ジッパーの破損は、買ったばかりであればメーカーの保証交換もできるかもしれないが、数シーズン着たあとは破損はもう買い換え時。だましだまし使っていても天候の急変などに見舞われると死活問題につながる。

フリース 生地の磨耗・へたり

起毛タイプのフリースは、起毛部分が倒れ、下地が見え始めるほど起毛が抜けてきたらもう買い替え時。メーカーによっては古着の回収プログラムなどを実施しているところもあるので利用するのもいいだろう。

ダウンウェア

ロフト(羽毛)のへたり

新品時にふかふかだったダウンも数シーズン着ているうちに次第にロフトが落ちてきてしまう。低品質のものほどその傾向が強い。適正にメンテナンスしても、ペタンコのときは買い換えしてもいいだろう。

羽毛の飛び出し(補修テープが貼りにくい場合)

ロフトの低下とともにダウンウェアで起きやすいトラブルが羽毛の飛び出し。キルティングなどの縫い目付近からの羽毛の飛び出しは補修テープによるリペアもしづらいし、見た目的にも厳しいものがある。いろいろな場所から飛び出し始めたらそろそろ交換を考えたほうがいい

アウターシェル

シームテープのはがれ・切れ

アウターシェルの裏地の総合部分に貼られているシームテープの剥がれや、接着部分の切れは防水ウェアの致命傷。1ヶ所始まると、たいて他の部分もはがれてくるので、買い換えを考えよう。

撥水性能の低下

撥水処理を繰り返してもすぐに撥水性が落ちてしまうようになると、ウェアのもつ撥水基が生地表面の磨耗などで寿命を迎えていると考えていい。撥水性はウェアの透湿性にも影響を及ぼすので買い替えを決断していいだろう。

修復不可能なサイズ・場所の表地の破れ

小さな裂け傷ならば補修をすればいいが、それでは追いつかないほどの大きな裂け傷ができたときは買い替え時。とくにヒジやヒザなど可動域が大きな部分は補修シートの接着が難しい。

ウールソックス 広範囲に磨耗したら買い換えどき

ソックスは表からみると磨耗状況がわかりづらいが、裏返すとウールの起毛がすり減っているのがよくわかる。色が変わっているのはウールの混紡されるナイロン地だけが残り、濃い色になっている。

登山ウェアのお手入れに必要な道具(ベース・ミドル)

アウトドアウェア専用洗剤。シェル用、フリー用、アンダーウェア用、アウトドアショッップではさまざまな種類が販売されているので、これらを使えば理想的。一般家庭用を使う場合は、柔軟剤や漂白剤などの成分が入っていない中性タイプを選ぶ。

お手入れに必要な道具

  • 補修用具
  • アウトドアウェア専用洗剤
  • 撥水剤

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てくてくの人
登山・ハイキングが大好きです。約8年間、月1〜2回のペースで、夏も冬も山に遊びに行っています。そんな自然の中で経験した登山を楽しんだり、ちょっと知ってよかったと思える情報をゆるりとお届けしています。